表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でも健康的ルーティンを!!〜健康生活を徹底していたら、いつの間にか世界が平和になっていた〜  作者: SSS


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/42

第13話 荒ぶる大貫首と女神の悪知恵


真っ黒な外壁に、妙に丸みを帯びた屋根まわり。


先端には金色の彫り物がきらりと光り、全体的にどんよりした気配をまとった巨大寺院が、森の奥に鎮座していた。


あれが、律命修道院の中心——黒醒院(こくせいいん)らしい。


「修道院」と聞いて想像する、白くて清らかな建物とはだいぶ違う。

どちらかというと、ダーク系テーマパークだ。


門の前には、道着姿の修行僧らしき男が仁王立ちしていた。


「なに奴」


低く太い声。


威圧感のある筋肉ゴリゴリの体格で、立っているだけでそこそこ迫力がある。


……のだが、惜しい。


目の下のクマがとんでもない。


自信に満ちたポーズも、そのだるんとした目元のおかげで、全部台無しだ。


「この辺りに、神聖な薬草があると聞いた。澄神草(ちょうしんそう)ってやつだ」


門番の目つきが、すっと鋭くなる。


「貴様、どこでその名を知った」


「シガリア王国だが」


ドンッ!!


次の瞬間、門の柱に拳が叩きつけられた。


屋根にとまっていた鳥たちが一斉に飛び立ち、足元の地面までわずかに揺れる。


「シガリア王国め……! ついにスパイを送り込んできよったか。何たる失態!」


「城下町ですれ違った修行僧が、普通に教えてくれただけなんだが」


「澄神草の存在は機密事項のはず……。

 まさか拷問して吐かせたな!? この悪魔め!!」


いや、むしろ向こうがノリノリだったぞ。


ていうか、最近やたら悪魔呼ばわりされるんだが。


「セージって自分のことしか考えてないもんね〜。悪魔扱いも妥当じゃない?」


「君も大差ないと思うが」


しばらく睨み合いが続いたが、ここで騒いでも埒があかない。


少し声のトーンを落として言った。


「誤解されているようだが、侵略しに来たわけじゃない。

 ここの“健康的な生活”を学びたくてな。澄神草も、その一端だと思っただけだ」


門番の男は、顎をさすりながら眉間のシワをゆっくり緩める。


「……外の世界にも、我らの生活が伝わっているとは」


「ああ。知らない知識は、積極的に取り入れたい性質でね」


「勉強熱心なのは好ましい。

 よかろう、入門を許す」


なんとか突破できたらしい。


◇ ◇ ◇


中に入ると、黒を基調とした寺院の内装は、想像以上に整っていた。


廊下も床もきれいに磨き上げられ、植え込みの緑は青々としている。


ただ——すれ違う修行僧たちの顔つきが、壊滅的に暗い。


みんな目はうつろで、肩は落ち、歩くたびに、深いため息が漏れている。


黒い建物と、げっそりした修行僧の組み合わせが、余計に地獄感を加速させていた。


「なんか……元気ないね」


「そうだな。少なくとも、糖質依存でハイになってる感じではない。

 これはおそらく——」


前を歩いていた門番が立ち止まり、重厚な扉の前で振り返った。


「この先に、大貫首様がおられる。粗相のないようにな」


「了解した」


軽く息を整え、扉を開く。


中は薄暗く、蝋燭の灯りがぽつぽつと床を照らしていた。

奥には、一段高くなった場所がひとつ。


そこに——痩せこけた影が、胡座で座っている。


長い焦げ茶色の髪が顔の半分以上を覆い、骨ばった腕と足が修道着の隙間からのぞいていた。


黒い修道着と、胸元で揺れる数珠。


それだけが、なんとか威厳めいた雰囲気を保っている。


ただ、手は微かに震え、視線もどこか空を泳いでいた。


初老、というより、やつれにやつれた中年といった方が近いか。


その人物——大貫首と思しき男が、ゆっくりと顔を上げた。


「よくぞ参った。新たな同志よ。まずは歓迎の——ゴホッ、ゴホッ、ゴホホッ!!」


唐突な激しい咳。


胸を叩き、呼吸を整えようとしているが、なかなか止まらない。


さっきまでの張り詰めた空気は、一瞬にして吹き飛んだ。


……えーっと。


ここ、健康志向の修道院で合ってるよな?


「肩書き的には、そういうことになってるね〜」


「申し訳ないが、そうは見えないんだが……」


ようやく咳を落ち着かせた大貫首が、しゃがれた声で名乗った。


「ワシはシル・ゼン。この黒醒院を統べる、律命修道院の貫首だ」


「俺は青葉聖司。セージでいい。こっちはセラ」


「ふむふむ。

 我らの“健康生活”を学びたい、と聞いておるが」


「そうだ。できる限り、色々教えてもらえると助かる」


シル・ゼンは、どこか落ち着かない様子でヒゲを撫でた。


「そうかそうか。そこまで懇願されては、断るわけにもいかぬな」


成り行きでそうなっただけで、懇願てほどではないが。


「できれば、澄神草についても知りたいんだが」


「うむ。構わぬ。

 ただし、澄神草は我らが崇める神聖なる薬草。

 試練を乗り越えた者のみが、その葉に触れることを許される」


そこまで言ったところで、セラがペアラSSをいじる手を止め、すっと指を突きつけた。


「あのさー」


「嫌な予感しかしないから、その指をしまってくれ」


「あなた、信頼できそうにない」


思わず、セラの口を後ろから塞ぐ。


「バカ! いきなり何を言い出すんだ!」


「だってさ、さっきから咳ばっかだし、手は震えてるし、目は死んでるし」


「本音でも、言っていいことと悪いことがあるんだ。親に習わなかったのか」


「ふふん。セージもまだ甘いね。

 あの老人、どう見ても不健康じゃん。

 その澄神草ってのも、本当に効果あるか怪しいよ?」


健康知識ゼロからスタートした女神が、よくもまあそんな自信満々に言えるもんだ。


……が、確かに生き生きはしていない。


というか、あれで「健康の象徴です」と言われても説得力ゼロだ。


そこで、シル・ゼンが突然ガバッと立ち上がった。


「我々は——」


嫌なフラグが立つ音がした。


「我々は、健康だぁーーーーーー!!!」


「うわああああああーーー!!」


条件反射で、思いっきり顔面にワンパンを入れていた。


ドガァッ!!


そのまま勢いよく壁にぶつかり、床にずるずると崩れ落ちる大貫首。


同時に、視界の端が虹色に光った。


ペアラSSの画面が、勝手に空中に浮かび上がる。


映し出されたのは、あの見慣れた神界ダラハラの風景。


隣でセラが肩を震わせている。


神界行事統括官:『ぎゃははは! セージびびりすぎ〜!』

時空監視官長:『この程度で取り乱すとは……鍛え直しが必要だ』

食材管理長:『あわわわわわ!! 痛そう〜!』


「キシシ! いい画が撮れた〜! ほら見て、PV50超えた!」


「こら、勝手に流すな!!」


セラは、くるくる宙で回転しながら、俺の手をひらひらとかわしつつ操作を続ける。


「ふっふ〜ん。

 いつでも“おいしい瞬間”が撮れるように、自動録画モードにしておいたのだよ!

 我ながら天才的采配〜♪」


どうでもいいところにだけ、頭をフル回転させるな。


しばらくドタバタやっているうちに、ふと場の空気が妙に静かなことに気づいた。


……これは、あれだ。


中学時代、友達と騒ぎすぎて、

教壇の先生が一言も喋らずに、じーっとこっちを見ていた、あの“無言の圧”に似ている。


恐る恐る振り向くと——


さっきまで吹っ飛んでいたはずのシル・ゼンが、何事もなかったかのように元の位置で胡座をかいていた。


「…………」


「…………とりあえず、落ち着こうか」


「はい」


自然と背筋が伸び、俺は正座をした。


つられて、セラも隣でちょこんと座り込む。


なんとも言えない、くすぐったいような恥ずかしさをごまかすように、俺はしばらく口を閉ざしたまま、蝋燭の炎だけをぼんやり眺めていたのだったーーー。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


皆様の応援が、何よりの励みになります!


少しでも面白い、続きが気になると思っていただけたら、ぜひブックマークをお願いします!(広告下の☆をタップで簡単に登録できます)


また、読み進める途中でも構いませんので評価をしていただけると大変嬉しいです!


これからも、どうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ