every day.i walk ひとりきり
赤奴は身長180cmの三宅陰謀に比べて少しだけ大きく、その全身は硬い表皮に包まれていた。赤奴に面と向かった三宅陰謀は、その迫力に思わず屁を漏らす
しかし三宅陰謀は動じる事なく、すました顔でお尻のあたりの空気を手でかき回す。三宅陰謀は肛門の筋肉が弱く、興奮すると人前でも構わず屁を漏らすクセがあるのだ
三宅陰謀はとにかく珍宝とやらを握りしめて、赤奴をニラむ。三宅陰謀は自分の右目がどうなっているのかよく解らなかったが、視界が狭い代わりに気分がすこぶる良いので、気にしない事にした。感じた事の無い高揚感が全身を支配する。それはまるで、今この瞬間の為に自分は生まれてきたのだとさえ思えるほどであった
三宅陰謀は運動神経には自信があった。そう、三宅陰謀はスポーツ万能な活発男子なのである。例えば逆上がりなんて補助の人がいれば可能であるし、徒競走はいつも3位か4位!中学時代に未経験で入った野球部では、レギュラー陣に顔面を握りつぶされつつ「もう来るな!」と怒鳴られても翌日顔を出す等、伝説を挙げればキリが無い程だった
珍宝を握る右手に力を込める三宅陰謀。無論、勝つつもりである!!
対する赤奴は、ウンチングスタイルをとった!!コレには流石の三宅陰謀も「スマイルプリーズ、にか!!」と叫ばざるを得なかった!!アメイジング!!アメイジングやりとり!!ブゥエー!!
そして始まるNIRAMIAI……殺伐とする空気……思わず三宅陰謀は「優しさくださいそこのアナタとかキミとか便所のシミみたいに小汚いクソ野郎……1192296、1192296、」とつぶやいた。否、叫んだ。小声で叫んだ
その時赤奴の右足首が唐突に折れる!!赤奴はたまらず「グアグア!!何が起こっても気分は屁の屁のカッパ!!」と叫んだ!!
二人にはどうして赤奴の右足首が唐突に折れたのか解らなかったが、実はコレ、疲労骨折なのよね……がんばり屋さんだから、この子……
赤奴は仕方なく片足でウンチングスタイルになった。何故そこまでしてウンチングスタイルを保たなければいけないのか、赤奴にも解らなかった。しかし、ここまで来れば意地である。赤奴は覚悟を決める。このままウンチングスタイルにすがりついて生きるという、男の覚悟を……
三宅陰謀は泣いていた。赤奴という男の生きざまに、感動し、激昂し、落胆し、あら、あららら、、前が見えない……泣いてるからだ……と思った
そこから先の展開は早かった。立ち合いで激しくぶつかって、あとは流れで赤奴の勝ちである。戦いの内容はよくわからなかったが、全部床山が悪いらしい
「負けたよ……自信あったのにな」
「ワタシもだ。負けたよ……」
「何言ってんだよ……勝負はお前の勝ち。俺の負けだ」
「そうだな。完膚なきまでに、ワタシは勝った。人としての魅力においても、ワタシはお前に勝っている。いい匂いもするし、ワタシがお前に負ける要素は皆無だ。悪いが言わせてもらう。ワタシの勝ちだ!!クソ野郎!!」
「お母さん……」
「しかし、ワタシは今、持病の乳ガンが急激に悪化し、死の淵に立たされている。余命はあと、20秒ほどだ」
「´-`」
「最後に一言だけ言わせてくれ」
「ダメだ」
「わかった」
赤奴は苦しそうにウメきながら、その場に倒れて動かなくなった
それを見届けた三宅陰謀は「勝った!!」と叫んだ。しかし、その時気がついてしまった。ズボンのポケットに穴があいていることに……
「昨日買ったばっかりなのに!!」
三宅陰謀はゲンナリしつつ、体育座りになって眠りについた
そう、以前述べた通り、三宅陰謀の体内には自分から何かを仕掛ける熱量なんてない。赤奴に勝利したからといって、三宅陰謀が部屋から出ることはないのだ
部屋の中に静寂が訪れる。天井の猿も、不気味なブヨブヨも、赤奴も、もういない。三宅陰謀はひとりぼっちになってしまった。前世界では8年程引きこもっていた三宅陰謀にとって、ひとりぼっちなんて慣れっこなハズである。しかし、彼の表情が悲しそうに見えるのは何故だろうか
スヤスヤと寝息をたてて眠る三宅陰謀。ふと彼の口から「悪意でもいいから傍にいて欲しかった」と寝言が漏れた




