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異世界でも健康的ルーティンを!!〜健康生活を徹底していたら、いつの間にか世界が平和になっていた〜  作者: SSS


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第22話 堂々と尺稼ぎと真実を語る


健司の小屋で一晩を明かした俺たちは、夜明けとともに律命修道院へと戻ってきた。


久しぶりの大広間。白光が差し込み、以前よりずっと荘厳に見える。


「ここに足を踏み入れるのは何十年ぶりだろうな…。随分と立派になったものだ」


健司は懐かしむように視線を巡らせる。


「本来なら、お主が治めていた場所だぞ?」

豪快に笑うシル・ゼンに、健司は肩を落とした。


「魔王討伐に失敗した俺に、その資格などなかった」


「真面目すぎるのだ、お主は。もっと肩の力を抜いてみよ。その方が集中力も上がる」


「…まあ、否定はできんが」


お、シル・ゼン。たまに良いこと言うな。


健司はふと何かを思い出したように、顎に手を当てた。


「そういえば——シル・ゼンよ。あの雑誌、まだ持っているのか?」


雑誌?


「雑誌って何の話だ?」


「俺がこの世界に転生した時、手に持っていたんだ。あの有名なトレーニング雑誌をな。シル・ゼンがやけに気に入って、それ以来ずっと…」


トレーニング雑誌といえば、アレか。


よくそんな物、異世界に持ち込めたな…。


シル・ゼンはドンッと胸を叩く。


「当然よ! あの日から、これは我らの魂の一部である!」


誇らしげに立ち上がると、大広間の奥。神棚のような場所から、豪華な敷物に載せられた一冊の本を両手で持ち帰ってきた。


「ほれ!」


セラがずいっと首を突っ込む。


「うわっ、素敵な筋肉♡」


表紙にはムキムキの欧米人が巨大な器具を担ぎ上げている。

しかも無駄に保存状態がいい。


「残っていたんだな…懐かしい。時間がある時に読み込んだものだ」


健司が微笑みながらページをめくり——


「待った」


俺は反射的に手を差し込み、そのページを押さえた。


「これは……カフェインのコラム?」


「おお、そういえばシル・ゼンはこのページを食い入るように読んでいたな。自分でも作れるようになる、とか言っておった」


「フフフ…当然であろう。研究に研究を重ね、ついに最高の常飲水を完成させたのだ!」


シル・ゼンは例の“貼り紙だらけの壁”をバンッと叩く。


「見よ! これぞ修道院秘伝の霊薬!」


文字も読めないのに、どうやって独学で到達したんだ…。


まあ、そのせいで修道院は滅びかけたが。


シル・ゼンは自嘲気味に笑い、静かに座った。


「今となっては過去の過ちよ」


「願いは叶ったはずだろう? どうした?」


「ワシはコーヒーに溺れ、我を失った。修行僧も皆カフェイン依存に陥り、修道院は消滅寸前じゃった」


その目は、僅かに後悔の色を帯びて俺に向けられる。


「聖司殿が救ってくれたのだ。我々の命も、修道院も」


「たまたま気づいただけだよ」


「それでも救われた事実は変わらん」


健司はしみじみと頷いた。


「なるほどな…。ルーミス神の言葉、案外本当になるのかもしれん」


次の瞬間、健司の身体が淡い光に包まれる。

ふわりと光が舞い上がり——


「ちっ! 掴めない?!」

セラが猫みたいに飛びついたが、光の玉は悠々とすり抜け、俺の手の中に吸い込まれた。


健司はその様子を見て、小さく息をつく。


「なるほど。これは…俺の聖司への信頼が形になったものか」


「信頼されるような事はしていないけどな」


「いや、教わったのは知識ではない。健康に向き合う姿勢だ。…この歳で、まだ変われると知った」


健司の言葉は、ただただ真っ直ぐだった。


折れても、何度でも立ち上がる強さ。

それこそが、本当の“精神の強さ”だと教えてくれる人。


レジリエンスを体現する男。


俺こそ、見習わなければならないことが多い。


「いつかまた、互いのルーティンを語り合おう」


「もちろん」


差し出した手を、健司は力強く握り返す。

優しい顔の奥で、まだ燃え続けている意志が伝わってきた。


——その瞬間。


「はいはい、友情ごっこ終了ー!」


セラが俺たちの間にズバァッと割り込んできた。


「視聴者のみんなね? 魔界編めっちゃ楽しみにしてたの! なのに1話まるごと雑談で尺稼ぎしちゃった責任、ちゃんと取ってよね?」


「覚えてたか……流れで誤魔化せると思ってたんだが」


「私はニワトリじゃないからね?! 記憶力はちゃんとしてるの!」


いや、その尖らせた口元は完全にニワトリだが。


セラは勢いよく地図を広げた。


「さあ! いざジャンクゾール魔界域へ! 薬草は見つからなかったけど!」


「話をすり替えるんじゃない。ただの観光だからな」


……あ。


薬草のこと、完全に忘れてた。


「薬草か。なら、これを持っていけ」


シル・ゼンが棚から植物を取り出す。

枝に小さな赤い実。


「これぞ修道院の聖草、アラビカである!」


まさかのコーヒー豆ーーーッ?!


異世界の“聖なる薬草”と聞いたら、もっとこう…

万能薬とか、蘇生草とか、そういうの期待するだろ!!


「ドンマイドンマイ♪ 異世界なんてそんなもんだよ!」


「君のメンタルの強さは、時々本気で羨ましいよ」


こうして俺は、最後の最後で深い絶望を味わいながらも、

健司、シル・ゼン、修行僧たちの温かい見送りを受けて律命修道院を後にしたのだった。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


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