聞いていない
オス・メス・オメス王国 狂隠御礼刑務所
そこには近隣各国から凶悪犯が集められ、地下牢の底にて薄い空気を吸っていた。彼らはタダの凶悪犯ではない。精神がアッチの方へと飛んで行ってしまった狂隠坊達なのだ
狂隠御礼刑務所の警備は他のそれと比べ、これでもかという程に厳重であった。その厳重さは看守が「これでもか!」と言いながら警備に当たっているほどである
そんな超絶厳重狂隠御礼刑務所の最奥地。地下36階の最下層地に、ある1人の男が幽閉されていた。彼は常に首を左右に激しく振りながら過ごしていた。彼が刑務所に収容されてすぐに看守達は力ずくで首振りを止めようと試みたが、首振りに巻き込まれて全身が平べったくなるまで打ち付けられて殉職する者が続出した為、諦めてクギ打ちや整地等に利用することにしていた。それから7年近く経過した現在に至るまで、彼は首の動きを止めたことはない。その持久性と激しさが奇跡的である故に、彼の事を神の使いであるとのたまう者が看守の中から現れ、そこから一つの宗教が生まれた
首振り教である
首振り教は創設から3分で消滅した。何故なら教徒全員が偉い人に呼び出されて怒られたからだ
首振り男は手に負えない囚人として最下層の地下牢に放置されており、ずっとひとりぼっちで過ごしていた。しかし彼はそんな事などお構い無しに、常に何かをブツブツと呟いて過ごしていた。しかもその内容は常に誰かと話している体で繰り広げられていた
「ねぇ。ねぇねぇ。ねぇーってば。聞いてる?ねぇ。ねぇねぇねぇ。あのさ。聞いてないでしょ。絶対聞いてない。え?うっそーん!?聞いてたの!!この人聞いてた!!じゃあいいけどさ。あのー、何だっけ。あ、そうそう!ゴミ山の話ね!!そうそう、そうなんだよね。きったねぇゴミ山がムケ王国北部に点在しているのは知っているよね。ねえ、もちろん知ってるよね!うそつけ!!知ってろや!!でね?その中の一つにね、ヤケに黄緑色っぽくなってるヤツがあったんだけどね??そのゴミ山がね!??ブフォッ!!ぐひひひひひひ!!いやいや、違うんだよ。今のは思い出し笑いだよ。キミが以前しょぼくれながら「次からはプリンに醤油なんてかけない。もう二度と!」って呟いていたのが、余りにも無様でね。アフターファイブは必ずその出来事の思い出し笑いをするんだ。ゆるしてね!
で、なんの話だっけ
あ!そうだった!ゴミ山ね!黄緑ゴミ山の話だったね!そのゴミ山が鹿内アンダーザワールドくんの住処になってたんだよ。聞いてる?でね?俺ね?その黄緑ゴミ山さ、チョッと臭いしさ。なんか、ムカついたのね???それにね?鹿内アンダーザワールドのシワくちゃ野郎がクッセェゴミ山の主になってるさまが、なんか似合いすぎてて逆にムカつくってさアギャハアハハハハヒィヒィ!!将来が不安!!でね?黄緑ゴミ山のふもとにさぁ、鹿内氏の手が見えてたのね。聞いてないでしょ。聞いてる?ギアハハ!でね?鹿内氏の身体は黄緑色のなんか汁っぽくて中華料理みたいなニオイがするヤツに埋もれて見えなかったんだけど。手だけ出てたの。それも、右手ね!!あ、待って。左手だったかも。いや違うな、左足だ。そうだ、そうそう!!!右足の!!左手だったかも!!!!あれ!!!!そもそも鹿内アンダーザワールドって、実在の人物だったっけ……
いや、ゴメンゴメン。なんかゴメン。今なんか思考回路を巡る俺のエモーションが迷子になってた。頑張れ!俺!!でね、あのー鹿内アンダーザブランケットの左足が出てたからさ。その左手を俺はつついたのね。聞いてる?そしたらそのー……あの、さ!!???鹿内……シーワールドの、、片方の……右手の親指がね?あの、アレをさ、したの。何だっけ。……ハネたの!!ハネたのさ!!そうそう!!鹿内快適カーライフの左足がハネたのさ!!驚くわあああマジで。だから俺ちょっとビックリして。驚愕の……ね!驚きのどうした感。どうした感が凄くて。聞いてるよね?ギアハアハ!どうし……えーと……どうして?どうした感どうして?え?え?怖い。どうしてどうした感がどうしたんだっけ。あれ?あれあれ????えーとえーと。鹿内……空中ソバットが……あの、あの、えーとえーとえーと、えと、えとえと、、、
あぁー……そういえば、えーと……あなたのことは……忘れ……あの、えーとえーと……
あれ?
聞いてないよね」
男は首振りを止め、その場に立ち尽くした
その日の午後、オス・メス・オメス王国狂隠御礼刑務所職員の半数およびオス・メス・オメス王国魔族討伐部隊の3割、そしてオス・メス・オメス王国特殊警備兵の8割が殉職し、首振り男と狂隠御礼刑務所に幽閉されていた狂隠坊の大半が行方を眩ませた




