第30話 魔法大会9
俺達は試合会場から出て、会場から離れた所を歩いていた。今、俺達が歩いている所にはずらりと屋台、レストラン、カフェなどの食べ物屋さんが並んでいた。
「ねえ、アウル。どこのレストランに入る?」
「ん~、俺は何でもいいよ。ハクは?」
「…じゃああの店はどうかな?」
ハクは小さく、おしゃれなレストランを指さした。
「ああ、そうだな。じゃあ、あそこにするか」
俺達はレストランの入り口へ向かい、メニューを少し見るとこのレストランはパスタとピザがメインだということが分かった。アリシアがドアを開けたその瞬間、彼女は慌ててドアを閉めた。
「ん? どうした?」
「やっ、やっぱりここは止めて他のレストランにしましょ」
俺は窓越しにレストランの中を覗き見ると一席にだけ大量の食べ物が置いてあり、ゼレシアとロリ長が獣のようにパスタを食べていた。なるほどね…。今すぐこの場を離れて他のレストランへと急いだ方が良さそうだ。
「ここは来ず多くの種類の食べ物があるね。ここはどうかな?」
「うん、じゃあここでいいよ!」
扉を開けると頭から二本の角が生えた女性が立っていた。
「いらっしゃいませ!」
俺は生まれて初めて角が生えた人を見たのだが、これはいわゆる魔族というものなのではないだろうか?
「あれ、魔族よね?」
「…うん…そうだね」
「お客様、このアキレア帝国に来たのは初めてですか? この国では魔族が生活することをこの大陸の国々の中で唯一許されているんですよ」
何百年も前に魔王が生まれ、魔族と他、3種族との戦争にて現在は休戦になっているようだが、未だに魔族は差別され、魔王城の周りにある魔族の町からは滅多に出て来ないらしい。そして魔王の配下の残党は未だに村々に降りて甚大な被害をもたらしているようだ。
「では、この国は魔王と平和条約を?」
「はい、現在の魔王様とは平和条約を結べていますが、今年丁度魔王様が代わられる年なんです。なので最近はこの国でも魔族の受け入れが難しく、この国から逃げる魔族も多いようです」
「魔王が代わられる年とはどういうことだ?」
「現在、この西の魔王城で住んでいるのはエル様です。ですが、今年は魔王が魔王城から他の魔王城へと移り住む年なんです」
「なるほど。年に一度行われる貴族の領地編成のようなものか」
「はい。それと同じと考えていただいて構わないです」
「すみません、他のお客様からのお呼び出しがあるので私はこれで失礼いたします」
どうやら魔王というのは数多く存在するようだな。俺が読んだ本によると人間を含む3種族と戦争になったのは一人の魔王とだけだったような気がしたのだが…。
「ハク、魔王にそのような年があったって知ってたか?」
「いや、僕も知らなかった。それにこの話だと魔王は数多く存在するようだね。そんなこと、両親や学院でも、そして本にすら記されていなかったよ」
この情報はこのアキレア帝国では一般的なのだろうか? それとも魔族だけが知っている事なのだろうか?どちらにせよ、学院に戻ったら調べてみる価値はありそうだな。
「…とにかく今は料理も来たことだし、食べようか」
「ああ、そうだな」




