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第八十七話 情報


 "もう一人の主役"――

 ギルベルト教頭がそう言うと、彼と同じく紅い魔導着(マント)の男が部屋に入ってくる。


 そう……まさに、この"決闘"というお祭り騒ぎのもう一人の主役ーー


「ツァイス先生……」


 現れたのは、僕の"決闘"相手であり、因縁の魔導士カール・Z(ツェット)・ツァイスその人であった。


 ――場の空気が変わる。

 彼一人が現れたことで、どこか緩んでいた雰囲気が緊張へと切り替わる。


 彼が発する魔力は膨大で鋭く、まるで肌に針をあてがわれているかのような錯覚すら覚えるほどだ。

 そんなツァイス先生の姿を一目見るや、ダニエラは「ほう……」と唸り、ノイマンは「なるほど」となにか納得した様子で僅かに頷く。


 どうやら、彼らにはツァイス先生がどれほど実力ある魔導士なのかすぐにわかったらしい。

 そりゃあ、見た目だけでも遥かに僕よりエリート魔導士っぽいもんな。

 むしろダニエラ達からすれば、ツァイス先生が『精霊』に認められたという方がよほどしっくりくるのかもしれない。


「……お初にお目にかかる。やつがれがカール・Z(ツェット)・ツァイス。『精霊』に選ばれし者の決闘相手なりて」


 ル・ヴェルジュとインファランテの代表生徒達を一瞥すると、軽く会釈するツァイス先生。

 その様子は、どこからどう見ても理想的な高位魔導士。


 それにしても……ダニエラ達のリアクション、僕を初めて見た時と全然違くない?

 わかるけど……わかるけどさぁ……いざ比べられるとショックではあるよね……


「……フン、興としては悪くないがな。しかしギルベルト、お主本当に――ツァイス先生を皆に合わせるためだけ(・・)に、わざわざやって来たのか?」


 相変わらずムスッとした顔で聞くイルミネ校長。

 ギルベルト教頭は左右に頭を振り、


「いえいえ、確かに"主役"を揃えるのが主目的ではありましたが……今回はご足労頂いた皆様のために、少しばかり"面白いお話"も用意しておりましてな。――では、お願いしますよツァイス先生」


 ギルベルト教頭は微笑を浮かべたまま、ツァイス先生に話を振る。


 するとしばしの沈黙の後――ツァイス先生が口を開いた。



「……単刀直入に言おう。


 ――――新たな『精霊』の居場所が、判明した」



 ――その言葉を聞いた瞬間、この場にいる全員の目の色が変わった。


「な、なんじゃと!?」

「それは本当ですか、ツァイス先生!?」


 イルミネ校長も僕も仰天し、反射的に聞き返してしまう。

 セレーナやダニエラ達も目を丸くしてしまっている。


「ああ、『ロージアン山脈』という遥か遠方の場所の中で、《精霊の神殿》への入り口が発見された。とはいえ、やつがれもまだ所在を知ったばかりだがな」

「あり得ぬ! 妾もハーフェンの調査団やあらゆる伝手を使って調べさせているのに、そんな情報は聞いておらぬぞ!」


 明らかな焦燥を見せるイルミネ校長に対し、ギルベルト教頭は「ハッハッハ」と和やかな笑い声を上げた。


伝手(・・)を使って世界中を調査しているのは、なにも貴女だけではないのですよ。

 さて……代表生徒の皆様は、このお話にご興味ありませんかな?」


次回のタイトルは『第八十八話 乱入②』です。


次回の投稿は12/18(水)17:00の予定です。


※書籍版と一人称を合わせるため、ツァイス先生の「(やつがれ)」→「やつがれ」に変更しました。

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― 新着の感想 ―
[一言] やつがれって自分をへりくだって言う言い方だから、なんとなくキャラにあいませんね
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