第47話 女神は、女神だった
セラは手首をくるっと回した。
すると、どこからともなく――キセルとディアストーカー(鹿打ち帽)が現れた。
しかもご丁寧に、手書きの紙が貼ってある。
《探偵セット》
「どこで印刷したんだ、それ」
「神界クオリティ♪」
俺は神妙な顔で受け取った。
ディアストーカーを深く被り、キセルを構えて――
(※吸うフリだけだ。俺は健康の鬼だ)
「いつかは分からないが、AFDAはこのゲートを発見した。そして、転送されるゴッドミクサーの効果と可能性にいち早く気づき……この工場を建て、拠点にした」
「神界の飲食物って★5レビュー多いからね〜」
セラも同じ帽子をゴソゴソ被る。
二人分用意してたのか。
「だが疑問が残る。もし拠点にしたなら、なぜ工場なんて建てた? 独占した方が早いだろう」
「隠すための箱が必要だったんじゃない? 虹色の異空間を野晒しにしたら目立つもん」
「確かにな」
俺はキセルを軽く掲げる。
「おそらく彼らは、ゴッドミクサーを口にした。そして気づいた」
「……気づいた?」
「エナドリがもたらす集中力と回復力――そして」
俺は帽子の影からセラを見た。
「“次の一本”に手が伸びる理由が、味と喉越しにもあることに」
セラの目が細くなる。
額に汗が一筋。
「……何が言いたい」
「彼らは、ゴッドミクサーを改良して売ることで、この世界の人々を依存させようと考えた」
セラが目を見開き、キセルを取り落とす。
カラン、と乾いた音。
「金儲けのために、な」
――その瞬間。
セラの頭上に、雷が落ちた。
そう考えると辻褄が合う。
シガリア王国が糖質依存に沈んでいたこと。
エクレールやリオナからAFDA製品の摂取履歴が解析されたこと。
ジャンクゾール魔界域のSNS依存とエナドリ依存。
ユキナと話し込んでいた“三人組”。
「彼らはここでゴッドミクサーから依存性成分を抽出し、各国にばら撒き、人々を縛ってコントロールしようとしていた」
俺はディアストーカーとキセルを丁寧に揃え、床に置いた。
「……これが俺の推理だ」
「うん、いいセンいってると思うよ。なかなか」
誰目線だ。
気づけば、セラも《探偵セット》を俺の横にそっと置いていた。
「ん? 君の推理は?」
「あ、うん。私のはいいかな〜って!」
「引くのはらしくない。聞く準備はできてるぞ?」
するとセラは、井戸端会議の奥さんみたいに手を振った。
「やだなぁ。AFDAは人々を糖質依存とかSNS依存にさせて、依存製品で釣って、その間に世界を乗っ取ろうとしてたんじゃないかな〜って思っただけだよ」
……。
「それ、ほぼ俺の推理と同じじゃないか」
むしろ一歩先に行ってる。
「え、そう? 今テキトーに思いついただけだよ?」
目をぱちくりさせるセラ。
……宝の持ち腐れにも程がある。
ポンッ。
またしても、床のゲートからゴッドミクサーの箱が転送されてきた。
「これ、ゲート閉じないと神界の在庫が一生合わないぞ」
「だよね〜」
とはいえ、フォーリンから借りた鍵は一本。
そもそも“ここに開いてたゲート”を閉じる鍵じゃない。
「フォーリンに連絡……」
「大丈夫」
セラが、手招きした。
吸い込まれるように、俺は鍵を渡してしまう。
「ふむふむ……そういう作りかぁ」
エメラルドの瞳が、舐めるように鍵を凝視する。
そのまま片手でペアラSSを高速操作。
……速い。普通にプロだ。
「ほいっと♪」
ペアラSSの画面を仰向けにすると、虹色の光が飛び出した。
覗き込むと――光の中に、細く光る“鍵”が浮いている。
「……複製?」
「そーそー! 3Dプリンターみたいなものだね♪」
「君といいフォーリンといい、現代技術の例えが雑に強いな」
「神だからねっ」
理由になってるようで、なってない。
セラは照れ隠しに舌を出す。
「鍵を構成する成分と種類をコピーして、逆方向にエネルギーを流す魔力成分を注入しないといけないから、ちょっと面倒だったけど♪」
……ちょっと?
それ、かなり高度じゃないか?
セラは作り出した鍵を、床に張り付くゲートへ差し込んだ。
次第に、虹色の異空間が縮んでいき――
ふっと、消えた。
「よし! これでフォーリンに借りを返したぜ!!」
「君……実はかなり有能なんじゃないか?」
その瞬間。
セラの目がカッと見開かれた。
「最初に元Aランクって言ったよね!?」
「聞いてない!」
……A? 最高ランクだろ?
嘘だろ。セラだぞ。
「あれ? そうだっけ?」
「Zランクって話は聞いた。Aは初耳だ」
セラの顔がみるみる真っ赤に染まる。
「本来なら私は生まれも実力も超超超高貴な女神なんだからね!?」
……まあ、それは何となく聞いたことがある気がする。
「じゃあ、どうしてZまで落ちた? 最高から最低って、よほどだぞ」
「……」
セラは一瞬だけ言葉を詰まらせた。
そして――ふっと笑う。
「話すと長くなる。ポストクレジットシーンが終わるくらいには、ね」
「それは客に迷惑だ」
「まあ、この流れだと残りの問題も――」
「待って!? 今、“終盤です”みたいな顔した!」
「してない」
「した!! クライマックス前の主人公の顔だった!!」
「どんな顔だよ」
「読者も君の長話を延々聞かされても疲れるだろ。電撃ツンデレの子とか、全部を捧げた子ほど人気が――」
「おい!! 言い切るな!!」
セラが胸を張る。
「私以上に人気のあるヒロインなんて150人くらいしかいないんだぞ!」
「人間の対人関係の上限に挑戦するな」
まあいいか。
彼女のことだ。きっと大した理由じゃないだろう。
「さ! 床ゲートは閉じた! あとはこいつら送り返してシガリア行こ!」
「はいはい」
こうして俺たちは――
空き缶拾い、もとい、
エナドリ拾いに明け暮れることになったのだった。
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