表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でも健康的ルーティンを!!〜健康生活を徹底していたら、いつの間にか世界が平和になっていた〜  作者: SSS


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/43

第27話 ひかる美的センスと晩酌中の涙麗姫


バズルダム魔界貴族居住区。

街の入り口付近に漂っていたスラム街のような重苦しい空気は、いつの間にか薄れていた。


枯れ果てた大地に整然と並ぶ住宅。

葉をすべて失った丸裸の木々。

魔界であることを否応なく思い出させる景色ではあるが、不思議と治安の悪さは感じない。


――どこの世界でも、金持ちエリアは似たような雰囲気になるものらしい。


「わ〜! 高そうな家ばっかりだね。私もここに別荘でも買おっかな」


それは色々と問題があると思うぞ。

主に種族的な意味で。


……いや、神界の連中なら普通に肯定しそうだな。


それよりも気になるのは、俺たちだ。

どう見ても、この富裕層エリアに溶け込める面子じゃない。


特にアブルスとゾネリオ。

存在感が完全にアウトだ。


「この辺はまだ安い方だ。モルヴィネールの財力には敵わねぇ」

「モルヴィネールって、メルミナの一族だよな。そんなに権力が?」

「バズルダムは魔界の首都だ。都知事みてぇなもんだな」


……例えが分かりやすい。

というか、なんでそんな単語知ってるんだ。


「実際、彼女はグラト様の一番の側近ですからねぇ〜。実力も折り紙付きですよ」


ゾネリオ、目を見開かなくていい。

普通に怖い。


「それだけの力があるなら、なおさら疑問だな。どうして救いが必要なんだ?」

「あいつの能力が厄介でな。まあ、根本の原因は別にあるが」


そのとき、先頭を歩いていた赤い巨体がぴたりと止まった。


「ここだ。モルヴィネールの屋敷」


見上げた先には、大きな羽と長い尻尾を持つ巨大な石像。

ガーゴイルだろうか。


その下には、片手では到底開きそうもない重厚な門。

左右には、果てが見えないほど高く長い石造りの外壁が続いている。


「さっそく入るぞ」


アブルスは軽々と片手で門を押し開けた。


「……鍵は?」

「何かあったら隣が助けてくれるだろ。必要ねぇよ」


田舎の防犯意識か……?


門が閉まると、地震のような振動が足元を揺らした。


「来てみたはいいが、本人がいなかったりしないよな?」

「それはねぇな。なんせ、あいつはある意味、俺たちより重症なんだ」


――SNS依存、か。


「まあ、会えば分かる」


蝋燭の灯る長い廊下を進むと、ひときわ煌びやかな扉が現れた。

嫌な緊張感が背中を撫でる。


「よー、遊びに来たぜー」


ノリが軽すぎる。


そのまま雪崩れ込むように中へ入った。


……暗い。


「いてぇっ?!」


悲鳴と同時に、床に何かが転がる音。

瓶、か?


足元に転がってきたそれを手探りで拾い上げた瞬間――


「今すぐ帰れ。私は独りでいたいのよ」


麗しい声と同時に、部屋に灯りが入った。


白く輝くような肌。

それを際立たせる群青のドレス。

胸元で揺れる雫型のネックレス。


黒紫の長髪を靡かせ、ワインレッドの瞳がこちらを射抜く。


――魔族であることを忘れそうなほどの美貌。


……なのだが。


彼女はスマホを眺めながら、グラス片手に飲んだくれていた。


長机の上には、空になったボトルが山のように並んでいる。


「ヒック……」


目が据わっている。

目元は赤く、どう見ても泣き上戸だ。


絡まれたら面倒なタイプだな。


「久しぶりに会いに来てやったのに、いきなりワインボトル投げるか? 人間なら死んでたぞ」

「ヒック……頼んだ覚えはないわ、アブルス。そこのピエロ連れて帰りなさい。バックルがウザいから」


それは、すごく分かる。


「いやいや最高のデザインでしょう? この笑顔、美しいと思いません?」


……残念ながら、セラといい勝負だ。


「ちょっと! 何よその言い方! どう見ても傑作でしょ!」


例の“五歳児が描いた魔王グラト”をバシバシ叩くセラ。


「素晴らしい! 特徴を的確に捉えた見事なグラト様!」

「でしょ? あなたのスマイルマークも素敵よ。口角の角度が絶妙!」


――リフレーミング。

物事の見方を変え、ポジティブな意味を見出す手法。


日頃から意識してはいるが、これはさすがに無理がある。


……いや、試練と考えれば成長の糧になるのか?

なるほど。

ここを肯定できれば、俺はもっと高みに――


「さっきから何ぶつぶつ言ってるの?」

「いや、なんでもない」


その瞬間、ワインボトルが凄まじい速度で飛んできた。


「いたぁっ?!」


直撃したのはゾネリオの額だった。


「帰れって言ってるのよ。私は忙しいの」


スマホ片手に忙しい、ね。


だが、魔界のSNS依存も相当深刻らしい。


「……まだ見つからねぇのか」

「そうね。毎日欠かさずチェックしてるんだけど」


買い物か?

スマホ一つで何でも手に入る時代だ。

悪いニュースや広告で、知らず知らずストレスを溜めることもある。


その逃げ道が、またスマホになる。


だが、彼女の眼差しは、どこか儚かった。


「どうして人間なんかと一緒にいるのよ」

「セージはただの人間じゃねぇ。俺たちをスマホ依存から救った男だ。涙麗姫様の役にも立つと思ってな」


アブルスを睨みつけるメルミナ。


「私が依存しているとでも?」

「思いっきりな。下手すりゃ俺たちより重症だ」


彼女は笑いながら、赤くなった目元を擦った。

まるで、涙を拭うように。


「面白いわ。仮に私が何かの依存だとして、魔族のことも知らない人間が役に立つわけないでしょう」

「分からねぇぞ。案外サクッと解決するかもしれねぇ」

「……まったく」


しばらく黙っていたメルミナは、諦めたように息を吐いた。


そして、無言でスマホ画面をこちらに向ける。


その瞬間、俺は言葉を失った。


画面に映っていたのは――

ワインレッドの瞳をした少女、リオナの姿だった。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


皆様の応援が、何よりの励みになります!


少しでも面白い、続きが気になると思っていただけたら、ぜひブックマークをお願いします!(広告下の☆をタップで簡単に登録できます)


また、読み進める途中でも構いませんので評価をしていただけると大変嬉しいです!


これからも、どうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ