表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失墜  作者: ゆかこ
8/32

8

「本当に、私のことを好きって思ってくれてる人、いるのかな」

「いるんじゃないですか」


こくり、と頷きながら陽を指差す。


「違うの。きっと陽様は私を見てない。私も陽様を見てない。もう怖いよ、どうしてそんなに私を苦しめるのかな」


 麻は誰にともなく、嘆いた。幼少の頃から、数え切れないほどの男に愛され、抱かれ、想われ。売られたことで親族や友人までもを失いかけていた今、麻には信じられる者などいなかった。


「じゃあ、苦しめばいい。もっともっと。苦しんで苦しんで、魔よけでもすれば良いじゃないですか」


 耀は大きく深い笑みを作り、麻の腰を掴み、抱きしめた。人が見ている。彼は麻の顔を隠すように包容し、彼女を自らの膝に座らせた。細い脚と、しっかりとした腰が絡む。そのまま、麻の柔らかな唇を貪った。麻はしきりにあつい、あついと呟いていたが、やがて耀の愛撫を受け入れた。髪を撫でる手がひどく心地よい。体を密着させたまま、耀の欲求に、麻は必死で応えた。


「まだ足りないでしょう? これくらいのことはされ慣れてますよね」


 耀の笑みは、まるで悪魔のようだった。ひどい恐怖を覚えながらも、ひしひしと心地よさが麻を蝕んでいった。首筋を撫でられ、何か冷たいものが背筋を走る。軽く喉を反らした際、麻はあるものに気がついた。耀と麻の状況をしっかりと見ていた陽だ。冷めた目で二人を見据えていた陽はやがて麻の視線に気づくと、去っていた。


「あ、陽さんが」

「どうしました?」

「陽さんが……」

「それでいい」


 耀はさっと麻から体を離した。どうやら、目的は陽に見せ付けることであったらしい。麻は体の火照りを抑えきれぬまま、荒いため息を吐いた。そして耀が、そのため息に笑ったその時だった。麻は口内に異物感を感じたのだ。慌ててぺろりと舌で擦ってみると、それは何かしらの薬のようだった。


「ちょっと、何入れたの?」

「睡眠薬、とか言ったら怒るかな」


 悪気もなく言った耀に、信じられない、と麻は視線を向けた。耀はなおも笑っている。くらくらと眠りに堕ちていくような蕩けた感覚と戦いながら、麻は必死で声を上げた。 ただでさえまずいことをしているのだ。内部告発でもあれば、麻どころか耀の立場までもがなくなるだろう。


「眠って忘れれば良いじゃないですか」


が、にやりと微笑んだ耀に抵抗することは無理に近い。麻はすっかりとあきらめ、耀の肩に身を預けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ