10話
「あぁ、ありがとうございます。我々のクエストを受けていていただいて。」
「いえいえ。ゴブリンがいるのはあの山ですね?」
ここは、ゴブリンが住み着く山の麓の村だ。村長の話によると、最近、突然ゴブリンが鉱山に住み着き、鉄鉱業で盛んなこの村では経済的に厳しい状況に置かれている。シーア等との出会いなどで村につく頃には日が暮れてしまった。
「奴等には微力ではありますが、暗視を持っています。夜間にクエストを実行しなくてもよろしいですか?」
「それでは、この村の宿を使って下さい。」
辺境の村になると、かなり設備が悪いときがあるのだが、ここの宿はそこまで汚かったりせず、十分に休むことができる。まあ、多少汚くても休むことはできるのだが。荷物を借りた部屋に置くと、ドアがノックされた。
「キトラ様。シーツと枕と掛け布団をお持ちしました。」
女将さんの声かと思ったら、少女の声がした。シーツを持ってきてくれたことには変わりないので、返事をしてドアを開ける。ドアを開けると、掛け布団が宙に浮いていた…んっ?
「キトラ様…。あの…早く持って頂いても…。」
「あぁ。すみません。」
布団などを受け取ると、猫のような耳を持つ少女が立っていた。容姿を見る限り、10歳満たないくらいだろうか。しかし、問題はそこではなく。この村の人は、皆、獣人ではなく、人なのだ。獣人は北方の国に住んでいると聞いたが、何故、獣人の子供がここにいるのだろうか。
「では、失礼します。」
そう言って、獣人の子供は立ち去る。何故、ここにいるのか、村長に後で話を聞きに行こう。
「ゴ、ゴブリンだ!人狼も来たぞ!!!」
俺はその声を聞きつけてすぐに部屋を飛び出した。門の前まで向かうと、群れがすぐそこまで迫って来ていた。
「キトラさん!ゴブリンは我々が抑えます。キトラさんは人狼を!」
「人狼…ですか?ギルドには報告していませんでしたが。」
「それが、報告するまでは狼を被ったゴブリンというふうに認識していたのですが、最近、賢い知性を持っていることが分かったのです。」
「えっ!」
「我々が山から追い出そうとして巣穴へ入ったときも、罠に誘導するなど、大失敗に終わってしまったのです。」
「だから、賢い知性を持ち、狼の皮を被っていることから人狼と。」
「はい。」
「分かりました。なら、人狼も含め、一回私が一掃してきます。万が一敵が漏れてしまったときはお願いします。」
「えっ、あの量を?!」
俺は剣を抜き出して前に出る。
「マギトフィン」『暗黒演舞!」
群れ全体を闇で包む。ゴブリンには多少の暗視効果があるが、それでも十分視界を奪うことができる。
「はああああ!」
暗闇に突っ込み、剣を振るう。ゴブリン達の断末魔が響き渡る。すると、俺の剣が金属にぶつかる。人狼の着けたナックルだ。
「人狼!」
「!!!」
視界を奪い、群れを半壊させているのにもかかわらず、冷静に対処できるとは。やはり…。
「モンスターの亜種なのか…。あるいは…。」
そうつぶやくと、人狼が俺の剣を弾く。
「!!!」
人狼が群れを引き連れて帰っていく。それに村人たちは歓喜の声を上げる。
「ありがとうございます、キトラさん!」
「はい…。」
モンスターの中にはごく稀に亜種が生まれるのだが、それらは体の一部が変わっていたり、体の色が変わっていたり、運動能力が向上していたりするくらいなのだが、知能が発達しているという事例は聞いたことがない。賢い知性を持ったモンスターなど上級悪魔など、かなり限られているのだ。少なくとも、並のゴブリンではないことは確実である。
「村長さん。明日は何があっても、村人たちには外出させないでください。」
「そんなに危険なのですか、あの人狼は?」
村長たちを安心させるために嘘でも危険ではないことを伝えたいが、今までにない経験でそう言うことができなかった…。




