第65話 強化合宿への見送り
やっと学生らしい生活が始まると思い、心に青春という名の希望を見出していたアウルだが、アウル、ゼレシア、アリシア以外のハクを含めてほぼ全員のクラスメイトたちが強化合宿へ強制的に向かうことになった。そしてSクラスとAクラスの生徒以外はほぼ強制参加らしいので同学年で学院に残ることとなったのはこの三人とAクラスの連中だけなのだ。しかし、この学院のAクラスの連中は全員…頭がおかしい。ほぼ全員がテロリストのようなものだし、まず学院一破壊と邪魔をするのが好きなクラスとして有名だ。
何故、Aクラスだけにそのようなメンツが揃ってしまったのかは不明だが、とにかく相手にするのがとても面倒と学院内では唯一、他のクラスと学年の生徒たちから忌み嫌われている。
そして今日が強化合宿の日。
学院の体育館には転移魔法を用意している教師と魔法使いたちとがやがやと喋り合っている生徒達が集まっていた。
「じゃあ、行ってくるね」
少し下を向き暗い表情でいるハク。どんだけ身体能力が無かったんだか…。
「行ってきなさい! そして貴方のその痩せっぽっちの身体を改善してくるのよ?」
応援の言葉を掛けながらも少し口端を上げニコっという擬音よりニヤッといった感じの笑顔を作ったアリシア。
「えっと…。頑張ってくださいね!」
そして素直にハクを応援するゼレシア。この体育館には今、1年生の全クラスの生徒達が集まっている。Aクラスの生徒達は来ていない。流石に魔力センスだけで成り上がったSクラスとは違って一応、平均的な努力はしているようだ。
「アウル、やっぱり洗い落とされない身体強化魔法とか無い?」
ケイト先生によると、この強化合宿の行われる島はとあるアイテムを装着している人間以外は魔法の使用が禁止されるらしい。念のため、参加者である生徒達には魔法流しの滝という場所で全員の強化能力や魔力によって無意識に強化されている部分も全て洗い流し、ありとあらゆるものを絶ち生徒達の本来の身体能力だけでこの強化合宿を行わせるらしいので、アウルが今ここでどのような強化魔法を使い、その魔法をいくら隠そうとしたとしても直接その魔法流しの滝とやらで体に付着した魔力を全て洗い流されては何もすることは出来ない。
「無理だな。諦めて鍛えるんだな」
「…….」
再びハクの表情が暗くなり、最後の希望が閉ざされたことによりハクはトコトコと歩いて強化合宿参加組みの列へ向かった。
そしてAクラスの担任以外の教師達と参加者が体育館に大きく用意された円陣の中へ集まり終わると、円陣内の教師達が揃って手を上げ周りで転移魔法の用意をしていた他学年の教師達と外部の魔法使いたちが詠唱を始め、体育館の床に書かれた大きな円陣が白く光り出し、円陣を中心にして詠唱していた教師と魔法使いたちが唱え終わると円陣がより明るく光り、体育館中が光に包まれた。そしてあまりの明るさに瞑っていた目を開けるとそこにもう円陣内にいた生徒と教師たちは消えていた。どうやら学院所有の島とやらへ転移されたようだ。
残されたアウル、アリシア、ゼレシアの三人はSクラスのクラスメイトたちを見送ると、明日からAランククラスの授業に参加することになった三人だが、今日は何もすることが無いので各自寮に戻るのだった。
最近、あまりこの作品を書けていない気がする~(事実)
超不定期ですが、明日は絶対に次話投稿するのでよろしくお願いします。




