子犬
児童向けを目指してみました。
大好きだったお父さんが天国へ旅だってしまった。わたしは悲しくて寂しくて、お星さまにお願いをした。
「どうか、お願いします。お母さんを助けてください。お父さんに会わせてください」
お母さんはお家のために朝から夜遅くまで仕事をしている。お母さんだって悲しいのに、お母さんはいつだって笑っている。
わたしの背負っている6年の重みが詰まったランドセルは所々汚れてきている。まだお母さんのためにできることは少ない。
わたしは学校帰りの道の雨の中を、傘をさして歩く。ポニーテールの髪が歩くたびに揺れる。
「今日は夕方雨が降るでしょう」
天気予報のお姉さんがテレビの画面の中で言っていた。その通りになった。
「キャン!」
いつからいたのか分からない。分からないけど、子犬が後ろから付いてくる。
「柴犬?」
子犬はプルプル震えながら歩いていた。
「どうしよう……家に連れていっても良いのかな?」
わたしは子犬を抱き上げて少しだけ考える。
――ダメって言われるかな? だけど、こんな寒い中置いて帰れない。よし、連れて帰ろう!
お母さんはトラックの運転手さんをしている。
いつも忙しそうでとても大変そう。だから、家の近くに住んでいるお姉さんが、よく家にきてくれる。
でも、今日はこない。お仕事忙しいのかな?
わたしは2階建ての家の中へ犬をつれていき、お風呂にも入れてあげる。お父さんが建ててくれた庭の付いてるお家。これで少しはキレイになったはず。
夜7時になって、わたしはレンジでお母さんの作り置きしてくれた料理を温めた。お母さんのいない時に火は使わないでと言われている。玄関のドアが開く音がしてちょうどお母さんが帰ってきた。
「おかえりなさい!」
わたしが玄関まで走って行くと、犬も後ろを付いてくる。お母さんはわたしたちを見ると、驚いたような顔をした。
「ちょっと……待って。何で犬がいるの?」
お母さんは額に手を当てている。これはお母さんが困った時にする癖だ。お母さんのストレートの長い髪がサラサラと動く。
「ごめんなさい……雨の中付いてきて可哀そうだったから……」
お母さんはため息をつく。
「若菜……家じゃ、飼えないわ」
「勉強がんばるから……ちゃんとお世話もするから、お願い!」
「……約束できる?」
お母さんはわたしの目を見てたずねてきた。
「うん!」
「ちゃんと面倒みてあげてね」
「うん、分かった!」
お読みいただきありがとうございます。