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異世界でも健康的ルーティンを!!〜健康生活を徹底していたら、いつの間にか世界が平和になっていた〜  作者: SSS


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第42話 ライバルの存在が人を変えるらしい


「お母様!!」


扉が勢いよく開け放たれ、白銀の嵐が飛び込んできた。


シラユキだ。


息を切らし、膝に手をついて必死に呼吸を整えている。

皇帝というより、完全に“娘”の顔だった。


「どうしたの、そんなに慌てて」


ユキナが穏やかに問いかけると、シラユキはがばっと顔を上げ、母の頬に手を伸ばした。


「……本当に、治ったの? 夢じゃないよね?」


声が震えている。


ユキナは少し照れたように笑い、指先を握り返した。


「ええ。まだ自分でも信じられないくらい」


しどろもどろなシラユキと、それを優しく見守るユキナ。


……きっと、心の奥ではずっと気にしていたんだろう。

倒れた母のことを。


なのに見ないふりをした。

見たら、壊れそうだったから。


こちらの視線に気づいたシラユキは、恥ずかしさを隠すように咳払いする。


「……あなたが母の介助を始めたことは侍女から聞いていました」


そして、皇帝の顔に戻る。

鋭い瞳が俺を刺した。


「一体、どんな手を使ったのですか?」


「食事の見直しと、睡眠ルーティンの確立。それと適度な運動だ」


俺が言うと、シラユキは目を細める。


……その反応、嫌な予感がする。


ユキナには日記を続ける習慣があったから、俺は“ジャーナリング”を勧めた。

出来事を書くのではなく、出来事に対する感情を言語化して整理するやり方だ。


結果、ユキナの精神は安定し、睡眠も改善して――回復が加速した。


だが。


シラユキは一歩近づき、低い声で言った。


「……まさかとは思いますが」


灰色の瞳が、刃物みたいに光る。


「糖質を与えていませんよね?」


……はい来た。


俺、魔糖素と同列に嫌われてるなこれ。


横を見ると、セラが――


「っし!!」


思いっきりガッツポーズしていた。


「何してるんだ」

「え? だって、しらたまに嫌われたら私のチャンス上がるじゃん?」


知らん。


「まあ、人間の女の子の機嫌なんて取らなくても、その気になればいつでも――」

「黙れ」


危険発言はそこで止めた。


ユキナが困ったように笑う。


「シラユキ。私の命の恩人にそんな目を向けないの」

「でも、お母様……」


シラユキの足元がふらついた。


次の瞬間、俺の体が勝手に動いていた。

倒れる前に抱き留める。


軽い。

驚くほど、軽い。


「……無理をするな」

「っ……放してください」


言いながら、腕に力が入っていない。


「今の食生活を続けていたら、いつか本当に取り返しがつかなくなる」


シラユキの唇が、悔しそうに震える。


「なら……なら、私たちはどうすればいいのですか?」


絞り出すような声。


「お母様の食生活では血管に負荷がかかる。糖質を摂れば人体に悪影響がある」

「一体……何を食べればいいんですか」


――怖いんだ。


“間違えたら、また母が倒れる”って。

“自分も同じ道を辿る”って。


俺は、小さな飴玉を取り出して手渡した。


「これは……あの時の……」


「自然由来の材料で作ってあるんだ。血糖値も急激には上がらない。だから怖がらなくていい」


シラユキは、指先でそれを掴み、じっと見つめた。


「君の言う通り、過度な糖質は血管にダメージを与える。肥満や病気の引き金になることもある」

「……でしょう?」


「でも、糖質は三大栄養素の一つに数えられるくらい、体にとって“必要な栄養素”なんだ」


シラユキの瞳が揺れる。


「糖がなければエネルギーが回らない。ユキナは糖質過多だった。君は真逆だ」


抱き留めたまま、俺は言い切った。


「どんなものでも、極端は毒になる」

「世の中、白黒はっきりしてることの方が少ない。大抵は灰色のグラデーションでできている。だからこそ、柔軟な思考がーー」


腕の中で、シラユキがぷっと吹き出した。


「……ふふっ」

「要は、バランスが大事って言いたいんでしょう?」


「ま、まあそうだな……」


横でセラが一人うんうん頷いている。


「健康の話になると変なスイッチ入るんだよね〜。呪文みたいなこと言い出すし」

「仕方ないだろ。これが俺のアイデンティティだ」

「そのバカみたいに真っ直ぐなとこ、ポイント高いけどね♪」

「バカは余計だ」


シラユキは、静かに飴玉を口に含んだ。


「……優しい味」


表情が、ほんの少し緩む。


「安心する」


彼女の言葉に応えるように、瞳も指輪もほのかな桜色に瞬いた。


「それは体が求めてるサインだ。今は、その声に耳を傾けよう」

「いつだって、ちゃんと向き合えば体は応えてくれる」


シラユキは小さく頷いた。


「……そうね」


その時。


セラがペアラSSをスクロールしていた。


「何してるんだ」

「その言葉、エクレールの時にも言ってたな〜って思って動画探してるんだ」

「探さんでいい」


――遅かった。


「エクレール?!」


シラユキが飛び起きる。


「まさか……あの甘菓子姫のことですか?!」


甘菓子姫……。


「あったあった!」


セラが画面を見せると、そこに映っていたのは――


湯気の立つ食卓。

笑っている女性。

そして、やけに引き締まった体つき。


シラユキが首を傾げた。


「……誰です? この麗しい乙女は」

「エクレールだ」

「なっ?!」


桜色の瞳が見開かれ、固まった。


「お、おい、シラユキ……」


「……あの甘菓子姫はもっとこう、ふくよかだったではありませんか!」


言葉に怒気が混じる。


「こんなの、私の知るエクレールではありません!!」


まあ、そりゃそうだ。

特訓したからな。


「私たちが特訓したらこうなったんだよ! すごいでしょ〜」

「しれっと手柄を持っていくな。君は地面に倒れてただけだろ」

「いーじゃん! 減るもんじゃないし! ケチ!」


どうして俺が悪いみたいな構造になるんだ。


「貸してください!」


シラユキはペアラSSを奪い、画面を凝視した。

怒りで手が震えている。


ちょうど、エクレールのフォローが俺に流れる場面だった。


『私が“推す”のはセージだから』


「ぎゃあぁぁぁーー!!」


悲鳴を上げたのはセラだった。


「私が振られた場面だったの忘れてたぁーー!!」


勝手に流して勝手に取り乱すな。


……だが、その瞬間。


シラユキの白銀の髪が、ふわりと揺らめいた。


空気が熱を帯びたような――そんな錯覚。


そして彼女は、どこかに向かって拳を突き上げる。


「決めました!」


「私も特訓します!!」


……え?


「何をボサッとしているのですか! 私にも指導してくださいな!」

「待て待て待て! 急展開すぎる! いきなりどうした?!」

「だって、このままでは甘菓子姫にあなたを取られてしまいます!」

「そんな理由?!」


儚いと思えば頑固。

冷たいと思えば暑苦しいほど情熱的。


難しい子だ……。


ユキナは、そんな娘を温かい目で見守っていた。


「あの子がこんなに感情豊かになるなんて……エクレール嬢と遊んでいた頃以来ね」

「それだけ、聖司さんとセラさんに心を開いているのでしょう」


そう……なのだろうか。


「おいしらたま! 貴様は負け確定ヒロインだろ! 大人しく倒れとけ!!」

「あなたも似たようなものでしょう! あと、しらたまって呼ばないで! 虫唾が走ります!!」

「なんだとぉ?! 女神舐めるなよ! 襲うぞ!!」


「二人とも、いったん落ち着――」


言い終える前に、二つの視線が突き刺さった。


「ちょっと黙ってて!」

「ちょっと黙っててください!」


……はい。


立場も忘れてギャーギャー喚き散らす二人に置いて行かれた俺は、

ただ、呆然と眺めることしかできなかった――。


ここまで読んで下さりありがとうございます!


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