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お星さまにお願い  作者: 宮守 美妃
4/5

だいじょうぶ

 病院に付いてもう2時間くらいたつ。


「若菜ちゃん、ちょっと飲み物買ってくるね。何か飲みたいのある?」


「温かいのならなんでもいいよ」


「そう?」

 と言ってお姉さんは自動販売機へ向った。


 廊下にはわたしだけ。車の中にチャチャを残してきているから、心配になる。

 台風はまだ通り過ぎない。雨と風の音がとても激しい。


『若菜』

 突然声が聞こえて顔を向けると、わたしは見えたものを(うたが)った。そこにいたのはお父さんだったから。


「お父……さん?」


『ああ、そうだよ。若菜……』

 お父さんは少し前に天国へ行っちゃったけど、目の前にいるのはわたしのよく知っているお父さんだ。なにも変わらない。


「お父さん! 会いたかった……お母さんが大変なの! ケガをして!」

 わたしはお父さんの服をつかんで、うったえる。


『うん。分かってるよ。だから来たんだ。それに……お星さまにお願いしただろ?』


「え? うん」


『届いたんだ。俺の所に。だから、あのコと一緒に来たんだよ』


「あのコ?」


『ああ。さて、お母さんは足のケガをしたんだね?』


「うん。今手術してる」


『お母さんはだいじょうぶだから。あんしんしな』


「うん!」


 そう言うとお父さんは手術室の中へ入っていく。

 少しするとお医者さんがでてきた。お姉さんはどこまでいっていたのか、飲み物を持って戻ってきた。

「無事に終わりましたよ」


 お医者さんはわたしとお姉さんにそう言った。お医者さんの後ろにお父さんがいる。お母さんはベッドに横になったままでてきた。


「ありがとうございます!」

 わたしとお姉さんは一緒に頭を下げる。


「今は麻酔(ますい)で眠ってますから、まもなく目覚めますよ」


「はい!」


 お父さんはお医者さんの後ろで笑っている。お父さんはお母さんのそばにいろと、ジェスチャーしている。

 わたしはうなずくとお母さんと一緒に病室へ行った。

 

 お父さんが何でいるのか分からないけど、きっと、まだいるよね? あとで、お礼が言いたい。




 1時間後、お母さんは目を覚ました。

「若菜? ごめんね、ドジしちゃって」


「お母さん! だいじょうぶ? 痛い……よね?」


「今は……麻酔が効いてるからだいじょうぶ」

 お母さんはわたしに笑顔でピースをした。いつだってお母さんは笑っている。お母さんは強い。

 お父さんが天国へいった時も、わたしの前では泣かなかった。でも、わたしの知らない所できっと泣いているんだと思う。


「夢を見たの」


「夢?」


「そう。お父さんがね……一緒にいたのよ。こんな所にいないで、若菜のそばにいて幸せになれって……そばにいられなくてごめんなって……」


 お母さんはそう言うと、涙ぐんだ。


「お母さん……」

 なんだかわたしも泣きそうになる。

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