街の機械屋
―――薄暗くなりかけているジャカランの街はまだ騒然としていた。砂漠用車両が行き交い人が混み合っている。
着く早々ジャカラン法王の城へ行くと王は不在。明日訪問する事となった。
この国では馬車は珍しく、行く先々で人々の注目の的となる。ラプラやリントは、車両の方が珍しいらしく、好奇し興奮していた。
マグスはラルに機械屋へ行くよう頼むと瞬時に断られる。が、ラプラが口添えをしてくれた。
「マグス。頼みを聞き入れるのは今回だけだ。姫様のお頼みがなければ、街へ来た時点で放り出しているところだが……」
「ラル、すまねぇな。あとでお礼すっからよ」
「マグス、大丈夫だよ。私は街を見て回りたいの。ラル、行ってくれるよね?」
「………………はい」
ラルはラプラの前には無力らしいな。こりゃあ、姫さんを手なづけとけば大丈夫そうだ。リントはちょろいしな。
ドウルの機械屋まで行くと案の定、掘立て小屋に店主は不在だった。
近場の屹立しているガラクタの山に行き、マグスは大声で叫ぶ。
「おいっ!ドウルのおっさんっ!いるか――!」
しばらくして鉄の落ちる音がすると、ハゲ頭の大男がガラクタをつたい降りてきた。
「よう、インセイン。バイク返しに来たのか?……なんだぁ?小屋にある馬車は。珍しいな」
「てめぇー!馬車の事なんかどうでもいだろうがぁー!バイクが途中で動かなくなって死にかけたぞっ!レンタル料ナシにしろ」
「あん?ちょっと待ってな。見てやるから」
バイクを投げるように手渡すと大男は腰をかがめバイクを弄りだす。
マグスは壊れた要因が何か解るまで、そばにあるガラクタの上へとどっしりと腰を下ろした。
「……わかったぞ。燃料タンクに穴が開いてたみたいだ。悪かったな。それで、どこまで行けたんだ?」
ニヤリと笑ったハゲ男にマグスは殺気を覚え、
「北西の山岳までだ。悪かった、じゃねぇ――!砂漠のど真ん中で死にかけたんだぞ!」
「そうか、じゃあレンタル料半分ってところだな。だからガメついとケチがつくって忠告したじゃねえか。……おい、後ろにいるお嬢ちゃん達は誰だ?」
きびすを返すとラプラとリントが満面の笑みで「エヘヘ~……」と並んで笑っていた。
「お……おまえら、馬車から出てくるなって言っただろうが!」
「だって~色々見たいし。ここ、すっごく変なところだよね。あはは、ゴミが山みたいになってる」
「我は姫サマの付き人だからな。馬車に置いてきたキサマがアホだということだ」
むっとしてマグスは黙り込み深く嘆息する。
ラプラとリントはうろうろと動き回り、物珍しそうにガラクタを眺めている。
腕組みをしている大男は少し眉をひそめニヤニヤして言った。
「インセイン、おまえの女か?もしかして……結婚したのか?子供まで作りやがって、みずくせぇぞ。しっかし、変な格好してるな。まるで絵本から飛び出してきたみてえだ」
「……すべて違う。今日は疲れた……説明するのもめんどくせぇ。それとレンタル料は半分でいい。それで手を打つ」
「オーケーだ。また、よろしく頼むぜ。……マグス、この辺は治安が悪いのは知ってるよな?無理は言わねえ。早くお嬢ちゃん達を宿へでも泊めたほうがいい」
「まあ……でも、あの白いローブの女は俺より強いんだぜ……。少々じゃビクともしねえんだ。――おい、二人とも帰るぞ!」
嫌がる二人のローブを掴んで強制的に馬車へと放り込むと馬車馬は駆けて行った。
「インセインより強い……?そうは見えねえがな……」