第31話 勇者を呼ぶ謎の箱
手分けして部屋を調べ始めてから10分ほど、まだ探し始めたばかりとは言え武器どころかそれらしいものが見つかる様子もない。
「どうだカズキ、何か見つかったか?」
俺は少し離れた場所のカズキに声をかける。
カズキは瓦礫の山をどかしその下に何かないかと探しているようだったが手を止めてこちらの方に顔を向けると軽く首を振る。
「いや、特に何も見つからない。そっちはどうだ?」
「俺もだ、まだ何も見つけられてない。ラルクも……同じだろうな」
遠く見えるラルクの背中を視界に収めながら俺はそう答える。
「そうか……ところでクリスとアリッサは?」
「さっきあっちの方へ行ったみたいだけど」
俺が指差しながらそう言うとカズキは立ち上がり、クリスさんとアリッサが向かった方へと歩き出す。
俺もカズキの後を追うようにそちらへ向かう。
しばらく進むとクリスさんとアリッサの姿が見えてきた。
しかし、どうも様子がおかしい。
2人ともしゃがみ込んで何かをしているようだ。
「2人共、何をやってるんだい?」
カズキがそう声をかけると、2人はビクリと肩を震わせる。
「ああ、カズキくん、こ、これ見てよ!」
クリスさんが慌てた様子でこちらを振り返る。
その手には小さな箱のようなものを持っていた。
「これは?」
カズキが2人に尋ねる。するとクリスさんが嬉しそうな表情で答える。
「勇者の残したものを見つけたのよ! ほら、ここを見て!」
クリスさんが指差したところには、小さく文字が書かれていた。
俺はそれを覗き込むようにして見る。
『クローディア』これを残した者の名前だろうか?
しかし、他には何も書かれていない。
「これだけでなんで勇者の残したものだってわかるんだ?」
俺が尋ねると、アリッサが呆れた表情で俺を見る。
「リューヤ、あなたクリスが誰なのか忘れちゃったの?」
アリッサの言葉に続けてクリスさんが口を開く。
「わたしのご先祖様にクローディアって人がいたのよ、最年少魔王撃破記録を持つ天才少女だったって記述されてたからよく覚えてるの」
クリスさんはそう言うと、手に持っていた小箱を大事そうに抱え込んだ。
「なるほど……この箱に書かれているのはその人の名前である可能性が高いってわけか、しかし、どうしてこれを見つけられたんだ?」
俺がそう言うと、クリスさんが難しい顔をして言う。
「うーん、なんか誰かに呼ばれたような気がして、それで気づいたらいつの間にかこの部屋にいたって感じかな」
クリスさんがそう言うと、アリッサは首を傾げて言う。
「私は何も聞こえなかったんだけど、クリスが急にふらふらとこの部屋に入っていったから追いかけて来たの。何の迷いもなく床材を引っぺがし始めた時には驚いたわ」
アリッサはそう言ってクリスさんを見た。
「きっと勇者の血を引くもの以外には見つけられないようになっていたんだろうね」
聞こえてきた声に俺達が振り返るとラルクが歩いてくる。
「僕を置いていくなんて酷いじゃないか」
ラルクはそう言いながら俺達に近づいてきた。
「悪い悪い、ついクリスとアリッサの事が気になってさ」
とカズキが片手をごめんなさいのポーズにして謝る。
「まあ、いいさ、それよりその箱の中に何が入っているのか確認しよう」
「でも、この箱ってどう見ても小さいわよね。こんな小さな箱に収まるようなものなら、武器じゃなくてアクセサリーとかかも……」
ラルクの言葉にアリッサは箱を見ながら呟くように言う。
「どっちにしろ開けて見りゃわかるぜ、それになんであれ勇者の遺した物なら何か不思議な力があるかもしれないだろ?」
俺がそう言うと、アリッサは納得したのか、それ以上は追求しなかった。
「それじゃあ早速……」
そう言って俺が箱を開けようとすると、アリッサによって制される。
「何しれっとあなたが開けようとしてるのよ、ここは勇者であるクリスが開けた方がいいんじゃない?」
アリッサがそう言ってクリスさんに視線を向けると、クリスさんが少し戸惑った様子を見せる。
「別に開けるのは誰でもいいと思うけど……」
クリスさんがそう言うと、アリッサは首を振る。
「もしかしたら勇者の血を引くもの以外が開けると何か良くないことが起こるかもしれないでしょ?」
なるほど、それはありそうな話だ。
「なんかそう言われるとわたしも怖くなってくるんだけど……確かにわたしは勇者の血は引いてるけど、ご先祖様にちゃんと勇者として認めてもらってるかどうかわからないし……」
クリスさんが自信なさ気に答える。
「クリスなら大丈夫だって、オレが保証する」
カズキがそっとクリスさんの肩に手を置くとクリスさんの頬が赤く染まる。
「うん、ありがとうカズキくん」
そう言ってクリスさんが嬉しそうに微笑む。
ああ、この二人は事あるごとにイチャイチャしてからに、これじゃまたアリッサが不機嫌になるじゃないか。
俺の予想通り、アリッサは眉間にシワを寄せている。
ちらりとラルクの方を見ると、面白そうに口元を歪めて笑っていた。まったく、人の不幸を楽しんでやがる。
それはともかく、カズキの言葉に勇気づけられたクリスさんは、意を決して箱を開ける。
特に問題が起こるような気配もなく箱は静かに開いていった――
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