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革命の記憶

「革命だ!革命だ!」

7月のある日

まだ朝っぱらだというのに窓の外から若者たちの声が賑わっている。何が起きたのか気になり、窓から若者に事情を聞いた。

「朝から何があったのですか?」

すると若者は、

「何が起きたも何も革命ですよ!革命!俺らの自由を奪ってきたシャルル10世をついにこの国から追い出したのですよ」

と意気揚々に話してきた。

ここ数年政治のことなど考えずほとんど家の中に閉じこもって生活していた私は

「それはよかったですね」とだけ答えた。

それを聞いた若者は「はい!」と言い、希望に満ちた溢れた笑顔と共に走り去っていった。

その夜、私は若者が言っていた「革命」という言葉が忘れられずにいた。遠い昔、自分もあの若者と同じように革命に燃えていたためである。私は戸棚にあった古い日記を取り出した。約20年前、私が革命に燃えていた若かりし頃を三巻にわけて記したものだ。私はボロボロに風化した表紙をめくり日記を読み始めた。


ー1789年7月


この年の夏は異様な暑さだった。


大勢の人が火薬や弾薬を求めバスチーユ牢獄と言われる国家反逆罪でとらえられた人を収容している、いわば専制政治の象徴とも言える場所へと足を運びました。


私もその一人でした。


私も含めここにいる人たちは国の財政難、作物の飢饉に苦しめられた人たちです。中にはここ数日何も食べていない人さえいました。私たちはこれら生活を知った上で優雅に暮らしている特権階級の人々がとにかく憎くてたまりませんでした。しかも国王はこのような状況を改善しようとしていたネッケルさえも罷免しました。このことが私たちパリ市民に伝わった時、私たちは口論で解決することは不可能であると悟ったのです。

私たちパリ市民の心はその時すでに「革命」という二文字に染まっていました。


「口論で無理なら武力しかない」


皆そう思ったはずです。

まず私たちは武器を求めてアンヴァリッド(廃兵院)へと向かい武器を奪い取りました。しかし弾薬や火薬は見つかりませんでした。

次の日、バスチーユ牢獄に火薬や弾薬が大量にあるという噂が飛んできました。これを聞いた私たちは次の日の朝すぐさまバスチーユ牢獄へと向かいました。武力しかないと考えていた私たちですが、流石にこの要塞を襲撃することは容易でないと考え、要塞司令官のロネーとの受け渡し交渉が始まりました。しかしロネーはこの受け渡しの提案を拒否しました。その後私たちは何度も交渉を繰り返しました。しかし、午後1時頃突然守備隊が私たちに向かって発砲してきました。これに激怒した私たちはこの牢獄を武力で制圧することを決意しました。


革命に対する情熱は強かった


守備隊は早期に降伏し、反逆罪で捕らえられていた人々も解放されました。私たちは火薬、弾薬を奪うこと成功し、指揮官の首を切りこの牢獄を後にしました。


この事件は後にバスチーユ牢獄襲撃と呼ばれるようになります。


その翌日この事件はフランス全土に広がりました。これを機にフランス全土で革命への機運が高まりました。私はすごくうれしかった。しかし、あろうことかこの機運の高まりは

フランスの混乱へと繋がりました。なんと農民たちが領主の館を襲撃し始めたのです。さらに、領主側も農民を虐殺し始めました。やがてこの混乱はフランス全土に広がり大恐怖と言われました。この時、私は武力で反乱を起こさなければ革命は起こせない、しかし革命を起こさなければ、私たちの生活はいつまでたっても特権階級の踏み台になってしまうというある種一つのジレンマに遭遇してしまっていました。


それから2年の月日が流れました。 


そしてついにこの農民の暴走が功をなす時が来ます。第三身分で結成された国民議会が封建的特権の廃止を決定し、王はこれを認めざるおえなくなりました。これだけではありません。教会による十分の一税や領主裁判権も廃止され、それまで領主や教会の圧政に苦しんでいた農民たちも解放されることになります。

そしてついに1791年9月フランス史上初めての憲法が作られました。


私たちの努力は2年間の時を得てついに実ったのです。


一巻目はこの一文で締め括られていた。


私は満面の笑顔で最後の1ページを閉じた。忘れかけていた若かりし頃の情熱で頭がいっぱいになった。すかさず二巻目を取り出し表紙をめくった。


つづく

















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