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世界の終焉

 ――俺は生きる。


 たとえ身体に深いキズを負ったとしても


 強靭な魔獣に遭遇しても 

 

 敵が人間であろうとも


 生きている


 それは―――俺が強いから


 そう、思っていた


 俺には死ねない理由がある


 病気の妹を助ける、ただそれだけだ


 がむしゃらだった


 一人でなんでも出来ると思ってた


 シェーカー共は、群れる事でしか何もできない


 ゴミ野郎と馬鹿にしていた


 だが―――俺はいま、ラプラたちに逢いたいと思っている


 世界は、赤くて暗い―――


 孤独がこんなに怖いなんて


 ―――思いも


 ………………。




 マグスはひまつぶしに地面の小石を蹴飛ばすと、大きく跳ね上がり草むらへ落ちた。

 暖かい陽気にあくびをしながら砂利道をのんびりと歩く。

 小鳥は木の枝にちょこんと留まり、心地良い唄を奏でていた。


 ―――あのジジイ、騙しやがったな。死の森?魔族?そんなもんどこにあんだよ。のどかなもんじゃねーか。道もちゃんと続いてるしな。気楽なもんだぜ……ま、この感じだと、余裕で街まで行けそうだな。


「ふふん~ふふーん。ららーらーららー」 


 子供の頃、両親によく訊かされた唄を口ずさみながら歩く。

 優しかった両親の二つ目のプレゼントだった。

 マグスが幼き頃、母は病気で他界し、父は盗賊に襲われ死んだ。

 そして残された妹とマグスは二人で暮らし、その生活も限界にきた頃。

 マグスの妹、エファの身体が体温が徐々に下がっていく病気にかかる。

 小さな村では治療なんてできなかった。街の病院へ行くのは金がいる、そう訊かされたマグスは父の祖母へと頭を下げて妹を預けた。子供の頃からプライドが高かったマグスはかたくなに親類と暮らすのを拒んでいた。父と母と兄妹で住んでいた家でずっと暮らしていたかったからだ。

 だが、妹の病気をきっかけにマグスは病気を治すクスリを求め旅に出た。

 すぐに見つかると楽観視していたが、どこへ行ってもそんな病気は知らないという返答ばかりだ。

 ―――魔獣を殺せば金が手に入る。その制度を訊いたマグスはジャカランに行き魔獣ハンターとなった。



 ―――…………!?


 マグスが気づき剣を構えた時には遅かった。空中に奇妙な裂け目が出来ている事に。そして裂け目から異形の物体が生まれくる。

 巨大な手脚が出てくる。深い青―――身体はもう魔獣と呼ぶには言い難い。巨体を晒すと黒い炎を纏い、長く曲がりくねったツノがマグスを捉えている。

 眼は暗い底から光が放たれ、口からどす黒い息と臭気を放っていた。


 ―――身体が―――動かない!?


「フシュルル……ソノツルギ……プレアサマノ……ナゼ……オマエガモッテル」


 ―――これは……!―――ラプラの術式!


「フシュー……オマエ……イズミニイクコトハ……ユルサナイ……シネ」


 ―――母さんの名前?なんで、この……化け物が知ってるんだ!!


 ――――――やべえ。


 ―――俺。


 ――。



 マグスは強烈な熱いものを腹部に感じた―――。不思議と痛みは感じなかった。喉から湧き上がる血の味が口の中に広がる。

 ツノがマグスの腹を突き破り、オモチャのように宙へとズルリと吊り上げられた。

 異形の者は身体を振り上げるとマグスを地面へと叩きつけた。

 そして、裂け目に消えていった。


 ――――――あれ……眼が見えねえ。


 ―――なんの冗談だ……。起き上がれよ、なんだ……動かねえじゃねえか。


 ――。


 ………………。



 

 マグスの心臓の音は小刻みに振動している。……だが、呼吸が絶たれ心音も微弱になり……最後に鼓動は途絶えた―――。

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