3話
「何で母さんが此処に…」
「茶美君、勝手に家を出ちゃ駄目でしょ。お父さん凄く心配してたんだからね」
「ごめんなしゃい…」
母さんは子供を抱き上げると、優しく頭を撫でている。
何…?この子、勝手に家を出てきたの?やっぱりお使いなんて嘘だったんじゃない。
あぁ…騙される所だった。一瞬でもこのチビに心を乱された自分が馬鹿みたい。
「じゃあ私レジ行ったら帰るから」
「はゆ…ちゃみ、はゆをおいかけたんでしゅ…うしょちゅいてごめんなしゃい…。ちゃみ、どうちてもはゆにあいたかったんでしゅ…」
「私、嘘が一番嫌いなの。ま、子供に何言っても分かんないだろうけど。ままごとなら同じ園児とやりなさいよ。ハッキリ言っていい迷惑よ」
「葉癒!言い過ぎよ!」
分かってる。私だって言い過ぎなのは分かってるよ。分かってても、自分の気持ちをコントロール出来る程大人じゃないんだ。
「私はあんたなんて大嫌い」
「はゆっ…」
「大嫌いっ!」
「わぁぁーーんっ…うわぁぁんっ…はゆ…はゆぅ…」
私の為に泣かなかった子供が、とうとう泣き出してしまった。
でもこれでいい。変に期待持たせる方が残酷だ。私は…こんなガキ絶対に好きにならないから。
片手に少し重い荷物を持ち、それよりも重い気持ちを抱えたまま家に帰ると、母さんが玄関で私を待っていた。
「葉癒…どうしてあんな酷い事言ったの?茶美君、ずっと泣いてたのよ…」
「母さんこそ、何でスーパーに来たのよ。あの子の父親から連絡あったって言ってたけど…個人的に連絡取り合う程、仲良いんだ?」
「っ…あのね…葉癒、お母さん…茶美君のお父さんからプロポーズされたの…」
「え?」
「だから…茶美君と仲良くして欲しいの…」
母さん…もしかしてそれで最近よくボーッとしてたの?度々忘れ物する理由も…その人にプロポーズされた事で頭がいっぱいだったから?
なんだ…そうだったんだ…
私が心配しなくても、母さんはちゃんと相手見つけてたのね…
「あんたには今まで沢山苦労かけて悪いと思ってるわ…。茶美君のお父さんと再婚すれば貴方には弟が出来てお父さんも出来るの…これ以上寂しい想いをしなくても済むわ…」
「私の為に…再婚するの?」
「最初はそうだった…でも今は茶美君のお父さんの事本気で好きになったの。葉瘉…あんたの意見を聞かせて…」
私の意見?じゃあ私が嫌だって言ったら、再婚するの止めてくれるの?
……そんな事、口が裂けたって言える訳ない。