第五十五話 エルカンの悩み①
※追記:これからの更新予定ですが、しばらくは更新日を"月曜"と"水曜"にしていこうと思います。
なので申し訳ありませんが、次回の投稿は少しズレて9/9(月)17:00となります。
何卒、ご容赦くださいませ。
「ん~? なになに? なんでも聞いて?」
コロナはゴロゴロと僕の腕にすり寄り、喉を鳴らす。
まったく、性格といい行動といい、本当にネコみたいな子だ。
まあ今更になって改めて思うことでもないけど。
十年くらい前にはもう知ってた気がするし。
「じゃあ、幾つか聞こうかな。
え~っと、なんていうか、デリカシーがないって自覚した上で聞くけど…………コロナ、キミは自分が"実の娘じゃない"って知った時、最初にどう思った?」
「ん~……どうだろ。
……ショック、ではあったかな。でも悲しくはなかったと思う。きっとセレーナも同じ気持ちだったはずだよ」
彼女は僕にピッタリとくっついたまま、軽いトーンで話す。
しかし、その口調は真剣だ。
別に、彼女の気持ちを再確認したくて聞いたつもりはない。
僕にとってセレーナとコロナが娘であることは変わらないし、彼女達も僕の娘でいてくれると信じている。
僕が確認したいのは――そこじゃないんだ。
「…………実の親に、会ってみたいかい?」
――僕がセレーナとコロナを見つけた時、彼女達はあろうことかゴミ捨て場にいた。
文字通り、捨てられていたのだ。
だから少なくとも、僕は彼女達の親が"ろくでなし"だと思っている。
あくまで個人的な想いで言えば、見つけられるかどうかは別としても、彼女達に実の親を合わせるべきではないと思っている。
けど――彼女達自身はどう思っているのか――今まで聞けなかった。
だからこの際に――
「いや、全然まったく?」
――この際に聞いてみたけど、本当に興味なさげな返答が戻ってきた。
僕は思い切り肩透かしを食らって、
「――そ、そんなに気にならない……?」
「だって、今更会ったところで所詮は他人だし、会って話すこともないし……そもそもアタシ達のパパは、パパだけだし?」
「いや、まあ……それはそうかもだけど……」
「特別憎くもないし、恋しくもないなぁ。セレーナがどう思ってるかはわかんないけど……。
…………ねえパパ、アタシ達はどんな風に捨てられてたの?」
予想外な質問に、僕は一瞬言葉に詰まってしまう。
どうやら、その部分はデイモンドさんも喋っていないらしい。
……そう、彼女達の捨てられ方は、あまりにも酷かった。
世の中には泣く泣く子供を手放す親もいるだろうが、この子達の場合は進んで捨てられた。
出来れば……伝えたくはない話だ。
「……そっか、惜しまれたって感じじゃなかったんだね、アタシ達は」
なにかを察したように、コロナは苦笑した。
「あ~もう、こういうテンション下がる話はやめやめ! どうせ過ぎたことなんだし! もっと面白い話とか、先の話とかしようよ!」
彼女は仕切り直すように声を大きくする。
おっと、気が付けばしんみりした空気になってしまった。
人間、歳を取ると純粋に面白い話やバカ話がし難くなってしまう。
昔は中年同士の慰め合うような会話が理解出来なかったが、今なら彼らの気持ちが良くわかる。
何故なら僕も中年になってしまったから。
あーあ、歳は取りたくないなぁ。
「ハハハ、ごめんごめん。それじゃあ僕達らしく――」
「魔術の話でもする? 例えば――次の【精霊】への対抗策、とか♪」
お、流石は【賢者】。
自分から切り出してきた。
「コロナは、なにか考えがあるのかい?」
「ん~ん、まだな~んにも。だって【雷の精霊】ってば魔力が規格外過ぎるし、流石のアタシ達もお手上げだったワケだし。
それに【雷の精霊】の感じからして、次に会う【精霊】も同じ性格してるとは限らないと思うんだよね」
「僕もそう思う。彼は話が通じたし、人間に対して割と友好的だった気がするけど、それでも戦いを好んでた。
他の【精霊】が意思疎通を図れるかはわからないし、もし人間嫌いだったりしたら……」
「問答無用で襲ってくるよねぇ~……しかも殺す気でぇ……」
「ああ……たまんないよ……」
考えるだけでも気が滅入るよなぁ……
【雷の精霊】と戦っただけで、三人とも満身創痍だったんだから……
次は本当に生きて帰ってこられるやら……
「ま、怖いことは怖いけどさ……今のパパには、その【雷の精霊】がくれた力があるじゃん」
そう言って、コロナは僕の右手に触れる。
僕の右手に刻まれた"刻印"に。
「【雷の精霊】がくれた、戦う力……。【精霊】の力で【精霊】に立ち向かえるのか――魔導士として、これ以上興味を惹かれるモノもないよね。もっとも、その前にツァイス先生相手に使うと思うけど」
僕は刻印のある右手を掲げて、沈みゆく夕日に被せる。
指の間から、真っ赤な光が漏れ出る。
「…………コロナ、もしも僕が全ての【精霊】の力を授かって、【黒魔導士】として冒険に出て"夢"を叶えたとしよう。全てを終えて、その後キミは――どうする?」
※追記:これからの更新予定ですが、しばらくは更新日を"月曜"と"水曜"にしていこうと思います。
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何卒、ご容赦くださいませ。




