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異世界でも健康的ルーティンを!!〜健康生活を徹底していたら、いつの間にか世界が平和になっていた〜  作者: SSS


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第20話 時空監視官長、降臨


お互いの健康知識をぶつけ合い、

“あの論文知ってる?” “あのやり方試した?”を延々繰り返していたら——


いつの間にか、蝉の声はフクロウの鳴き声に変わっていた。


「今から修道院に戻るのは危険だ。今日は泊まっていくといい」


健司が暖炉に薪をくべ、火を灯す。

ぱちぱちと心地いい音が小屋に広がった。


「改善点も分かったんだ。いよいよ魔王グラトを討伐しに行くのか?」


「いや。いくら健康生活を維持しているとはいえ、さすがに歳を取りすぎた。

もう全盛期の半分も力は出せんだろう」


それは……そうだ。


どれだけ栄養管理をしても、筋力を鍛え続けても、

加齢による“老い”だけは避けられない。


——若さというのは、それだけで大きなアドバンテージなんだ。


「聖司も、救世主としてアスファレイアに転生してきたのだろう?

お前の知識と積み上げた肉体は、俺を凌駕している。お前なら可能性はある」


「ああ、その話なら秒で断った」


「な、なにっ?!」


健司が、漫画みたいに口をあんぐり開けた。


「ひどいよね〜。第1話から女神の頼みを秒で断るとかさ〜?」


……1話目からヒロインが号泣土下座するのも大概シュールだったけどな。


「言っただろ。俺は自分の健康維持を最優先する。

世界がどうとか、正直そこまで興味はない。そんな大それた力もない」


「いや、十分あるからね?! この私が直々に魂拾ってきたんだから!」


「俺は捨て猫か何かか?」


健司は感心したように笑う。


「お前は……健康の化身みたいなやつだな。俺にはできなかったよ」


「健司は優しすぎるんだ。他人のために力を振るうその正義感は、本当に立派だと思う。

でも俺は、自分をちゃんと満たした上で他人に手を伸ばしてこそ、ようやく意味を持つって考えてる」


自分の身を削ってまで尽くす姿は、一見すごく美しい。


けれど、そのやり方だと、

いつか自分の心が先に壊れる。


心も体も満たされていない状態で無理をすれば、

その“ツケ”はいずれ自分に返ってくる。


映像の中の健司は、顔色こそ悪かったが——

内心では、自分にのしかかった“世界の命運”という重さに、押し潰されかけていたのかもしれない。


追い詰められた人間の思考は、時に極端で、単純になる。


「はっはっはっ! まさか年下に説教される日が来るとはな!」


健司が突然、腹の底から笑い出した。


しまった。ちょっと熱が入りすぎたか。


「すまない。年配の人間にえらそうなことを——」


「いや。聖司の言う通りだ。

俺は少々、他人のために生きすぎたのかもしれん。

健康ルーティンを通して“自分の人生”を生きているつもりで、

最強のスキルを得たことで慢心し、いつの間にか他人の期待に振り回されていたのだろう」


その言葉にセラが割って入る。


「あははっ! それで断食1週間とか、もはや“他人のため”じゃなくて“敵のため”だからね?」


たしかに、結果的に魔王に利する行動になってるな。


……ていうか笑い事か?


否定するのは簡単だ。

でも、自分の過ちを認めて笑い飛ばすのは、ものすごく難しい。


しかも年下に説教されて、この余裕。


——この男の器の大きさを、ようやく実感した。


「まだまだだな、俺は」


思わず、そんな言葉が漏れた時。


セラがニコニコしながら顔を覗き込んでくる。


「うんうん。自分を客観視するのは、とっても大事なことよね〜。

じゃ、その気づきを活かして、世界を救いに行きましょうか♪」


「断る」


「なんで?!」


むしろ、なぜそこでいけると思った。


「残念ながら、器の小さい今の俺には、

“救世”を理由に自分の欲望を満たそうとする君のムーブを、心から許容できないからな」


「くっそー!! このタイミングなら余裕で押し切れると思ったのに!!」


最後の一言がいつも致命傷なんだよな、この女神。


とはいえ、少し気になることがある。


「魔王グラトみたいな顔してどうしたの?」


「確かに、魔王の力は圧倒的だ。

だけど、結局あいつは健司を殺さなかった。

それどころか、健康アドバイスまでくれた」


セラがハッと目を見開く。


「まさか……魔王に拐かされた?! 騙されちゃダメだからね!!」


「健康に気を遣ってるやつに、悪い奴はいない」


「健康への信頼、重すぎない?!」


「当たり前だ。健康はすべての土台だからな」


健司も顎ひげをさすりながら頷く。


「確かに。石を投げる危険性まで指摘してきた。

今のご時世、“ちゃんと叱ってくれる存在”って貴重だよな」


気にすべきポイントはもうちょっと別のところだと思うが。


ふと、前から気になっていたことを口にする。


「そういえば、セラがそこまでアスファレイアに肩入れする理由は何だ?

本来、異世界への直接干渉は禁じられてるんだろ?」


毎回セラの配信を楽しんでる神々の様子を見る限り、

その条約はだいぶ形骸化してる気もするが。


「ランクを上げたいってだけなら分かる。

でも、それだけじゃないんじゃないか? 何かもっと大事なことを隠してるだろ」


「それは……」


セラは言葉を詰まらせ、俯いた。


暖炉の火がぱちぱちと弾ける音だけが、静かな部屋に響く。


セラの話では、異世界はアスファレイアだけではない。

数え切れないほどの“世界”が存在し、

それぞれを監視・観察するのが神々の仕事。


つまり、アスファレイアも、数ある“箱庭”のひとつに過ぎない。


ひとつ滅んだところで、

自然の摂理。

仕方のないこと。


——少なくとも、神々の感覚では。


「セージ、あのね……」


ようやくセラが口を開きかけたその瞬間——。


ペアラSSが、彼女の手からふわりと離れた。


スマホ型端末は宙に浮かび、淡い光に包まれる。


次の瞬間、画面から立体映像が飛び出し——

小屋の内部が、そのまま別世界に上書きされたかのように変わった。


揺れる草の匂いが、本当に漂ってきそうな大草原。

どこまでも広がる青々とした緑。


——神界?


そう思っていると、目の前に大きな岩。

その上に、ひとりの人物があぐらをかいて座っていた。


灰がかった青色の長髪。

青と白を基調とした薄手のチュニックローブが、風になびいている。


セラと同じ“神”だろう。


ただ座っているだけなのに、

時空そのものがピリッと引き締まるような、独特の圧がある。


足元には、半透明の文字が浮かんでいた。


『時空監視官長』


——そして、その手には釣竿。


草原に向かって糸を垂らし、微動だにしない。


『ふむ。今日は潮の流れが悪い』


いやここ、草原だよな?


あ。この人たぶん、関わったら面倒なタイプだ。


「げっ……ルーミス?!」


セラの顔から血の気が引いていく。


『お前は相変わらず能天気だな』


「ボケッと釣りしてるだけのお前に言われたくなーーーい!!」


『いつまでも現場を駆けずり回るのは、大変だろう?

——天下のZランク様?』


「Zランク言うなぁぁぁーーー!!」


さっきまでしおらしく俯いていた女神はどこへやら。

頭を掻きむしりながら転げ回るセラ。


一瞬漂いかけた重苦しい空気は、ルーミスの一言で、見事に吹き飛んだ。


……まあ、結果オーライか。


俺が胸を撫でおろす暇もないくらい、

セラは、日頃の鬱憤を晴らすかのごとくルーミスに噛みつき続けるのだったーーー。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


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