名前
お母さんに許しをもらって、わたしはこの子にお母さんの用意してくれたご飯をあげて名前を考えた。多分、柴犬っぽい。
――茶色……茶色のチャ。チャ……チャ……う〜ん……。チャチャ?
「チャチャで良い?」
「キャン!」
なんか単純な名前だけど、良いよね?嬉しそうにシッポ振ってるし。人懐っこいのかな? だれかに飼われてたのかもしれない。捨てられたのかな?
「わたしがちゃんと面倒みるからね!」
「キャン!」
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次の日、わたしはいつもより少し早く起きた。まだリードがないから散歩はできないけど、ちゃんと食べ物あげないとね。ドッグフードなんてものはないから、犬が食べてもだいじょうぶな物をスマホで調べてみる。
「えーっと……牛乳ダメなんだ……ネコには大丈夫なのに……。あ! シーチキン、大丈夫みたい!」
お母さんは仕事に行ったから、わたしは台所に行って缶詰を探す。缶詰は食材の棚に入っていた。
「あった! ちょっとまっててね」
「キャン!」
チャチャはやっぱりどこかで飼われていたのか、聞き分けが良いみたい。言うことを聞いて待っている。
わたしもチャチャもご飯を食べ終えて、わたしは学校へいく時間になった。
「ごめんね、チャチャ。わたし学校へいかないといけないから……」
「クゥン……」
切なそうな瞳でわたしを見てくる。
「なるべく早く帰ってくるからね!」
わたしはうしろ髪を引かれながら、学校へ向かった。
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「うわぁ……」
学校から帰ろうと校舎をでると、どんよりとした厚い雲が広がっていた。風も強くてしっかり立たないと飛ばされそう。
――チャチャも待ってるし……。台風くるって言ってたよね。
わたしは走って家まで帰った。中へ入るとチャチャが玄関へかけてくる。わたしは飛びついてきたチャチャを抱きとめる。
「ただいま〜、チャチャ」
「キャン、キャン」
チャチャは嬉しそうにシッポを振っている。外の風はますます強くなって来た。
「中へいこう」
わたしはチャチャを抱き上げると、部屋の奥へ移動した。
「台風の時は懐中電灯用意しなきゃ」
わたしはチャチャとよりそいながら、じっとしていた。窓は風でガタガタ揺れて、雷が近くでなっている。
――こわいよ……。
わたしはギュッとチャチャを抱きしめる。
そうしているうちに6時が過ぎた。
「ピンポーン」
「誰か来た!」