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第36話 魔法大会、その後4

 俺達はこの綺麗な景色を見ながら周り全体にある黄色く輝いた木を見ながら歩いていた。どの木も本当に黄色く光っており、それを見ているだけでも体が軽くなり、暖まるようなそんな気持ちになった。これはかなりリラックスできる空間だな…。


 すると早速、ゼレシアがよくわからない木の実を持ってきた。その実は赤く、表面にぶつぶつと緑色の斑点があった。かなり毒々しい見た目で今でもその実から何かが出てきそうな、そういった外見だった。ゼレシアはもう既にパクパクと食べているが、中身はスイカのように赤く輝いていた。


「はむ、はむ、これは美味。今までに食べた果物の中で一番美味しいぞ」


 セリーヌもゼレシアに続いて食べていたが、二人共とても美味しそうに食べていたので俺も少しかじってみることにした。—――うん。これはうまい…。味はスイカだけど、あのスイカの真ん中の部分をもっと圧縮してそれが中身全体に敷き詰められているような感じだ。この国で売られているスイカは水分と糖分が少くなく、美味しくなかったが、この木の実は逆に水分たっぷりで糖分も今までに食べたことのあるスイカの何倍も濃いかった。


「こんな甘い果物、初めて食べました」


「うむ、だがこれは拙者が和国で修行をしていた時に食べたスイキにという果物の味にとても似ているな。だがこの果実の方が何倍も甘く、美味しい部分がスイキより全然多い」


 和国。最初はそのような国があるのかと驚いたが、食べ物や文化、そして喋り方も昔の日本とよく似ている。一回は行ってみたいものだ。


 その後も他の果物を食べたが、全て味は知っている物ばかりだった。断然、ここにある果実の方が美味しかったが。


「どうだ? 私の植物農園は?」


 俺達がこの森、全体に生っている果実を食べているとロリ長が俺達の前に姿を現した。


「最高です~、って理事長先生の植物農園ですか?」


「そうだろ? ここは私が長い年月をかけて育て上げたから味も栄養も物凄いものだ」


「でもどうやって? この木々から湧き出ている緑色の光は魔力ですよね?」


「ご名答。私はこの森、全体に治癒の魔法を毎週かけているのだ」


「治癒魔法って植物にも効くんですか?」


「ああ、植物の成長速度や果実の密度が治癒魔法によって少しずつだが、増えていくことが私の研究によって分かった。だが、一つだけこれには欠点がある」


 と言い、ロリ長が飛行魔法を使い、空から森全体に治癒魔法をかけた。すると木々から出ていた輝きがより濃くなった。だが、ロリ長が俺達の元へと降りてくるとかなりの魔力が彼女から消えていることがわかった。


「と、こんな感じで魔力の消費が多すぎる。おかげさまで毎週、私の魔力は半分に激減し、この森に吸い取られる」


 少し考えるゼレシア。


「では当番制で治癒魔法をかければ良いんじゃないですか?」


「うんうん。その言葉、待ってました!!!」


 ちっ…。めんどうくさいが、俺もここで果物を食べれるのは良いことだし、週一回だけなら別に良いか…。森にかける治癒魔法の当番はロリ長、俺、セリーヌ、ゼレシアの順にしていくことになったが、4人でやるので単純計算で一人が毎月治癒魔法をかければ良いのか。それだとかなり楽になるな。


「だけどセリーヌは治癒魔法をこの森全体にかけれる程の魔力量を有していないから、後で[ミリ・オーバー]をかけないとね」


「その[ミリ・オーバー]とやらは何の魔法なのだ?」


「対象の魔力量の上限を1000倍に増やす魔法だ」


「なっ、なんと! そのような魔法があるとは…。まさか禁術ではあるまいな?」


「いや、禁術では無く、国防級魔法だ」


「こ…こ、国防級魔法!???? 国防級魔法とは超級魔法のまだ上に存在するという魔法の事でござるか? そのような魔法、本当に某などに使っても良いのでござるか? そもそもそのような大魔法を使うのだ、それなりに代償というものがあるのではないか?」


「それが全然代償なんかも無くて、魔力も今のゼレシアの2倍の魔力量程だし、今のところ異常は無いよ」


「そもそもアウル殿自体が異常だったな」


「では某に[ミリ・オーバー]をかけてくれ。某もこの森にある果実は気に入ったのでな」


「おう!」


「三人共、ありがとう」


 ロリ長は俺達に礼を言った。何故かいつも魔力が一気に少なくなったりしていると思ったら植物農園の為に魔力を使っていたとはね。ちなみにロリ長によるとこの先に温泉があるらしい。勿論、その温泉にも治癒魔法がかかっており、どんな傷でも一発で治るそうだ。早速今日の夜、三人はその温泉に行くそうなので、俺は明日行くとしますか。


 次の日、


「あ、アウル君。良いお湯加減ですね…」


 今日は三人共、温泉に入らないと聞いて来たのにゼレシアが温泉に浸かっていた。


「そうだね。ところで何故セリーヌがここに?」


「えっと…それは…。 特に理由は無いです。ただ少し気分が変わり、温泉へ来たくなったので…」


「確かに気分が変わって突然温泉に来たくなることってあるよね」


「はい、そうですね」


「….」


 いつの間にか俺達は黙り込んでしまった。ヤバイ、気まずい。何を話せば良いのかわからない…。何か話題を。っと空を見上げると、そこにはたくさんの光が天井で輝いていた。とてもキラキラしていてまるでこの上に広がっている地下の天井に星があるかのようだ。そして目をつぶると地下なのに鳥や動物の鳴き声が聞こえ、どこから吹いているのかもわからないそよ風が肌に当たってとても気持ち良かった。


 目を開けると、隣でゼレシアも空の方へ顔を向けて目をつぶっていた。この空洞の天井で輝いている光に照らされて見えるゼレシアの横顔はとても綺麗であり、何故か心が凄く落ち着き、穏やかな気持ちになっていくのがわかった。数秒ゼレシアの顔を見つめていると、彼女が俺の方を向いた。俺とゼレシアの目が合った。その瞬間、俺は横を向いてしまい、ゼレシアも反対方向へ顔を向けてしまった。その後ゼレシアは温泉から出てしまい、俺は一人になってしまった。もちろん、予定では一人で入るつもりだったんだけど….。

 何なのだろう、この胸から何かがこみ上げてくる感覚は…。


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