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夢って叶い辛い!


まさか、あの場で視線を感じるなんて思っても見ませんでしたわ。

グローブ越しから伝わるマーガレット嬢の柔らかくも薄く小さな肩に離れられない魔力を感じて、そのままダンスホールへ戻ってきてしまいました。

だがしかし!ここいら辺でマーガレット嬢と離れて、本来の目的である旦那様候補を探しに行かないと!

何も収穫無しで帰ったらレベッカに殺されてしまいます。

肉体的にではなく、精神的に殺されます。

あの方は、本当に病んでいらっしゃいますからね。


「マーガレット様…そろそろ私以外の方ともお話ししたいんじゃないくって?」

「いいえ。私は、シャーロット様がいらっしゃれば十分ですわ。」


…あれ?なんか、マーガレット嬢から醸し出される空気が、いつも感じている病んでる空気に感じますよ。

まさか、この可憐で超絶守ってあげたくなるようなお嬢様が?

驚きのあまり、マーガレット嬢を凝視してしまいました。


「シャーロット様、今夜だけではなく、これからも私と一緒にいてくださいませんか?」

「えっと…それは、素敵なお話ですわね。」


病んでる空気を感じる度に笑顔が引き攣ってきました。

マーガレット嬢は、私との距離を縮めるべく、更に体を密着させてきます。

どうしたものかと困っていると遠くから救いの声が聞こえてきました。今の私にとっては、かなり心強い援軍です。


「シャーロット嬢、そろそろマーガレットを返してもらえないだろうか。」

「レオ様、マーガレット様は物ではございませんよ?」

「ぐっ!…そうでした…」

「どなたかに紹介でもしたいのかしら?でしたら、私が身を引くべきですわね。」


訳すと〈紹介するって理由で連れて行っていいんだぜ?〉という事です。

レオ様は、そのことをすぐに分かったようで、可愛らしい満面の笑みを浮かべて何度も頷いています。


「はい!そうなんです!申し訳ありません!」

「ちょっと!レオ!離してください!!!シャーロット様!!」

「またお話いたしましょう。」


すぐさまレオ様は、マーガレット嬢の手を取って強引に私から引き離していかれました。

有難う。っと心から思ったので柔らかな笑顔でマーガレット嬢に殴られながら消えていく姿を見送りました。

お幸せに…マーガレット嬢は、本当に可愛らしい方なのですけど、病んでる方は少々遠慮したいんです。

執念深さを身をもって経験中ですからね。

レベッカでお腹いっぱいです。

レベッカで思い出しましたけど、私も殿方を探しにダンスホールを一周してみようかしら。

今回のミッションをクリアしなくては、大いなる野望である結婚と幸せな家庭が達成できません。

表情をあまり見られないように扇子で顔を少し隠しながらホールを壁伝いに歩くことにしました。


おや、今日は魔法を使われる職業の方が多いようですわね。

私、魔法に憧れを持ってます。

日本にいた時は、魔法なんて本や映画の中でしかなかったけど、転生して魔法が日常的に使われている世界に来た。

何度も魔法を使おうと挑戦してみたが、才能が全くなくて拳だけで生きることになった。

今回は、使えるかもしれないと期待してみたが…才能って魂にこびり付いているのだろうか。

拳しか頼れるものがなかった。

剣も魔法も使えないのにファンタジーの世界に転生。

もどかしいにもほどがある。


カッコいい魔法使いの集団を発見しましたので声を掛けようとした時です。

会場から少し離れた位置で、異様な殺気を放つ集団を察知しました。

数は、34体。突然現れたという事は、モンスター使いの仕業だな。

恐らく貴族に恨みを持つものが依頼したのだろう。

それにしても、チャンス!!!!

これだけ、魔法使いがいるんだから非力をアピールして旦那様ゲット!

不謹慎にも表情が緩んでしまいます。

確実にこの建物に近づいてきていますから、そろそろ誰かしら気が付いてもいいものですね。



あれ?なんで誰も反応しないんだ?おい!兵士何やってんだよ!

心配になってついついマーガレット嬢を探して側に寄ろうと動いた時です。


―ゴォオオオオオオオオッ!!-


えー!!被害がないと分からないパターン!?

開かれたドアから見えたのは、砕け散る門と逃げまどう兵士たち。

おいぃぃいいいいい!兵士守れよ!逃げんな!!訓練受けてんだろ!

奥歯を噛みしめてギリギリ鳴らして成り行きを見ていると、貴族の若者たちが前に出て攻撃態勢に入りだした。

流石!でも、実戦経験がある奴が少なすぎるな…力が入りすぎて、本来の力が発揮できない者たちがいる。

こりゃ、持たないかもな。

自分が出るか悩んでいると脇を擦り抜けるように、マーガレット嬢が走り出して負傷している人の元へ向かっていた。

十体近くのモンスターが、既にホールまで入ってきていたのだ。

腹を決めるしかないか。


「レベッカ!!!!!!外の奴らを倒せ!!!」


腹の底から咆哮の様に声を上げて、外でヤキモキしているであろうレベッカに指示を投げると、ドレスの前を割いて靴を抜き捨て、足の裏から大地の力を吸い上げるように全身に捻気を巡らせる。

マーガレットが震えながらも自分のできることを全うしているんだから、私も全うしなくては顔向けができない。


「どけぇえええええ!若造共ぉぉおおおお!!!」


軽く踏み込むと足にジェットが付いたかのように前へ飛び出した。

虎の頃と比べると体への負担がデカいが、耐えきれないわけじゃない。

飛び出した先にいたモンスターを正拳突きで貫くと、方向を変えて数体のモンスターを蹴散らしていく。

ああ…前世に戻ったようだ。

血しぶきが舞う中でそんなことを考えていた。

きっと、この後化け物扱いされて山に籠るしかなくなるんだろうな。

ホールに入ってきた最後のモンスターから埋まった拳を引き抜いて、血の付いた手のまま垂れ下がってきた前髪を掻き上げた。


「あとは…外の奴らか…」

「シャーロット様!!お怪我はありませんか?」

「マーガレット嬢…私なら大事ない。汚れるからあまり近付いてはダメだ。」

「汚れなんて気にしません!貴方様は強くて美しいですわ!」


距離を取ろうと離れるが、マーガレット嬢は顔を真っ赤にして血に塗れた私に抱き着いて頬擦りをしてきた。

ああ、前世で会いたかったなぁ…

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