4話
「私は賛成だよ…」
「本当に?」
「うん」
「ありがとう…。今度茶美君とお父さん、私と葉癒の4人で一緒に食事しましょう。その時茶美君と仲直りしてね?」
「…分かった。ちゃんと謝るよ」
私は母さんの幸せをずっと願ってきた。
再婚だって…して欲しいと思っていた。
でも…いざとなると、凄く動揺するもんなのね…。しかもあの子供と私、義理の姉弟になっちゃうのか…
ごめん…母さん…
私、本当は…本当は…
母さんの再婚応援したくないよ…
絶対言えないけど…
表情にも出さないけど…
父親も弟もいらない。
私の家族は母さんだけが良かったんだ…
一週間後、私達4人はレストランで出会った。
茶美とかいう子供の父親は優しい人で、前の奥さんとは死別したらしい。
再婚するつもりは無かったらしいけど、保育園まで子供を送迎している内に保育士の母さんと知り合い、何度か会話して段々惹かれたんだって話してくれた。
…この人なら母さんを大切にしてくれると思った。
私の誰よりも大切な人…母さんを幸せにしてくれるのなら…本心では嫌だけれどこの人達と家族になる覚悟を決めた。
そうだ…高校は遠く離れた所に行こう。そしたら二年後には家を出られる。
どうせこの中で邪魔者は私一人だけ。
私が居なくなったって、何も変わらないだろうし。
「はゆ…はゆ…」
私を呼ぶ幼い声でハッとし、下を見ると…チビが私の太ももに乗り、小さな手を伸ばして私の冷え切った頬に触れていた。
「はゆのほっぺ…ちゅめたいでしゅ…」
私はこの子を酷く悲しませてあんなに泣かせてしまったのに…この子供はまるで初対面の時のように笑顔で私と再会してくれた。
だけどまだ私…この子に謝ってない。あの時はこの子ともう関わる事はないと思っていたし、まさか弟になるなんて思いもしなかったんだ。
今後の事もあるし…謝るしかない、よね…
「その…この前はごめんね…」
「ちゃみ、きにちてましぇん…はゆはやしゃしいちとだってしってましゅ…」
「…何で私がいいの?何で私の事嫌いにならないのっ…」
「ちゃみははゆがしゅきでしゅ…」
下から潤んだ大きな瞳に見つめられ、恥ずかしくなってそっぽを向こうとするけれど、「ちゃみをみてくだしゃい」と両手で頬を包み込まれてしまう。
「っ……」
あり得ない…何で私の心臓バクバクしてんの…
相手は保育園のガキよ?私の弟になる子なのよ…
何ドキドキしてんの、私…
「ちゃみ、おおきくなったらはゆをちあわせにちましゅ。ちゃみがちあわせにちましゅ。ちゃみとおつきあいちてくだしゃい」
またこの子…何言ってんのよ。私はあんたみたいな小さい子供に幸せにしてもらいたいなんて、これっぽっちも思ってないわよ…
大体私達は歳の差もあって、何より姉弟になる関係なのよ…
ほら…この子の父親も、母さんも驚いてる。
だけど直ぐに笑った。
これはただの、ままごとだと思ってるみたいだ。
だから私も笑ってやった。
この子の言う事は全部一時的なもので、成長したら私の存在が直ぐ邪魔になる筈。
大丈夫…私はこの子が物心つく前に家を出るからさ。
それまでの辛抱だ…