表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/95

第四十話 追い詰められる親子


「――――」


 放電(ディスチャージ)を浴びたセレーナが、ドサリと倒れる。 


 あと僅かで刃が届いた、という所で。




「せ――――セレーナああああああああああああッ!!!」




 力なく横たわる愛娘を見て、僕は彼女の名を叫ぶ。


 ――恐れていた事態だった。

 僕が、最も見たくないと思っていた光景だった。


 最愛の娘が、傷付く瞬間。

 その、最期――


 セレーナの衣服は電流の熱で黒く焦げ、煙を吹いている。


「ち、ちょっと……ウソでしょ……? ねえ、セレーナ! セレーナってば!!!」


 コロナが声を震わせて、セレーナに呼び掛ける。

 すると、

 

「う…………く……ぁ……」


 コロナの声に反応するように、セレーナの身体が少しだけ動いた。

 どうやら意識はあるらしく、力の入らない手足で必死に起き上がろうとしている。


 あ――ああ――

 良かった――


 彼女は、まだ生きてる――!


 僕とコロナは、セレーナが生きているというだけで安堵する。

 しかし、


『……次は、汝らなり』


 ファラドが動き出し、僕らへと向かっている。


 間違いなく、彼には僕の状態異常(スタン)が効いた。

 なのに、たった数秒も拘束していられなかったのである。

 相手がもしBランクのボスモンスターなら、確実に数分以上は拘束出来るというのに。


「く、くそ……!」

『……我の動きを止めただけでも、十二分に仙才鬼才なり。だが、まだ認めるには値せず』


 【精霊】に褒められるのは悪い気はしないが、今は嬉しいなどという気持ちは一切湧いてこない。


 彼に挑戦したのは僕達の方だ。

 だから覚悟はしていたけれど――手前勝手であることも理解しているけれど――

 目の前で愛娘が傷付けられて、湧いてくる感情など"怒りと悲しみ"だけだ。


「よ――よくもッ! セレーナを――ッ!!!」


 コロナがギリッと歯軋りし、地面へと伏せる。


「――《略唱》! 発動術式・()号・三十一番――――《ハンマー・オブ・ジアース》!!!」


 彼女が地面に手を突くと、石板の床をぶち抜いて"巨大な岩の拳"が出現する。

 この魔術は、さっきもコロナがボスモンスター(ブルヘッド・オーガ)に対して使ったA(クラス)土属性攻撃魔術だ。


 岩の拳がファラドへと突撃する。

 当たれば、十分な威力になるだろう。

 けど、


「だ、駄目だコロナ! 《略唱》は魔術の(クラス)が下がるって――!」


 そう、『ハーフェン魔術学校』でツァイス先生の襲撃を受けた時、彼がそう言っていた。


 実質的に魔術の(クラス)を下げてしまう。

 それはつまり――


 ファラドの足元の瓦礫が、再び宙に浮く。

 それも今度は一つではない。

 三つ、四つ、いや――五つの大きな瓦礫が、彼の魔力で浮かべられた。


『――《レール・カタパルト》』


 さっきと同じように、瓦礫が撃ち出される。

 それも今度は、五発同時に。


 撃ち出された瓦礫達は、コロナの巨大な岩の拳ハンマー・オブ・ジアースを容易に打ち砕いた。


 そう――魔術の(クラス)が下がるということは、魔術に対して魔術をぶつけられれば、打ち消されてしまうリスクが大きくなるのだ。


「ウ――ソ――」


 巨大な岩の拳ハンマー・オブ・ジアースを砕いた五発の瓦礫は、そのままコロナへと襲い来る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ