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大切なもの  作者: えりか
4/9

4話

「私は賛成だよ…」


「本当に?」


「うん」


「ありがとう…。今度茶美君とお父さん、私と葉癒の4人で一緒に食事しましょう。その時茶美君と仲直りしてね?」


「…分かった。ちゃんと謝るよ」


私は母さんの幸せをずっと願ってきた。

再婚だって…して欲しいと思っていた。


でも…いざとなると、凄く動揺するもんなのね…。しかもあの子供と私、義理の姉弟になっちゃうのか…


ごめん…母さん…

私、本当は…本当は…

母さんの再婚応援したくないよ…


絶対言えないけど…

表情にも出さないけど…


父親も弟もいらない。


私の家族は母さんだけが良かったんだ…







一週間後、私達4人はレストランで出会った。


茶美とかいう子供の父親は優しい人で、前の奥さんとは死別したらしい。

再婚するつもりは無かったらしいけど、保育園まで子供を送迎している内に保育士の母さんと知り合い、何度か会話して段々惹かれたんだって話してくれた。


…この人なら母さんを大切にしてくれると思った。


私の誰よりも大切な人…母さんを幸せにしてくれるのなら…本心では嫌だけれどこの人達と家族になる覚悟を決めた。


そうだ…高校は遠く離れた所に行こう。そしたら二年後には家を出られる。


どうせこの中で邪魔者は私一人だけ。

私が居なくなったって、何も変わらないだろうし。


「はゆ…はゆ…」


私を呼ぶ幼い声でハッとし、下を見ると…チビが私の太ももに乗り、小さな手を伸ばして私の冷え切った頬に触れていた。


「はゆのほっぺ…ちゅめたいでしゅ…」


私はこの子を酷く悲しませてあんなに泣かせてしまったのに…この子供はまるで初対面の時のように笑顔で私と再会してくれた。


だけどまだ私…この子に謝ってない。あの時はこの子ともう関わる事はないと思っていたし、まさか弟になるなんて思いもしなかったんだ。

今後の事もあるし…謝るしかない、よね…


「その…この前はごめんね…」


「ちゃみ、きにちてましぇん…はゆはやしゃしいちとだってしってましゅ…」


「…何で私がいいの?何で私の事嫌いにならないのっ…」


「ちゃみははゆがしゅきでしゅ…」


下から潤んだ大きな瞳に見つめられ、恥ずかしくなってそっぽを向こうとするけれど、「ちゃみをみてくだしゃい」と両手で頬を包み込まれてしまう。


「っ……」


あり得ない…何で私の心臓バクバクしてんの…


相手は保育園のガキよ?私の弟になる子なのよ…

何ドキドキしてんの、私…


「ちゃみ、おおきくなったらはゆをちあわせにちましゅ。ちゃみがちあわせにちましゅ。ちゃみとおつきあいちてくだしゃい」


またこの子…何言ってんのよ。私はあんたみたいな小さい子供に幸せにしてもらいたいなんて、これっぽっちも思ってないわよ…


大体私達は歳の差もあって、何より姉弟になる関係なのよ…


ほら…この子の父親も、母さんも驚いてる。


だけど直ぐに笑った。


これはただの、ままごとだと思ってるみたいだ。


だから私も笑ってやった。


この子の言う事は全部一時的なもので、成長したら私の存在が直ぐ邪魔になる筈。


大丈夫…私はこの子が物心つく前に家を出るからさ。


それまでの辛抱だ…

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