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大切なもの  作者: えりか
8/9

8話

「おはよ。茶美から話があるって聞いたんだけど」


朝の身支度を済ませてリビングに行くと、母さんの茶美の父親が私を待っていた。


大事な話って一体何だろう。少し緊張してしまう。


私…何か悪い事でもしちゃったのかな…。私の存在がやっぱり邪魔になったとか…?


「あのね、あんたもうすぐ春休みでしょ?」


「…?うん、今週終業式だから来週から休みに入るよ」


「私達、その間に一週間新婚旅行に行こうと思うの。それで貴方と茶美君にお留守番をお願いしたいのよ」


「…茶美と二人で留守番?」


「ごめんね…本当は皆で行けたら良かったんだけど…」


「気にしないでよ。私は大丈夫だから。茶美の面倒もちゃんと見るし」


「ありがとう、葉癒」


新婚旅行、か…。そりゃ子供と一緒じゃ二人の時間も取れないよね…

私の実の父親と結婚してた時は、色々大変で旅行すら行けなかったから。

だから今度は沢山楽しい思い出を作って欲しい。一週間位なら茶美とも上手くやれると思うし、私が迷惑をかける訳にはいかないから。


あぁ…でもやっぱり作り笑いは気が滅入るな…

ちゃんと笑えてたかな、私…


一々寂しいとかさ、羨ましいとか、そんな感情を持つ自分がめんどくさい…




「はゆ…?どうちたんでしゅか…?はゆ、かなしそうなかおちてましゅ…」


しんみりしながら廊下を歩く私の前に現れたのは、又しても茶美だった。


「別に何でもない。あぁそうだ、来週から一週間私達二人だけだから宜しく。詳しい事情は両親に聞いて」


「まってくだしゃい…!はゆ、ちゃみをだっこちてくだしゃい…おねがいちましゅ…」


「何で…!」


「おねがいちましゅ…」


私は早く部屋に入りたいのに、この子がズボンを掴んで引っ張ってくるから…仕方なくその小さな体を抱き上げる。


茶美は私の頬に触れ、「はゆはちゃみがちあわせにちましゅ…。おおきくなったらちゃみがりょこうにちゅれていきましゅ…いっぱいちあわせにちましゅ…」と言って抱きついてきた。


「あんた…何言って…」


「やくしょくちましゅ。はゆはちゃみがまもりましゅ…はゆはだいしゅきなちとだから…」


「ちゃ、み…茶美っ…」


こんな子供の言葉に泣いてしまうなんて…私、ほんとどうしちゃったんだろう…


私の…弟なのに…茶美の事を大切に想うなら突き放さなくちゃいけないのに……

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