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異世界でも健康的ルーティンを!!〜健康生活を徹底していたら、いつの間にか世界が平和になっていた〜  作者: SSS


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第44話 神助けは冷飯を食べてから


ボランティア、ねぇ。


字面だけ見れば聞こえはいい。

だが――なぜだろう。背中にうっすら嫌な汗が浮かぶ。


『危険が伴うものじゃないんだ。ほら、この通りだよ』


フォーリンは両手を擦り合わせ、拝むような仕草を見せた。

その光景を見た瞬間、脳裏に一人の女神の顔が浮かぶ。


「女神に懇願されて、いい結果に転んだ記憶がないんだが」

『……いったい、何があったんだい』


面倒くさそうな雰囲気は全身から滲み出ているが、悪意は感じない。

それどころか、どこか切羽詰まっている。


やれやれ。


「で、肝心の内容は?」

『簡単に言うとね。備品の回収をしてほしいんだ』


備品?


『神界の備蓄だけじゃなくて、輸出入の履歴も全部管理してるんだけどさ』


フォーリンは、耳を澄まさないと聞こえないほどの小さな声で続けた。


『どうやっても、リストと実数が合わないんだ』


……ふむ。


「つまり、棚卸しをしろと」


パチン、と軽快な音。


『話が早くて助かるよ。まさにそれ』

「どれくらいズレてるんだ?」


フォーリンは書類をぱらぱらとめくる。


『百個くらい? ……いや、そこまではいかないかな。五十個くらい?』


それはもう誤差じゃない。


「で、その備品ってのは?」

『神界特製・滋養強壮ドリンク――ゴッドミクサーだよ』


……エナドリか。


『あとで数えようと思ってたら、間違えてゴミ箱(廃棄用ゲート)に入れちゃってね〜』


どう間違えたらそうなる。


フォーリンは首から下げた無数の鍵の中から一本を摘まみ上げる。


『この鍵は、無限収納の特殊空間に繋がる扉を開くものなんだけど』


パシッ、と鍵を握りしめて。


『間違えて、廃棄用ゲートを開いちゃったんだ』


どれも色も形も似ているらしい。


『慌ててると、うっかりミスが増えるよね』


その前に管理体制を見直すべきだと思う。


……ん?


この女神、だんだんセラに見えてきたぞ。


まさか――


『違うからね?』


どうやら地の文を読む能力は、神とピエロの標準装備らしい。


「……こほん。つまり、その廃棄品がアスファレイアに落ちたと」

『そういうこと。履歴反応は確かだよ。ただ、結構前だから状態は不明だけど』


神の言う「結構前」は信用できない。

下手すれば何百年単位だ。


……賞味期限、大丈夫か?


『落下地点周辺を調べて、見つけ次第こっちに送ってほしい。状態は問わない』

「送るって言われても、そんな便利なスキルは――」


その瞬間、小さな光が集まり始めた。


やがて光は一本の鍵へと姿を変える。


『地面でも空中でも、どこでもいい。その鍵を差し込めば専用ゲートが開くよ。あとは投げ込むだけ』


便利すぎる。


「神って、本当にとんでもない力を平然と使うよな」

『3Dプリンターみたいなものさ』


ここでも現代技術。


「セラには何て説明する? あの性格だと、雑用は全力で嫌がるぞ」

『大丈夫』


フォーリンは気怠そうな目のまま、にやりと笑った。


『彼女には貸しがあるからね』


……土下座するセラの姿が目に浮かぶ。


『おっと、そろそろ戻らないと。ルーミスやディアに怒られる』

「ルーミスは釣りしてるだけだろ」

『そういうわけだから、頼んだよ』


虹色の光が収まると、ペアラSSだけがふわりと宙に残った。


「おーい! セージー!!」


振り返ると、野菜畑からセラとシラユキが駆けてくる。


「ぼーっとしてないで戻ろ! ユキナの料理が冷めちゃうじゃん!」

「白米は温かくないとダメなんだよ!」


有無を言わさず腕を掴まれる。


「白米は、冷やした方が健康にいい」

「……は?」


セラの目が見開かれ、シラユキも息を呑む。


「ば、バカな!? ライスだぞ!? ほかほかに納豆と卵を――」

「白米の熱で、納豆キナーゼは死滅する」


がしっ。


セラが涙目で俺の脚にしがみついた。


「嘘よ! 嘘だと言って!」

「俺たちは……納豆キナーゼの死骸を……」


悲鳴が畑に響く。


そのとき。


「……それ、何の撮影ですか?」


風のように、シラユキの一言が場を切り裂いた。


「……人を待たせるのも悪いな。行こう」

「おーー!!」


セラは腕を振り回しながら走り出す。


この対応力が身についてきた自分が怖い。


「ふふ。冷やした白米、大歓迎です」

「意外だな」

「GI値50ですから♪」


さすがだ。


宮殿が見えてくる。


門の前でユキナがこちらに気づき、満面の笑みで手を振った。


その笑顔に引かれるように、自然と足取りは速くなっていた。


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