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『あれ…あんた、誰?』
突然、目の前でそんな事言われたら、誰だって言葉を失うだろう。
都内有名スクランブル交差点。
その付近の、有名な待ち合わせスポットである犬の像の前で、オレ…梓川駿の前に現れた男がそう言った。
しかも、だ…
その男、顔がめちゃくちゃ良い。
周りの女から声がかかるんじゃないかと思う。
だけど、今の状況からじゃ、まず声はかからない
否、かけられない
なぜなら…
「…浮いてる…」
オレが呟いた言葉に、男は『みたいだな』と答える、
「…透けてる…」
更に呟いた言葉に、男は『みたいだな』とまた答えた。
「お前…なんなんだよっ」
悲鳴に近い声に、周囲の人間が一斉にオレを見た。
日曜日のココは人で溢れている。
その大勢の人間に見られたら、流石に恥ずかしい。
オレは思わず「こっち来い!」と男を促して駆け出した。
これだけ人が溢れていても、意外と死角はあるもので…
ほとんど人が来ない路地裏で、オレはようやく足を止める。
「…で、一体なんなんだよっ…凌」
『え?』
相変わらず浮いている奴は不思議そうな顔をした。
「え、じゃない。オレが聞きたいんだよ」
『いや、悪い。凌って…俺の名前か?』
冗談かと思った
しかし、彼は本気でそう言っているようだった。
「…おいおい…まじかよ…」
頭を抱えた。
ありえるだろうか…
透けてふわふわ浮いた…俗に言う"幽霊"というヤツに、記憶喪失ってあるのだろうか




