第三十七話 親子と精霊、激突す
『……刮目せよ。これが『雷』の属性を司る、我が稲妻の一撃――――』
ファラドの身体から、電撃が漏れ出る。
その帯電が、すぐに攻撃へ転用されることは一目でわかった。
「攻撃が来るぞ! コロナは防御魔術を! セレーナは反撃の準備を頼む!」
僕は急いで二人に指示を出す。
彼女達も間髪入れず反応し、まずコロナが前に出た。
「了解だよ、パパ!
――"万斛の災厄を退けし力よ、あらゆる攻撃を防ぐ堅牢なる盾、我が名の下に、惨害からこの身を護り給え"――――《プロテクション・イージス》!」
彼女が唱えるや、僕ら三人を包むように"守護の膜"が出現する。
《プロテクション・イージス》――
S級の光属性白魔術にして、単純に術者とその周囲を防御するだけなら最上級に位置する防御魔術。
その防御力たるや、あらゆるモンスターの攻撃を跳ね除け、天変地異からも術者を護ると言われる。
そんな防御魔術の展開が終えた、直後――――
『――《積雷雨》』
ファラドから漏れ出ていた電撃が全周囲に放電され、逃げ場のない雷撃が礼拝堂を埋め尽くした。
そう、それはまるで、"雷の雨"が降るかの如く。
「うわあッ!」
「くうっ――!」
目を開けていられないほどの閃光と、無数の雷が降り注ぐ音と衝撃。
そんな圧倒的な攻撃に僕はひるみ、コロナは全力で防御する。
「くそっ、詠唱もなしでこれほどの――!」
「は、ハンパじゃないよコレ……! 《リフレクト・シールド》の方が良かったかな……!?」
「いや、コレで良い! 少し耐えてくれ!」
【賢者】であるコロナのS級防御魔術を以てしても、気圧されるほどの威力。
流石は【精霊】だ。
きっと、これでもまだ序の口なのだろう。
コロナの言うように《リフレクト・シールド》を使えば反射は出来るだろうが、【雷の精霊】相手に雷の魔術を等倍で返しても、おそらく効果はない。
この魔術で正解なはずだ。
あとは――僕の領分。
僕も杖を構える。
「――"万物に流れし普遍の理気よ、暗く濁りし陰の下降、エルカン・ハルバロッジの名の下に、彼の攻勢を弱らせ給え"――――《オフェンシヴ・ダウン》!」
僕は、下降支援魔術を発動する。
《オフェンシヴ・ダウン》は、敵の"攻撃力"を低下させる闇属性のB級魔術だ。
頼む――――通じてくれ――――
そう願いながら、僕は術に魔力を込める。
すると――ファラドの攻撃が明らかに弱まった。
『む……?』
異変を察知したのか、ファラドはすぐに魔術による攻撃を中止する。
その一瞬の隙に、僕は僕にだけ見える彼の"攻撃力"を確認した。
――間違いない、攻撃力が四割は下がってる。
やった――!
僕の下降支援魔術は、【精霊】相手にでも通用したんだ――!
そんな風に、僕が内心で喜んでいたのも束の間――セレーナの準備が整った。
「流石ですわ、お父様!
――"灼熱の業火よ、混沌すら燃やす紅蓮の力、我が名の下に、眼前の敵を煉獄の炎で焼き尽くし給え"――――《ノヴァ・エクスプロージョン》」
彼女が魔術を唱えると、小さな炎球が出現する。
その炎球は瞬時に消え、ファラドの前に瞬間移動すると――――"爆発"した。
まるで、小さな"超新星"のように。




