8話
「おはよ。茶美から話があるって聞いたんだけど」
朝の身支度を済ませてリビングに行くと、母さんの茶美の父親が私を待っていた。
大事な話って一体何だろう。少し緊張してしまう。
私…何か悪い事でもしちゃったのかな…。私の存在がやっぱり邪魔になったとか…?
「あのね、あんたもうすぐ春休みでしょ?」
「…?うん、今週終業式だから来週から休みに入るよ」
「私達、その間に一週間新婚旅行に行こうと思うの。それで貴方と茶美君にお留守番をお願いしたいのよ」
「…茶美と二人で留守番?」
「ごめんね…本当は皆で行けたら良かったんだけど…」
「気にしないでよ。私は大丈夫だから。茶美の面倒もちゃんと見るし」
「ありがとう、葉癒」
新婚旅行、か…。そりゃ子供と一緒じゃ二人の時間も取れないよね…
私の実の父親と結婚してた時は、色々大変で旅行すら行けなかったから。
だから今度は沢山楽しい思い出を作って欲しい。一週間位なら茶美とも上手くやれると思うし、私が迷惑をかける訳にはいかないから。
あぁ…でもやっぱり作り笑いは気が滅入るな…
ちゃんと笑えてたかな、私…
一々寂しいとかさ、羨ましいとか、そんな感情を持つ自分がめんどくさい…
「はゆ…?どうちたんでしゅか…?はゆ、かなしそうなかおちてましゅ…」
しんみりしながら廊下を歩く私の前に現れたのは、又しても茶美だった。
「別に何でもない。あぁそうだ、来週から一週間私達二人だけだから宜しく。詳しい事情は両親に聞いて」
「まってくだしゃい…!はゆ、ちゃみをだっこちてくだしゃい…おねがいちましゅ…」
「何で…!」
「おねがいちましゅ…」
私は早く部屋に入りたいのに、この子がズボンを掴んで引っ張ってくるから…仕方なくその小さな体を抱き上げる。
茶美は私の頬に触れ、「はゆはちゃみがちあわせにちましゅ…。おおきくなったらちゃみがりょこうにちゅれていきましゅ…いっぱいちあわせにちましゅ…」と言って抱きついてきた。
「あんた…何言って…」
「やくしょくちましゅ。はゆはちゃみがまもりましゅ…はゆはだいしゅきなちとだから…」
「ちゃ、み…茶美っ…」
こんな子供の言葉に泣いてしまうなんて…私、ほんとどうしちゃったんだろう…
私の…弟なのに…茶美の事を大切に想うなら突き放さなくちゃいけないのに……