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第五十三話 セレーナの悩み②


 "ストーキング"、という行為をご存知かしら?


 そう――こっそり誰かを尾行したり、その行動を遠目から監視したり――

 そういうことをする人を、世間一般ではストーカーと呼ぶらしいですわ。


 まったく、個人のプライバシーを覗き見て快楽を得るなんて、汚らわしい。

 最低の行為だと思います。

 


 ……

 …………



 ……なのですが、(わたくし)は今、そんな最低の行為をしている最中なのです……

 しかも、最愛の人であるお父様を相手に……


「お父様は、一体どうなさるおつもりなのでしょう……?」


 活気溢れる『ハーフェン魔術学校』の商店街――

 その物陰から、道行くお父様をこっそりと見守る(わたくし)


 ああ……こんな浅ましい行為をしている(わたくし)を、どうかお許し下さいませ……


 ――お父様が相談に乗って下さったのが、昨日。

 結局昨晩もコロナと距離感を埋めることは出来ず、【雷の精霊(ファラド)】との戦いの事後処理に追われたこともあって、彼女とあまり話すことも出来ませんでした。

 お父様は、どうやらコロナと少しお話なさったようですが……

 本当に、なんだかモヤモヤしますわ……


「お父様は、コロナとなにをお話したのかしら……」


 コソコソとお父様の後を追い、気付かれないように気配を消して移動します。

 時には木箱の裏に隠れ、時には空樽の中に身を潜め――

 どうやら、お父様に気付かれている様子はありませんわね。


 ふっ、魔術だけではなくストーキング行為まで完璧だなんて、やはり【賢者】に不可能はないのでしょうか……

 自らの才能が恐ろしくなりますわ……

 まったく誇らしくはないですが……


 時間はまだお昼時で、多くの学生が道を歩いています。

 幸いなことに、お父様のことは学校内で広く知られていても、そのお顔まで知っている者は多くありません。

 ですから、道を歩いていて女生徒に声をかけられることはほとんどないご様子。


 これが、もし校長先生が【雷の精霊(ファラド)】の件を公表したならば……

 群がる雌共に行く手を遮られて、お父様はさぞお困りになることでしょう。

 お父様に群がる悪い虫は……駆除しなくては……


「フ、フフフ……お父様は誰にも渡しませんわぁ……!」

「……セレーナ様? そこでなにをしてらっしゃるのですか?」


 不意に声をかけられる(わたくし)

 振り向けば、そこには不思議そうにこちらを見る女生徒の姿が。

 他にも――(わたくし)に奇異の目を向ける人々が数名。


「ふぇっ!? な、ななななんですの、貴女達は!?」

「い、いえ、セレーナ様があまりに妙な行為をしてらしたので……」


 妙ですって?

 木陰に隠れるために、頭に小枝を巻き付けて、さらに両手に木の枝を持つ行為のどこが――


 ――ハッ!?

 改めて考えれば、コレ思いっきり不審者の行為ですわ!!!


 それに、お父様はまだお顔を知られていませんが、(わたくし)は既に学校内では有名人――

 そんな(わたくし)がストーカー紛いの行動をしていれば、怪しまれるのは当たり前のこと……!

 せめて変装の一つでもしてくれば良かったですわ――!


「あ! もしかして新しい魔術の実験ですか!? それなら私達もご一緒させて――」

「な、なんでもありませんわよ!? (わたくし)用事を思い出しましたので、失礼させて頂きますわね! オホホホ!」


 ――脱兎の如く、その場を離れる(わたくし)


 ああもう、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい――!

 羞恥で顔から火が出そうですわ――!

 "頭隠して尻隠さず"とはこのことでしょうか!?


 思わず、(わたくし)はその場から逃げ出してしまいました。




 ――それから、しばらくして。


「うう……お父様を見失ってしまいましたわぁ……(わたくし)のおバカ……」


 恥ずかしさのあまり逃げ出しては、せっかくのストーキングも無意味……

 (わたくし)、一体なにをやっているのでしょうか……


「お父様……どこに行かれたのですか……お父――――様?」


 (わたくし)が行く当てもなく、トボトボと噴水のある広場を歩いていた矢先――――奇跡が起きました。


 そう、なんと再びお父様を見つけたのです。

 お父様は中央の噴水へと向かっているご様子。


「お父様……! やはり、(わたくし)達は惹かれ合う運命なのですね……!」


 歓喜のあまり小声が漏れる(わたくし)ですが、この発言ってもう完全に勘違いストーカーのソレですわね。

 まあそんなことは些細なことなのです。

 お父様を見つけられたのですから。


 お父様は噴水に向かいつつ、キョロキョロと辺りを見回します。

 なにかを――、いえ、誰かを探していらっしゃるのかしら……?


 そして、


「あ、おーい」


 お父様は手を振って、長椅子に座っている人物へと歩み寄っていきます。

 その人物とは――


「やぁやぁ、待たせちゃったかい、コロナ(・・・)?」

「――んもう、パパってば遅いよ! 女の子(レディ)を待たせるなんて失礼なんだから!」


 お父様を待っていたのは、他ならぬコロナでした。


 彼女は最初こそプリプリと怒った表情を見せましたが、すぐにいつもの笑顔になって、お父様と腕を組みます。



「それじゃ――――約束通り、さっそく"デート"に行こうよ、パパ♪」



 ――ほうほう、なるほど。

 コロナったら、お父様と待ち合わせて"デート"ですか。


 "デート"……"でーと"…………"でえと"……



 ――――――えっ


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