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僕は姉の足首にあるアンクレットが好きだった。
だから、入院する時に、姉さんの細くてきれいな足首からアンクレットを外して、
ずっと自宅の机に飾っていた。
「ねぇ、まだ持っててくれたんだ」
目の前の良く知った見かけの女の口調は、声は違っても、とても懐かしい。涙が出るほどに。
「あれ、どうしたの。洋ちゃん」
「本当に、死体なの」
「嘘じゃないわ」
姉は左腕で僕の右手を掴んで容子の右胸へ押し付けた。
「静かだね」
「死んでるから」
今、僕の前には、
さっき死んだという元恋人の容子が立っている。
でも、
中に入っているのは、
十年間、寝たりきりだった姉だった。