初恋
愛の形や感じ方、人それぞれで在ると思います。
一人の男性の運命と恋愛を書いています。
主人公、徹也の運命と生き方、恋愛を感じて頂ければ幸いです。
1996年 12月
青年は、夜の雪道をRV車を走らせていた。
冬始まりの飛騨の12月の夜、夕方より降り始めた雪は、アスファルトにうっすら、積もり白く染めあげていた。
青年の名は、泉 徹也、先月24才に成ったばかりの工場勤めの技術者。
特別、腕が良い訳でも無く、何の取り柄すも無い。
ただ性格は、人並み以上に優しかった。
先ほど夜勤勤務を終え自宅とは、反対方向の隣街に向かっていた
嬉しかった。
24年生きて、きた中で1番嬉しかった。
中学生の頃より、思い憧れていた、宮原 梨佳から、やっと初めての二人きりの食事のOKを貰えたからだ。
ただ、梨佳にとっては、残業で食事が遅れ、一人の食事では、味気無く感じる為、暇そうな友人を呼んだに過ぎなかった。
嫌いな訳では、無い。
でも、特別好きと言う訳では、無く
友達の領域を出る様な感情は、無かった。
二人が初めて出会ったのは、中学2年の時だった。
当時、クラス替えで同じクラスに成り、隣の席だったのだ。
これと言って、仲が良い訳でも無く、ただ日常会話をする程度で、とても恋仲になれる様な物では、なかった。
しかし、徹也は、梨佳の物静かな性格と背が高く、スレンダーな体格、ふと見せる優しい笑顔に引かれて行った。
だが、内気で何も取り柄の無い徹也は、告白する事も何かのアクションも起こす事が出来ず、
ただ、時間だけがあっという間に過ぎて行った。
高校は、別々の学校に通う事になり、顔を会わせる機会は、ほとんど無くなったが、たまに帰り道で見かけた時は、徹也は、心ときめかせた。
まだ、梨佳の事を忘れる事が出来なかったからだ。
当時、梨佳は、同じ高校のクラスメイトと交際しており、徹也の気持ちを気にもしてなかったし気ずかなかった。
徹也の事は、嫌いでは、無いが、あくまで昔のクラスメイトであり、友人の一人でしかなかった。
徹也は、梨佳が他の男性に気持ちが行き、自分の気持ちに全く、気ずいて無い事を知っていた。
恋心にけじめが付けられず、ずるずると引きずっていたのだ。
何かを期待している訳では、無く、
かと言って嫌いにも成れず梨佳の意志と気持ちも無視できず、行き場を失っていた。
しかし、梨佳の顔を見れば、心踊った。
どうにも、気持ちの整理が付かくなり
せめて、友人の一人の立場にしがみつくしかなかったのだ。
たまに、帰り道で会った時、挨拶とたわいもない雑談をするだけだった。
高校を卒業すると、徹也は、地元企業に就職。
梨佳は、看護師になる為、専門学校に進学した。
顔を会わせる事は、全く無くなり、
お互い、今、何をしてるのか?何処にいるのか?
さえ、解らなかった。
こうなると、さすがに徹也の気持ちも梨佳から離れた。
そして、19才の夏、徹也は、他の女性と交際していた。
梨佳は、高校時代の彼とは、別れ、看護師の勉強に追われていた。
二人が再会したのは、成人式の祝賀会の席だった。
たまたま、席が隣になり、学生時代の事や近況、
卒業後の事など昔に戻って語り合った。
同じ席に徹也の幼なじみであり、梨佳の友人件、
同じく看護師を目指す、早瀬 真央と梨佳の親友
件看護学生仲間の大沢 桜がおり、4人の会話は、弾んだ。
この頃、徹也は、交際していた女性とクリスマス前に喧嘩別れしており、
梨佳も看護学生生活に変化を望んでいた。
勉強や実習の毎日にときめきや他人からの優しさに餓えていたからだ。
徹也は、2年の間に美しく大人の女性に変わった梨佳に瞳奪われ、再び、梨佳に引かれた。
梨佳は、少し見ぬ間に社会に出て成長した徹也を見て、驚いた。
そして、徹也の相変わらずな優しさを見て、ほっとしたのと同時に少し、格好良く思った。
だが、付き合いたいか?と聞かれれば、何とも言え無い、気持ちだった。
それから、二人の関係は、ずるずると友達と只の同級生の間を行ったり来たりだった。
徹也は、真央に頼み間を取り持って貰おうとしたが、梨佳は、それが気に入らなかった。
「人に頼らず。自分の口で好きなら好きと言ってくれれば良いのに」
徹也の優しさは、好きのだが
相変わらずの徹也の優柔不断な態度と他力本願な所が、どうしても、受け入れられ無かったし徹也の嫌いな所でもあった。
だが、徹也にしてみれば梨佳に
「好き」とか「愛してます」と言う台詞を言うのが照れ臭かったし何故か言葉に出なかった。
言ってしまったら最後、梨佳に拒絶されるのが怖かった。
梨佳に何とか察して欲しかった。
真央に間に入って何とか梨佳との関係を悪くする事無く、梨佳との距離を縮めたかった。
間に入っている真央は、実は、徹也の事が好きだった。
徹也に梨佳より長く子供の頃より接してきた真央は、徹也の優しさや生き方が大好きだった。
優柔不断な所は、気にかかるが
「徹也の優しさは、それを補って余りある」
と思っていた。
徹也と梨佳の間に入ったのも正直、苦しかったが
「大好きな人が愛する人と結ばれれば良いし」
「ダメなら、いつか、徹也が振り向いてくれる」
と考えての事だった。
そして、ここに奇妙な三角関係が出来上がる事になった。
それから、4年の間3人の 関係は、変わる事は、無かった。
梨佳と真央が看護師になり同じ病院に就職し
梨佳は、整形外科。真央は、小児科で働き始めたなど多少の身辺の変化が在ったが徹也には、余り変化が無かった。
たまに、桜や徹也の会社の同僚達とカラオケや飲み会などは、在ったものの友達の一線を越える様な事は、無かった。
只、集まり騒いで終わり、それだけだった。
梨佳との関係を壊したくないし真央の気持ちに気付かず彼女とは、思えない徹也。
徹也の優しさになんと無く嬉しさのを感じるが頼り無にイライラしてしまい友達以上を考えられ無ず真央の気持ちになんと無く気づいている梨佳。
徹也に気づいてもらえず梨佳には、はっきりして欲しいけどしてもらえず何も出来ない真央。
3人が皆、何の切っ掛けも無く只の友達をずるずると続けていた。
この話は、私の過去の恋愛を基に書いています。
只、全て実話で書いてしまうと暴露になり多大な方にご迷惑を掛けてしまいますので、本当の話は、全く違います。
私の過去の恋愛を基にしたフィクションですので宜しくお願いします。