原木6本目 動けぬきのこは、絶対強者の夢を見るか?
遅くなりましたmm
分割した分の後半になります。
奴が現れたのはそんな時だった。
普段はとても静かな雰囲気の森なのに、
動物の鳴き声がそこらじゅうから聞こえそうな大荒れ具合、
そんなことはお構いなしに現れたそいつは、
自らの放つ暴風で周りの木々をへし折り、吹き飛ばしながら、
俺のすぐ近くに降り立った。
「見ツケタゾ色欲ノカケラヨ。」
そいつは何もいない空間に向けて、そう言葉を発した。
真紅と、宵闇の混ざったような、
はたまた、酸化した返り血を何重にも塗り固めたような、
巨大な竜が、目の前で何者かに語りかけていた。
「動ケヌモノニ宿ッタカ、好都合ダ。」
いや、そもそも自分は音が聞こえないはずだ。
なぜ喋っていると理解できる?
そして、なにより信じ難いのが、
そんな存在に対して、自分が殺意を抱いていることだ。
わけがわからない。あんなの見たら、地球人なら誰だって、
小さいほうの排泄物と、神様へのお祈りと、
部屋の隅でガタガタ震えて命乞いをする準備をするはずだ。
「ナンダ?返答モマトモに出来ヌノカ?」
その翼が憎い。根元からもぎ取って、地に這い蹲らせたい。
その牙が憎い。粉々に砕いて、許しを請わせたい。
その存在が憎い。そこにいた、という過去もろとも消し去りたい。
「マア良イ、死ンデ、在ルベキ場所ヘト還ルガイイ…」
大体、そんなとこに何がいるんだよ。ベラベラと独り言言って、頭おかしいんじゃねえの?
きもいし、汚いし、臭いし、さっさとどっかに行けよトカゲ野郎が。
あ、胞子顔面にぶつけるか。次で気絶確定だけど、何もしないとか無理だわ。
呼吸器官に入ってむせろ。あわよくば死ね。
と、理由の分からない嫌悪感と憎悪から、悪態をついている時だった。
見たことも、実際にどんなものだったかを聞いたことがあるわけでもなかったが、
「大罪ノ器へ。」
――龍王解焉――
目の前の空間で核爆弾が爆発した。
核爆弾、なんて表現を使っていいのかもわからないが、
目の前で起きた現象は、平凡な人生を送っていた俺には、そうとしか言葉にできなかった。
竜の口元に、紅蓮の光源が形成される。
それはまるで、前世の太陽のように輝いていた。
そして、その太陽が小さなビー玉ほどのサイズになったかとおもうと、
次の瞬間には、圧縮された太陽が光線になり、竜の語りかけていた方向へと放たれた。
「GRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!」
その光線状の太陽が向けられる矛先は、色欲?という存在以外はなんの変哲もない森。
一瞬で灰になるか、灰すら残さず、何もない空間を作るだけだった。
そのあり得ない光景と、それでもなお消えることのない殺意に動揺していると、
光線が徐々に横にずれていることに気づく。
ああ!?首振りモーションとか上位個体かよ!!!!!
てめえにはまだ早ぇだろうが、おこがましいぞクソサビトカゲ!!!!!
ここまでも別の存在に悪意を向けたことがあっただろうか。
そんなことを不思議に思う感情すら消え、ただひたすらに目の前の竜をコケにする。
そのことが、相手に伝わらないことにすら腹を立てていると、
余波ですら自分を焦がしそうだった光線が、もう間もなく自分に当たることを理解した。
死んだら無意味かもしれない、そもそも届かないかもしれない。
それでも構わず、このひと月で鍛え続けた胞子を竜に向けて撃ち付けた。
竜の翼の根元に胞子が当たり、胞子を出し切った反動で気絶する間際、
その最後の瞬間にすることは、後悔でも、懺悔でも、よくやる前世の母への祈りでもなく、
目の前の竜への、宣戦布告であった。
もし、もしも来世もこの世界で生まれられるのなら。
必ず、お前という存在を、俺以下の生物だと理解させてやる。
首すらも洗わせねぇ、震えて待ってろサビトカゲ。
こうして、俺という存在は、灰の一つすらも残さずこの世界から消えた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「龍王トシテノ力ヲ解放シタガ、動カヌ的ガ相手デハ不要デアッタナ。」
数キロほどの扇状に、何もない空間となった森を眺めて龍王はつぶやく。
「サテ、次ナル大罪ヲ探シニ…ナンダ?」
――もし、もしも来世もこの世界で生まれられるのなら。
「フム…?コレモ我ガ憤怒ノ影響カ…?」
――震えて待ってろサビトカゲ。
そうして龍王は、まるで人間のように愉悦の表情を浮かべる。
「面白イ。是非トモ解ラセテモライタイモノダ。」
そう言いながら、龍王は森を飛び立つ。
大罪の欠片を探し、還元させ、七大罪の全てを持つ魔王を滅ぼす為に。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ブツンッ!
んぉ!?寝てる時にビクンッてなって飛び起きるやつ!
…なんだか、ろくでもない夢を見た気がする。
ぼんやりとしか覚えてないけど、あんなでかいのに挑もうとするわけないじゃん。
さすがに、そこらへんはわきまえてるよね。草生えるってやつだわ。
あれ、知らない天井だ。
いや、天井ってか木と空だからそりゃそうだわ。
でも、知らない地面だ。
…?
おかしくない?
ひと月以上見てた地面が、急に変わるなんてあるわけが…。
は、はは、ははっはははははっは…。
はははははははははははははははははははははははははははははははははははは。
地面、なんて、どうでもいいか。
なんで後ろの森がなくなってる?
なんでこの場所に俺がいる?
なんであの時子供扱いしてた、紫色のキノコになってる?
あれは夢じゃなくて現実?
本当に、一度…死んだ…?
割と何度か諦めていた生への執着からか、死んだという事実よりも、
わけがわからない、とパニックになる自分を落ち着かせようとした。
それでも体は言うことを聞かず、あたり一面にあらん限りの胞子を撒き散らして、
俺は再び意識を暗闇へと落とした。
まともな会話文を初めて使いました←
他のキャラが出ると、一人称視点のセリフと、状況説明の文章が混ざりますね…。
自分の文章力のなさが原因ですが、
()、『』、[]などで囲うことも考えております!
続きが気になる!や、気に入った!という方は、
お気に入りやコメなどしていただけますと
キノコの増殖量が増えます!
よろしくお願いしますー!