第52話 重要通達は主神の仕事
ーーシガレット城門前。
「ありがとうセージ。今回もとても勉強になったわ。あなたの健康知識には驚かされるわね」
「知識は持っているだけでは役に立たない。その辺意外と素直な君はすぐに行動に移して試している。このまま続けていけばすぐに追いつくさ」
「『意外と』は余計でしょ!」
どっと笑い声が広がる。
「そういえばセラ、タバタ式HIIT完走できるようになったの?」
すると、セラは待ってましたと言わんばかりに胸を張った。
「甘々だね甘菓子姫。今の私はその倍はできるよ♪」
「な、なんですって?! 4分でヘトヘトになっていたあなたが?! っていうかその呼び名どこで知ったのよ!!」
セラはニタっと笑う。
「しらたまが言ってたんだよ〜。二人は仲が良いんだねぇ〜。女神として微笑ましい限りよ」
急に女神を振りかざしてきたな。
すると、エクレールは神妙な面持ちでセラに尋ねた。
「あの子、体は大丈夫なの? 見かけによらず頑固だし、極端なところがあのよ」
「何度も倒れたって聞いてるし、それが原因でもうずっと会えてないから。少しは良くなってるといいけど…」
セラはドンっと胸を叩いた。
「今では毎日散歩に出掛けられるくらい元気になったんだよ!」
君はカリフラワーに土下座していただけだ…。
「そう。良かった」
エクレールはセラをスッと躱し、俺の目を見つめた。
「友達を救ってくれてありがとう。また借りを作っちゃったわね」
「借りだなんて。放って置けなかったんだ。あの子の件は、俺の独りよがりだっただけさ」
急にセラはガバッと俺にのしかかった。
「おいこら! 無視するな!!」
「痛っ…!? やめろっ!!」
ガシガシ頭に噛み付くセラを必死に振り払う。
「あなた達も変わらないわねぇ」
エクレールは呆れながらも優しく微笑んでいる。
「それじゃ、そろそろ行くよ」
「健康ルーティンもいいけど、たまには顔を出しなさいよ? あなたは私が尊敬する唯一の殿方なんだから」
「そうだな。ジョギングのついでに寄らせてもらう」
俺とエクレールは固い握手を交わした。
手を振る彼女に見送られ、俺たちはシガリア王国を後にしたーー。
ーーいつか通った、草原広がる農道を歩く。
晴れ渡る空と、風に乗り優しく運ばれる土の匂い。
思わず深呼吸する。
思えば、この道を通ってシガリアにたどり着いたんだよな。
もうずいぶん前のことのように思える。
「色々あったからね〜」
「君が振り回したんだぞ。しかも大きく空振った」
「あれ? そうだったっけ?」
可愛く誤魔化そうとしても無駄だ。
「それより、いつまで動画撮影しているんだ」
「え? だって、これはもともとセージのドキュメンタリー番組だし」
その設定は残っていたんだな。
「まったく。君が魔王の討伐をゴリ押しするからドタバタしたんだろ」
「まあまあ、いーじゃん。結果的に魔王と戦わなくて済んだんだから♪」
「君が何も教えてくれないからだ。だいたい、魔王と神界が知り合いだったなんて聞いてなかったし、本当に無駄足だった。俺のルーティンを返してくれ」
セラは恥ずかしそうに頭を掻く。
「あの時はいろいろ切羽詰まってたんだよ。ごめりんこ♪」
反射的に両手で彼女の頬を引っ張る。
「いだだだだ!!」
パッと手を離すと、プリンのように肌が弾んだ。
頬をさすりながらセラが尋ねる。
「セージはこれからどうするの?」
俺は自分の健康を維持できればそれでいい。
それはどこにいようが変わらない。
「決まっている。あの小屋に戻ってルーティンの研鑽だ」
「地味っ!! ここまで来ると尊敬するよホント」
「君はどうするんだ? もうこの世界での君の役目は終わったんだろ?」
「ん〜どうしよっかなぁ。このまま神界に戻っても私の立ち位置変わんないしなぁ〜」
自業自得だ、というのは黙っておこう。
突然、ペアラSSが眩い光を発した。
画面越しに、寝っ転がる主神アークトリアスの姿。
「げっ! アーク様!?」
『やっほ〜。元気そうで何より』
「きょ、今日はどうされましたか?」
セラの目が泳ぎまくっている。
どう見ても動揺しているな。
そんな彼女とは対称的に緩い空気であくびをするアークトリアス。
『そろそろ撤収しよっか、セラちゃん』
「えっ……?!」
撤収…?
彼女のアスファレイアでの役割は終えた、ということだろうか。
『ま、そういうわけだから早めに戻ってきてちょ。忘れ物ないようにね〜』
彼がひらひら手を振る様子を映したまま、プツンと画面が途切れた。
しばらく呆けていたセラは、小刻みに震えながら俺の方を振り返った。
「私、何も成果上げてない…」
それは否定できない。
「なんでよ?! スキルも与えたしフォーリンの仕事手伝ってあげたじゃん!」
逆ギレされてもな…。
「魔王討伐といい、それ以外はだいたいから回ってただけだからな」
「だってー! 異世界といえば魔王を倒す展開が王道だと思ったんだもん!」
動機が軽すぎる。
私欲のために売られたグラトが気の毒でならない。
「いい機会だ。こってり絞られるんだな」
「いーやーだー!!!」
そよ風の舞うのどかな草原に響き渡る彼女の泣き声が、見事な田舎風景を台無しにしていたのだった。
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