第三十九話 本領発揮
イケる――戦える――
力の差は絶望的かもしれないけど、全く戦えないワケじゃない。
僕の杖を握る手に力が入る。
僕には下降支援魔術しか能がない。
けど、その魔術が【精霊】にも通用する。
"神"にも等しい存在に、僕の特技が通用するんだ。
僕は、未だかつてない高揚感を感じていた。
『…………やはりか、妙なモノだ。
……汝の魔術には、我の抗体が上手く機能しない。どのような細工があるかは知らぬが――小賢しいな』
ファラドは訝しげに僕を見ると――
『――《サンダー・ブレード》』
両腕を、刃状に変異させた。
アレは――セレーナが得意とする魔術と全く同じ技だ。
刃は青紫色に発光し、バチバチと電撃が放たれる。
『……愉快なりや、人の子よ。もっと可能性を曝け出すが良い』
電撃の刃を備え、ファラドは僕らへ向けて突撃してくる。
それを見て、セレーナが動いた。
「私の得意魔術をお使いとは、光栄ですわね! 同じ技では、勝負になりそうもないのが残念ですが――!
――"烈火の炎よ、大気を切り裂く赤熱の燃焼、我が名の下に、その高熱を紅蓮の刃へと変え給え"――――《ブレイズ・フランベルジュ》!」
セレーナが詠唱すると、彼女の右手に"真っ赤に揺らめく炎の刃"が出現する。
《ブレイズ・フランベルジュ》――――《サンダー・ブレード》と同じ、炎属性のB級攻撃魔術。
彼女が炎の刃を出すや――二人は雷と炎の刃で斬り結んだ。
『……』
「くぅっ……!」
飛沫する雷電と火炎。
二本の雷剣と一本の炎剣が鍔迫り合う。
だが状況は……刃を合わせた瞬間からセレーナが不利。
彼女が、明らかに押されている。
それを見た僕は、すぐに次の魔術を準備する。
「――"万物に流れし普遍の理気よ、動体を阻害し陰の干渉、エルカン・ハルバロッジの名の下に、彼の者の動きを止め給え"――――《ムーヴ・スタン》!」
コレは、敵を行動不能にするA級下降支援魔術。
《ムーヴ・スタン》を受けたファラドの動きが、止まる。
続けざまに、僕は下降支援魔術を叩き込む。
「――"万物に流れし普遍の理気よ、暗く濁りし陰の下降、エルカン・ハルバロッジの名の下に、彼の護りを削ぎ落とし給え"――――《ハードネス・ダウン》!」
以前アダマンタイトの塊にかけたモノと同じ、"防御力"を下げるB級下降支援魔術。
これも――大丈夫だ。
ファラドの防御力をなんとか四割は低下させた。
「セレーナ! 今だ!」
動きを止め、防御力を下げた。
あとは――
「ハイ、お父様! 魔力増幅――!」
セレーナの持つ炎剣がさらに出力を上げ、刀身が巨大化する。
コレが入れば――決まりだ。
「はああああああああああッ!!!」
一瞬間合いを離したセレーナが勢いを付け、動きを止めたファラドへと斬りかかる。
いいぞセレーナ――!
コレで――――!
『…………《ディスチャージ》』
まさにセレーナの炎剣が届くと思った、その刹那だった。
ファラドの身体から、全周囲に向けて"放電"が起こる。
眩いばかりの閃光と、超高電圧で放たれる電流攻撃。
その攻撃範囲は短く、僕やコロナの位置まで届くほどではない。
しかし――セレーナへ浴びせる攻撃としては、十分過ぎた。




