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第二十六話 パパは救世主?②


「つまり、【賢者】である(わたくし)達が――」

「超強力な魔術で、粉々に吹っ飛ばしちゃえばいいワケだ♪」


 セレーナとコロナが不敵な笑みを浮かべ、足を踏み出す。


「アダマンタイトだってさ、セレーナ。どんな魔術で壊そっか?」

「そうですわね、コロナ。《ブレイズ・エクスプロージョン》ですとか、《トルネード・ファランクス》なんてよろしいのではなくて?」


 彼女達は強力な攻撃魔術を使う気満々で、アダマンタイトの塊の前に立つ。


 ちなみに、《ブレイズ・エクスプロージョン》も《トルネード・ファランクス》も、それはもう派手派手なS(クラス)攻撃魔術である。

 どちらも通常の戦闘で発動すれば、その時点でほとんどのモンスターと決着をつけられるほどの破壊力を誇る。

 

 確かに、それほどの攻撃魔術ならばアダマンタイトの塊を破壊出来るかもしれないが――


「ち、ちょっと待ってくだせえ、お嬢さん方! あまり激しい魔術は控えて下さると……!」


 すぐに、鉱山夫の男が二人を止めに入った。

 やっぱりか、と僕は思う。


「えぇ~? なんでさ? 早く助け出したいんでしょ?」

「あ、あんまり急激に塊を崩したりすると、二次災害が起こる恐れがあるんだ。こんだけデカけりゃ、下手すると鉱山全体が地盤沈下しちまう可能性もある。とにかく、迂闊に衝撃が出るような魔術は……!」

「使えない――ですか。それは困りましたわね……」


 鉱山夫の男の説明を聞いて、さっそく彼女達は出鼻を挫かれる。


 それはそうだろうな。

 ただでさえ、このアダマンタイトの塊は全体の大きさが把握できない。

 眼前の"壁"を砕いた所で、アダマンタイトが崩れて再び坑道が埋まる可能性だってある。

 これは見た目以上に、慎重を期する作業が要求されるのだ。


 とにかく、彼女達が得意とするであろう"大技"は厳禁、ということだ。


「仕方ありませんわね。では地道に掘り進む(・・・・)としましょうか」


 セレーナは考えを改め、右手を前方へと突き出す。


「――"稲妻の閃光よ、大気を切り裂く紫紺の雷鳴、我が名の下に、その煌きを雷電の刃へと変え給え"――――《サンダー・ブレード》」


 瞬間――――彼女の眼前に、青紫に発光する"電撃の剣"が出現する。


 《サンダー・ブレード》――。

 雷属性のB(クラス)攻撃魔術であり、変幻自在に大きさを変える稲妻の刃で対象を切断する。

 

 一見、これも魔導士には珍しい接近戦用の魔術と思われがちだが、その実態は"中距離用の攻防一体範囲攻撃技"である。

 横に振るえば、自在に伸び縮みする刃で群がる敵を撫で斬り、縦に振るえば、如何に巨大な敵であろうとも離れた場所から両断する。

 見た目の派手さこそないが、攻撃魔術としては低燃費で使い勝手も良く、中級【黒魔導士】にとっては非常に利便性の高い魔術なのだ。


 そういえば、以前もセレーナは"自分の《サンダー・ブレード》はダイヤモンド・ゴーレムを両断する"と自慢してたっけ。

 学校では剣術も習ってるって言ってたし、得意魔術なんだろう。


 セレーナはそんな電撃の剣を右手で握ると、


「ほら、コロナも発動させなさいな」

「うぇ~……アタシの趣味じゃないのに……」


 嫌々ながら、コロナも魔術を詠唱して《サンダー・ブレード》発動する。

 なるほど、コロナはもっと派手に爆発する系の魔術が好みなのかな?

 やっぱり性格が出てる気がする。


 ――セレーナとコロナは、アダマンタイトの塊へ向けて刃を構える。

 そして一気に、青紫に光る刃の切っ先を突き入れた。


 しかし、



 ――――ガギンッ!!!



 という音が坑道に響き渡り、セレーナとコロナの顔色が一変する。


「――!? この……っ!」

「な、なにコレ……!? (かった)――ッ!」


 《サンダー・ブレード》の刃は――アダマンタイトの塊に、ほぼ完全に弾かれていた。

 いや、正確には微妙に切っ先が刺さってはいる。

 しかしそれは傍から見れば、"歯が立っていない"と言えてしまう程度のレベルだった。 


「なっ、生意気な石ころですわね……! 魔力増幅――!」


 セレーナは《サンダー・ブレード》に注ぐ魔力を高め、さらに出力を上げる。

 青紫の刃は一層鋭い光を放ち、刀身も巨大になり、火花を散らしながらアダマンタイトの塊へ刺さっていく。


 だが――それでも雷電の剣は、容易にアダマンタイトを切断するには至らない。



 ……十分ほど、時間が経過しただろうか。


 正直言って、雷電の剣ではほとんど掘削を行うことは出来なかった。

 いや、それはもはや掘削とすら言えず、"アダマンタイトの塊に傷を付けた"程度の作業だった。


「ハア……ハア……」

「だ……ダメだぁ~~~……硬すぎるよぉ~~~……」


 セレーナもコロナも地面に座り込み、息を切らす。

 

 信じられないことだが――この巨大なアダマンタイトの塊は、【賢者】の使う《サンダー・ブレード》でも容易に傷付けられなかったのだ。

 世界で一、二を争うほどの硬度を誇る希少金属(レアメタル)、恐るべし。


「うぅ……(わたくし)の《サンダー・ブレード》はダイヤモンド・ゴーレムすら両断しますのに……自信喪失ですわぁ……」


 がっくりと頭を垂れ、露骨に凹むセレーナ。

 まあ、アダマンタイト相手じゃあ仕方ない気もするけどなぁ。

 むしろ傷付けただけでも凄いと思う。


「うーん……さて、どうしたモノだろうね……」


 僕もアダマンタイトの塊を眺めながら、顎を擦る。


 セレーナやコロナが高威力の魔術を使えれば良いのかもしれないが、それは崩落による二次災害の危険性がある。

 かといって中途半端な威力の魔術では、傷も付けられない。


 僕は考える。考える――



 そして――ふと思い立った。


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