お嬢様言葉って大変
まったり更新で書いていきます。恋愛もの書いてみたかったので。
初めまして。
私は、見た目中の上。家柄も貴族の中ではまぁまぁ。
エメラルド家の一人娘でお婿さん絶賛募集中の恋に恋する15歳。名前は、シャーロット・エメラルド。
中身は、ちょっと変わっていまして、人生3週目のベテラン。
つまり、転生2回目記憶有りのオプション付きです。
だから前回、前々回を踏まえて身の振り方をあれこれ考えたんですけど、一つの答えにしか行きつきませんでした。
前世は、この世界の虎の獣人で拳聖獣王と呼ばれていたものすっごく強くって、剣も魔法もなんてことのない化け物のような男。死因は、弟子たちに囲まれての老衰です。
前前世は、地球と言うところの総合格闘家で防衛戦の試合中に、マットで足を滑らせ、コーナーに頭をぶつけてしまってそれっきり。
2回の生で結婚したことも子供も作った事のない私は、今世では絶対に結婚して子供を産みたいんです!
元はゴッツイ男でも、長い生を寂しく生きてきた私にとっては、性別なんて気になりません。
子供が欲しいんです!
家族が欲しいんです!
弟子じゃダメなんです!
前世では、長い生を経験したので男もいけました!
現世で性別が女でも問題ありません!
女性になったのは、初めてですけど、転生二回目なので色々わかっていますの。
女は、肉体的に強くはなく、中身が強い方が好まれますわね。
但し、心を許した殿方にだけ弱い部分を魅せる。
完璧ですわ!
これで、夜会に一張羅で参加して適当な家柄の三男以降の殿方ゲットだぜ!
いけない…殿方と結ばれるんですわ。
私、男歴が長かった為か言葉遣いが少々悪かったので、鍛えるために夜会不参加を3年決め込んでましたの。
折角のデビュー戦で1発でか…ロマンチックな出会いをしたかったからですわ。
ああ。楽しみですわ。
期待に小さな胸を膨らませている私のサポートを5年もして下さってる侍女のレベッカは、ヘアメイクを整えている私を見て眉を顰めています。
「レベッカさん、私は完璧に役目をこなしますから心配しないで大丈夫ですわ。」
「夜会だけではダメなんですよ?」
「ええ。夜会後もお食事会にご招待して…」
「食事会にご招待で御座います。」
「厳しくないかしら?」
「よろしいですか?貴女の言葉遣いは、所詮メッキ。すぐにハゲ散らかりそうなメッキなんですから、細心の注意を普段からして下さいと申し上げ続けています。お分かりいただけていないならまだ…」
「分かりましたから、もうドレスに着替えてもよろしいかしら?」
長いんです。説教が毎回長いんです。
レベッカは、私の大事な理解者で先生なのです。
今逆らったら全てが無駄になってしまいます。
逆らえない理由はそれだけではありません。
彼女はヤンデレなんです。
前世の私の最後の弟子であるエルフの娘なんですが…老人であった私に猛アタックしてきて、かなり引いたんですけど…現世でも発見されて付きまとわれています。
それどころか、早く念願を叶えてから転生して欲しいと事ある毎に言ってきては、さりげなく命を狙ってきます。
恐ろしい子です。
今回は、「子供さえできれば、いつ死んでも問題ありませんよね?」とか満面の笑みで言ってきました。
ヤンデレの彼女に素敵な殿方を宛がいたいものです。
別に、厄介払いをしたいわけではないんですよ。
純粋に幸せになっていただきたいんです。
さて、微かな可愛さをアピールする為、ピンク色の滑らかな生地で作ったドレスにパールの飾りを散りばめて、エレガントキュートな仕上がりになっているドレスを身に付け、白いシルクで覆われたパンプスを履き、表情を品よく隠すセンスを片手に持って完成です。
ピンクは無条件で可愛いはずですわ。
自信満々の表情でレベッカを見ると、彼女はあり得ない位凶悪な顔をしています。
「なにかしら?」
「かわい子ぶりっ子も大概にしろよって感じに仕上がってますよ。」
「つまり、女性受け最悪ってことかしら?」
「なんで、そのドレスを選んだのか謎です。」
「ピンクとパールは可愛いでしょ?」
「ピンクとパールのヒラヒラドレスを可愛く着こなすのは、小柄で華奢で髪なんてふわっふわの波打つようなロングで守ってあげたくなるようなお人形さんのような可愛らしい容姿の方です。貴女の様に、細マッチョで胸真っ平らな一歩間違えたら男性に見えるような長身の女性には似合いません。鏡見てごらんなさい、鼻で笑っちゃうくらい酷いですよ。」
「ぐっ!…真っ平らじゃない!ささやかだがあるだろうが!それに、男に見えるってドレス着てんだぞ!」
「昔の貴方の方がまだありましたよ!!ボインですよ!ドレスだって似合いますよ!」
「昔のほうが似合うわけないだろうが!それにアレは、大胸筋だろうが!今は、柔らかい女性らしい胸がついてる!」
「すぐ硬いとこにぶつかるじゃないですか!そういうのを洗濯板って言うんですよ!」
確かに胸は豊満な方ではない…です。
レベッカとのよくあるやり取りで口調が戻っていってしまいそうでした。罠でしょうか?
さて、似合わないと一刀両断されたので、仕方がありません。
ドレスチェンジです。
部屋からクローゼットへつながる扉を開け、カーテンの様に下げられているドレスを見て歩く。
折角今日の為に作ったのに…きっとこのドレスが日の目を見ることはないでしょう。
改めて見ると、私のクローゼットって地味です。
それに、明るい色があっても今以上に年上に見えそうですわ。
「お嬢様、こちらになさってください。」
「地味だな…」
「地味でもエメラルド家の象徴色ですよ。一発で覚えて頂ければ、婚期もグッと早まります。」
「これでいこう。」
ピンクの可愛いドレスを脱いでレベッカに渡し、代わりにレベッカが持っていた深緑のドレスを手にした。
この国の貴族は、みんな金系や石の名前が家名としてついていて、それと同時に、それぞれの色や柄等決まっているのです。
レベッカの言う通り、覚えてもらうことも肝心なこと。
躊躇することなくドレスを身に付け、余所行き用の装飾品で首元や手首を飾ります。
その間に、レベッカは宝石箱から代々受け継がれてきたエメラルドの髪飾りを結いあげた髪に挿してくれました。
病んでいなくて口と態度が悪くなければ完璧な侍女ですわ。
というか、口も態度も悪い時点で侍女としては失格なのかもしれませんわね。
読んで頂いて有難うございました。