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じねんじょ  作者: なかよし
発芽
9/13

愛と罪と

血のように赤い空の下


まっきっきの草っ原


そよ風になびからされるように歩く少年BOY唯一人


黒いトレンチ・コートのBOY


ただ地面を見つめて歩く少年BOY


背中を丸めたBOY唯一人、まっきっきの草っ原をなびからされているご様子


BOYは過去に生きていた


少年BOYは忘れられない言葉に縛られていた










BOYは世界三大王国の一つ、絶対領域デルタ王国に生まれた。少年BOYは生まれつき腕っ節が強く、中学生の頃には大人を泣かせるほどになっていた。そんなBOYは高校生になった頃、ついに魔族を一体単独にて撃破するという偉業を成し遂げる。それにより少年BOYは国王より勲章を授与されるが、BOYにはそれがつまらないものにしか思えなかった。何故なら少年BOYにとって、どうしても大切な存在はひとつだけしかないからだ



「にひひ。キミは本当にバカだなぁ」

「うるさい。黙れ。喋るな。バカ」

「ひどいなぁ、まったく。でもね。ボクはキミに無茶して欲しくないんよ。こんなボクの為に……」

「無茶でもなんでもない。俺は無敵だからな」

「確かにキミが怪我するとこすら、ボクには想像できないけどね。にひひ!」




少年BOYは彼女girlのそんないじらしい笑みを見ると、いつでも嬉しく、恥ずかしく、タマラなくなった。girlの名は隅田暮花(すみたくれか)魔夕病(まゆうびょう)に侵された悲劇の少女girlである。魔夕病とは自身の魔力が身体に馴染まず、それにより身体機能が狂い、発病から1年たらずで死に至るという悪魔の病である。が、少女は発病から既に7年近く経過していながらも、生きながらえていた。しかしその奇跡的長持ち命も終焉が近づいていた。それまで長らく安定していた容態が、急激に悪化し始めたのである。実は少女girlは夢見るgirlであったが、その夢を叶える前に死を迎えてしまう事は明白であった。統魔石(とうませき)という、魔力を制御する魔石を手に入れない限りは……であるが



「王国をずっと東に行くと、黄色い草がびっしり生えた草っ原があってな。赤い空と黄色い草っ原のコントラストがイカしてるんだ」

「へぇー!素敵だね!もしボクが画家になれたら、絶対そこの絵を描きたいね!」

「あぁ、そうだな。統魔石は俺が必ず探し出すから」

「だからぁ、無理はしないでって……うっ……」

「……ッ!!大丈夫か!?」

「うん……ちょっと……にひひ、大丈夫だよん」

「……」



統魔石は希少価値が高く、市場には滅多に出回らない。国から少し離れた場所に点在する鉱山の何処かにあるらしいが、詳しい事は分からないのだ。その為BOYはその鉱山に足繁く通っていた。もちろん国外へ出るという事は魔族に遭遇するという危険を多分に孕んでいたが、少年BOYは臆さなかった。BOYは魔族に遭遇する度全力で逃げ帰っていたが、ある時「あれ?これ、え?コイツら言うほどのモノか?え?あの……え?」との思いから交戦状態に入り、見事討ち取ったのが前述の武勲である。しかして無論魔族は人間にとって強大な存在であり、一般戦闘兵では5、6人がかりでなんとか無事に退却まで持っていけるようなものであり、討伐となるとその倍は必要なのである。その為この度の出来事は、少年BOYの規格外証明に他ならない




「必ずだ……必ずもうすぐ見つかるはずなような気がすると思われるさ、きっとな!!」



ホスピタルの帰り道の暗がりに、少年BOYのつぶやきが響く




BOYは勲章を授与された次の日も、その次の日も鉱山へと出向いた。学校も行かず、鉱山にばかり気を取られている少年BOYのことを、人々は鉱山学生だと冷やかした。しかしBOYはそんな事なんて全然気にしなかった。少年BOYは毎日鉱山に入り浸った。もちろん何度か魔族に遭遇してはいたものの、少女girlのたっての願いにより交戦は避けるように努めていた。どうしても逃げられないときは除いて、であるが……




BOYが4個目の勲章を授与された時には、少年BOYの身体は怪我に満ちていた。BOYの全力退避を阻止するほどの魔族との交戦は、熾烈を極めたのだ。そうまでしても見つからない統魔石。少年BOYは焦っていた



「もう、いいんよ……十分してくれたよ。だから、もう鉱山には行かないで」

「もうすぐなんだ……もうすぐ……」

「キミは……ほんとうに……」

「大丈夫だから。笑えよ。なぁ、笑ってくれよ。人生を劇に例えるとして、それを悲劇にするも喜劇にするも、自分の気持ち次第なんだから……」




人生を劇に例えるとして、この2人のソレは悲劇である。悲劇とは往々にして急転的に没落するものであるが、2人のソレは穏やかに、着実に進行していく。そう、真の悲劇とはスポットライトの外でひっそりと幕を開け、誰にも見つからずに幕を降ろすものなのだ






鉱山へと勇ましく殴り込み、日暮れに失意し、手ぶらで帰還するというルーティーン・ワークをこなし、少年BOYはホスピタルへと向かった。歩き慣れた道。くぐり慣れたエントランス。のぼり慣れたエスカレータ。見慣れたナースステイション。見慣れぬ喧騒。見慣れぬ人々……見慣れぬ……何!?



少年BOYがたどり着いた時、少女girlの病室の前に人だかりが出来ていた。それはほとんどくたびれた大人で構成されており、何やら面倒くさそうな態度で話し込んでいた。その状況に呆気にとられて口を開けたままにしていたBOYに、ひとりの男が駆け寄ってきた



「やぁ、愛罪(あいつに) 山休(さんきゅう)くん。毎日ご苦労だね」

「何かあったんですか、先生!?隅田は!?」

「まぁ落ち着きたまえ、愛罪 山休くん……実はね。隅田 暮花くんが失踪したのだ」

「何だって!?」

「いやはや、困ったものだよ。隅田 暮花くんはタダでさえ面倒くさい病に……いや、失敬。とにかく隅田 暮花くんの行方は分からない。しかし王国警備隊の方で捜索隊を出してくれてね。きっとすぐに見つかるはずさ。だから君は余計な動きをして、捜索隊の邪魔をすることのないようにね。まぁもし見つからなかったとしても、気を落とさずにね。世の中には良い女は沢山いる。良き思い出の共有者に対して親愛を抱くのは自然な事だが、それが全てではないからね」




少年BOYは憤怒の表情で先生を突き飛ばすと、病室に向かって走り出した。その勢いはまるで振りかざされた赤い布切れに向かって猛進する闘牛の如く、周囲の人ごみを粉砕しながら病室の入り口に到達した。しかし、やはりその中には主人を失い寂しそうにしているベッドしか無く、あとはその周りに見知らぬ人々(恐らく捜索隊の一部かと思われる)がいるだけだった


BOYの心中にて様々な感情の激流がぶつかり合い、エネルギーが(ほとばし)る。それは少年BOYの肉体に伝わり、震わせ、がむしゃらに動かした。少年BOYは静止しようとする捜索隊の面々を薙ぎ倒し、病室を出た。そこで倒れてうずくまっている先生の後頭部を強く踏んだ後髪の毛を引っこ抜き、ソレを先生の口に突っ込み、頭頂部のつむじ(通称ゲリピーボタン。ここを強く押すと下痢になるという迷信がある)を親指で思いっきり押した後足の臭いを嗅がせた。すると先生はビクンビクンと大きく二度痙攣して動かなくなった。それからBOYはその辺の窓をブチ破り外に出て、ブッ走った。どこへとも分からず、とにかくブッ走った。やる気のない大人の汚さや、諦める事に慣れた大人の不甲斐なさや、ブツける宛ての無い焦燥や、その他様々な色々を置き去りにするようにブッ走った






















そうして気がつくと黄色い草っ原に辿り着いていた。真っ赤な空の下に広がる、爽やかな草原。少年BOYは何故だかこの世界に一人ぼっちになってしまったかのような気持ちになり、泣きたくなってしまっていた



「君が綺麗だって言うからね、わたしは来てしまったんよ」



不意に聞こえた声に驚きキョロキョロしたBOYは、少しして草原のど真ん中に少女girlの姿を見つけた


血のように赤い空の下、まっきっきの草っ原の真ん中にて微笑む少女girl。その光景があんまり綺麗なものだから、少年BOYの視線は釘付けになってしまった


何故girlが病院を抜け出してここへ来たのか、何故BOYはここへブッ走り辿り着いたのか、少年BOYには何にもわからなかったが、目の前の美しく儚げな風景が、そんな事などどうでもよく思わせた



「ボクね、本当はいっつも後ろめたかったんよ。君がボクのために命をかけてくれること」

「迷惑だった?」

「いんや……そうでは無いんだけど」

「ならいいだろ」

「君のその手。大きくていっつもボクを守ってくれる、その大きな手」

「……」

「君の手があまりにも優しかったから、ボクはそっと下を向く事しかできなかったんよ」

「……そうか」

「でもね、これじゃあね。このままじゃあダメだから……このまま終わっちゃダメだから、勇気を出してみたんよ」

「でも、危ないだろう……こんなところに一人で……」

「うん。でもね、なんとなくだけど、君が来てくれる気がしたんよ。だから不思議と怖く無かった。それに……キレイだよねー、ここ。君の言った通りだなぁ。来てよかったよ。にひひ……」

「でも、うん……そうか。まったく君ってやつは……仕方ない人だな。でも……実は俺もな、今夢を見ているような気持ちなんだ。フワフワしていて、心地よくって……君がここにいてくれて、本当に良かった」

「そうお?にひひ……」

「あぁ、本当に……」



しばしの沈黙






















「……あのね、」

「ん。」

「ボク、」

「……ん。」

「えっとね、、」

「……」

「あのね、、ひ、ひとの気持ちってさ、うつろいやすくて儚いものだからさ、、キチンと、言葉にして、つ、伝えた、じゃなくて、あの、伝えて、おこうかなって、、、」

「ぅ……ぅん。。」

「あのね、」

「……」

「ボク、、」

「ん。」

「君が好きだ」






血のように真っ赤な空の下


まっきっきの草っ原


美しくも寂しげなその景色の中で


風もなく


静かに


ふたりはまるで世界中に自分たち以外誰もいなくなってしまったかのような錯覚を覚えた


それは寂しいものではなく、むしろ暖かい喜びに満ちていた




「(おお、神よ……俺はなんて幸福な人間なのだろう)俺も君が好きだ。大好きだ!」

「ありがとう。ボク、とっても嬉しいよ!なんて温かい気持ちなの?(あぁ、神様!ボクは今までこれ程自分の生命というものに感謝したことはありません)」



BOYはホスピタル以来の激動に頭脳が付いてきておらず、思考回路がうまく働いていない感があったが、それで良いと思っていた。至上の幸福は人から震える他の動作を奪うものである


しかしgirlは違った。感動に打ち震えながらも、その瞳の奥には決意が忍ばせてあった。そう、命をかけた決意が……




「ありがとう、山休くん。ボク、すごく嬉しいんだ!本当にありがとう。ボクを好きになってくれて……あぁ、涙が出そう!こんな事って初めてだよ!」

「もう、わかったから。照れるじゃあないか///」

「あぁ、山休くん。愛しい人。あなたがいてくれて良かった。大好きだよ、山休くん。でもね、ひとつだけ……そう、ひとつだけお願いがあるんよ。山休くん……私のお願い聞いてくれる?」

「お願い?もちろんさ!さぁ、言ってごらん!君のためなら何だってできるよ」

「ありがとう。でも、いいかな、山休くん……気をつけて聞いてね。そう、ボクの言うことを、一つひとつ、注意深く聞いて欲しいんだ。実はね。ボクね、気がついてしまったんよ。ボク本当は魔夕病なんかじゃないって。本当はもっと恐ろしい事が起こりかけているんだって……気がついてしまったんよ。実はね。この病気にかかってから、時々自分が自分じゃなくなってしまったかのように感じる時があってね。最初は気のせいだと思っていたんだけど、やっぱり違うくて……えーとね、あれ、なんだか……うまく話せないや」



少女girlは目に涙をためていた。声も震えている。その姿を見て、少年BOYの頭脳はいよいよ混乱していた



「君は一体……何を言っているんだ?」

「最近ね。その感覚が……自分が何か別のものに取って代わられてしまうような感覚が強くなっててね。それで、今朝ね……無意識によくわからない事を口走っていたの。なんだったかな……えーとね、あなたがそうであるように、私もあなたを忘れました……だったかな?なんか、そんな事を口走っていて。それと同時になんだか凄く……今まで経験した中で一番つらくて寂しい気持ちになって……ボクね、いよいよダメかもしれないって。ボクの時間は……残された時間はあと少ししかないんだなって、その時わかったんよ」

「やめてくれ……君が何を言っているのか理解できない……」

「ごめんね。でも、事実なんよ。これは紛れもない……直面した事実なんよ。だから、山休くん。辛いだろうけど、お願いだよ。気をつけて最後まで聞いて。ボクね。たぶんもうすぐボクじゃなくなるんよ。とても恐ろしい……僕の心は底なしのあなぐらの奥底に住む、とても恐ろしいバケモノのような何かに、取って代わられてしまうんよ……ボクにはもう、どうする事もできない。だから……だからね……お願い……ボクがボクであるうちに……君の愛した隅田暮花であるうちに……」

「やめろ……やめろよ……あんまりだ……」

「ボクがボクでいるうちに、君がボクを殺しておくれ」

「嘘だと言ってくれ!クソッたれ!」



それが嘘ではない事なんて、BOYには解っていた。girlが今までに嘘をついた事がない事を知っていたからだ。しかし少年BOYの心が、その事実を正確に理解することを拒んでいた



「お願い、山休くん……ボクを、ボク、、あの、あ、あれ??」



やり場のない気持ちが氾濫し、いよいよ精神が迷子になってしまった少年BOYだったが、一瞬少女girlから冷たい何かを察知し、反射的に一歩後退する。それはBOYが今までに体験したことのないような暗く寂しい力であり、魔力とも違うように思えた。その瞬間的察知に少し遅れて全身から汗が噴き出してくる。加えて足にうまく力が入らなくなり、膝がガクガクと踊るように震え始めた。それが恐怖故であるとの結論を少年BOYの頭脳が結論付けるのに、長くはかからなかった。同時に少女girlの前言を心から理解ができてしまった事に、BOYはひどく苛立った。そう、その冷たい力は……暗く寂しい力は!少女girlの中に巣食うバケモノの持つ力だったのだ!!少年BOYは心底恐怖し、立ち尽くした。が、次の瞬間には!girlへの愛ゆえに……あぁ、その愛の真摯さゆえに!少年BOYは決意していた!!


「わかった。わかったよ、隅田。言っただろう?君のためなら何だってできるって。君が望むなら俺はそれを叶えるだけさ。あぁ、隅田暮花……愛しい人よ。ひとつワガママを言わせてくれるなら、どうか笑っておくれ。俺の思い出の中の君は、いっつもいじらしく笑っていたものだ。だからせめて、最後まで笑っていておくれ」

「ありがとう、山休くん……ありがとう」

「君のいない世界を生きるのはとても息苦しいことだから、俺は……否、ボクは!君を背負って生きるとしよう!」

「山休くん……(あぁ神様!最後の時がこんなにも幸せで良いのでしょうか)ありがとう。君に出会えてよかったよ。ボクは……あれ?あ……ボク……」



先ほど一瞬漏れた冷たい何かが、今度はひっきりなしに溢れ出した。周囲を陰鬱が支配する。BOYの脳内にてエマージェンシー・コールがうるさく鳴っており、身体が後退を促すようにウズウズと動いていたが、心がそれを許さなかった。決意が、愛が!その退転を許さなかった!!嫌がる身体を無理やりに前傾姿勢に保ち、退こうとする足を地面にブッ刺し、鳴り止まないエマージェンシー・コールなんてまるで無視!!少年BOYの瞳からは涙がボロボロと止めどなく流れ落ちていたが、その視線はただ目の前の愛する人を固く見つめていた!!そしておもむろに自身の右上側犬歯を手で引っこ抜くと、それはタイトなフォルムの鎌に変化した!!これがBOYの珍宝である!!


「ボクは、あれ?え?ボク、あの、わたしは……誰!?あれ!?誰!??ボクは、あれ!??誰!?わたしは!!誰なの!??ボクは……一体だれ!?や、やめて!!やめて、来ないでぇー!!お願い、誰なの!?わたしは誰!??君は一体……ボクは……いやだ、いやだよ!!」



少年BOYは全精力をフルスロットルで込めに込め、鎌を構えた


「助けて、お願い!!暗くて何も見えないの!!」

「……可哀想な隅田暮花。今楽にしてあげるよ」



BOYは全力を込めた鎌を思い切り振り下ろした。今までの苦悩、苦労、苦痛も……安楽、幸福、愛着も!!全てを込めて、振り下ろした!!その瞬間少年BOYは確かに聞いた。言葉は発さずとも、BOYとgirlはキチンと心で通じ合っていた!!


「また会いましょう。今度は静かに」

「そうだね、ふたりは永遠に」




人生を劇に例えるとして、この2人のソレは悲劇である。悲劇とは往々にして急転的に没落するものであるが、2人のソレは穏やかに、着実に進行していく。そしてその終幕は……




「アナタのことは忘れました。アナタがそうであるように。それでもきっと信じてます。私を見つけてくれるって」



温度のない声が響く。少女girlの……否、得体の知れない何かの声が響く。それと同時に振り下ろされた鎌がgirlの肉体へと到達した。しかし鎌が肉体を切り裂くことは無かった。とんでもなく硬いゴムにぶつかったかのような感覚に阻まれ、皮膚すらも破くことができずに止まってしまった。そう、少年BOYは……その愛ゆえの決断は!!間に合わなかったのだ!!



「クソッ!!クソッ!!」

「ついに目覚めた。時は動き出す」



少女girlは眼球が真っ黒く変色し、恐怖の権化とでも言うべき力を漂わせていた。その姿に一瞬怯んだが、BOYは気を取り直して再び鎌を構えた。その瞬間少年BOYの肉体が反射的にバック・ステップを踏む。その行動に少年BOYの意識は付いてきておらず、一体何が起こったのか理解していなかったが、凄まじい衝撃を腹部に受けて吹っ飛んでしまった後になって、ようやく理解が追いついた。少年BOYは少女girlにブン殴られたのだ



十数メートル程ブッ飛ばされ、悶え苦しむBOY。girlはその姿を、まるで路傍の石を見るような目つきで見ていた


「この身体は、私の器ではない。器を探さねば。器はどこだ」

「約束したんだ……ボクが、君を殺すって……絶対に……」

「……」



少女girlの瞳には、もう少年BOYの姿は映っていなかった。興味が無くなったからだ。そしてそのまま、さよならも告げずに……どこかへ去って行ってしまった










血のように真っ赤な空の下


まっきっきの草っ原


美しくも寂しげなその景色の中で


風もなく


静かに


BOYはまるで世界中に自分以外誰もいなくなってしまったかのような錯覚を覚えていた


「必ずだ……必ず……」











数日後


血のように赤い空の下


まっきっきの草っ原


そよ風になびからされるように歩く少年BOY唯一人


黒いトレンチ・コートのBOY


ただ地面を見つめて歩く少年BOY


背中を丸めたBOY唯一人、まっきっきの草っ原をなびからされているご様子


BOYは過去に生きていた


少年BOYは忘れられない言葉に縛られていた



「ボクがボクでいるうちに、君がボクを殺しておくれ」



果たしきれなかった約束を胸に


BOYは地面を蹴っとばし、駆け出した


「いつも失敗ばかりでごめん。でも、必ず君はボクの手で……」


少年BOYが駆け出した後には、儚げな風が吹ていた


ふたりの悲劇は未だ終幕を見ない




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