プロローグ
異世界温泉物語を執筆させて頂いているなつみかんです。
今回はチート冒険譚を書いてみたので宜しければ、是非読んでいただきたいです。
俺"影山黒乃"は陰の物である。
陰の物とは陰気な性格の者の事である。
つまり、"陰キャ"である。
しかし、何故陰キャを"陰の者"と中二風に言い換えたかというと、それには深い意味がある。
陰の者とはつまり、その陰を極めた者の事である。
陰キャの至高へと行き着く先は陰の者。
それは陰の境地である。
そして、17年間陰を極めてきた俺は晴れて、陰の者となったのである。
陰の者の朝は朗らかな陽光ではなく、室内の漆黒たる暗部から始まる。
墨汁を部屋一面にぶちまけたかのような壁紙の色。
日を遮るカーテンでさえも暗黒に染め、それ自体の機能を超越させていた。
俺はどす黒く塗り潰された寝巻きを脱ぐと、学ランに着替えた。
そして、俺は机の収納から綺麗に並べられたマスクを1つ取り出し、それを装着した。
これで陰の装備はすべて揃った。
後は朝食を済ませて、学校へ向かうだけだ。
一通りの準備を終わらせたその時、俺の視界が真っ暗になった。
そこは自分の姿すら視認出来ない真っ暗な空間だった。
ここまでの暗さは、幾ら陰の申し子と呼ばれる俺でも再現できないだろう。
すると、脳裏に何者かの声が過ぎった。
俺は不意の出来事に声を上げそうになるが、陰の者としてはそんな目立つような行為は御法度である為、何とか心の中にその衝動を抑えた。
続いて、その声は俺に何かを尋ねてきた。
「お前が地球の"影"の者か?」
しかし、陰の者は人と接触することを由としない生き物である。
だから俺はその声の主を無視することにした。
「おい、聞いているのか?
私はお前に"影"の者か?と聞いているのだ」
その声の主はしつこく俺に話しかけてくる。
問いかけてくる内容があまりにも面倒くさそうな感じだったので、俺は奴に対し、断固として無反応を通すことにした。
「えぇい、私の話が聞けないならやむを得ん。
お前などこうしてくれるわ!」
すると、辺に閃光が走った。
それは、目も開けられないほどの眩しさだった。
(眩しい!やめろ!俺に光を当てるな!!)
陰の者が嫌うものの一つが強い光である。
現に、俺は夏場の日差し等の強い光に当たると活動が減退したり、酷い時では貧血で倒れてしまうことがある。
だからこそ、俺はそのようなシャイニングタイプの攻撃が大の苦手であり、同時に致命的な弱点なのだ。
ちなみに、陽キャもその類に入る
「ふっはっはっはっ!
どうだ、話を聞く気になったか?
もしそのまま黙り続けるつもりなら、更に光を強めるぞ?」
更に光を強める?冗談じゃない!
このままシャイニングタイプの強攻撃をくらえば、俺はいつか灰となり消えてしまう。
ならば、解決策は一つしかないだろう。
「わかった!
お前の言うことを聞く!
だから、この光をさっさと止めてくれ!!」
「ふん!
最初から私の話を聞けば、このような事にはならなかったのだ。
お前は自分の行いを悔い改めるべきだな」
奴のふんぞり返った物言いに俺は少し頭にきた。
しかし、また光を当てられては堪まったものではないので俺は少しずつ溜飲を下げていった。
すると、奴が俺の頭に再度、語りかけてきた。
「改めて聞く。
お前は"影"の者か?」
俺は大人しく答えることにした。
「あぁ、俺は"陰"の者だ。」
俺達は話の要旨を全く掴めない会話をしていた。
「そうか、お前が"影"の者か。
地球にも影が存在していたのだな」
奴はそんな独り言を喋ると、満足気にやや上ずった声色で語りかけた。
「ならば、話は早い!
今日からお前は私の世界の影の者になってもらう。
異論は認めん!
詳しいことはまた後ほど伝えるからな。
向こうでも達者でやってくれよ!」
すると、俺の足元に突然穴が発生した。
そして、俺はその穴に急降下し、その場から姿を消してしまのだった。