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起因

これは精神病の高校生を主人公としたお話です。一部自傷行為などもございますので、15歳未満は勿論、そういったことが苦手な方はお引き取り下さい。

また、この作品への悪意あるコメント等は送らないでください。あくまでも個人の考え方・視点です。

 春。それは新しい時間の始まり。

 聖華女学院の高等部二年に進級した美桜は、新しいクラス表を見て愕然とした。

【Aクラス】…夏冬美楓カトウミホ

【Dクラス】…夏冬美桜カトウミオ

 このクラス割が美桜の最後の拠り所を奪うこととなる。




 お昼休み。暫しの休息を得た生徒たちはそれぞれのグループでお弁当を食べていた。女子高ならではの会話が飛び交う。

 美桜はそんな教室から1人出て、一つ上の階にのぼった。

【2-A】そこには美桜の双子の姉がいる。

 教室を覗くと、窓際に美楓がいた。その前には中学から割とつるんでいる百合がいた。二人とも楽しそうに話している。

「美楓!」

 美桜が教室の扉から美楓を呼ぶと、その声に気付いた美楓が駆け寄ってきた。

「美桜! 早かったね、お昼は?」

 その問いに美桜はゆるく首を振った。

「…そっか」

 美桜の答えに美楓は少し困ったような仕方のないような表情をした。

「また来たんだ、美桜」

 美楓に乗っかるようにして言ったのは百合。新学期が始まってからはよく美楓と百合は一緒にいる。

「…うん」

 正直百合のことは苦手だ。少し話す分にはいいが長く付き合う気にはなれない。

 それは美楓も同じだろうに、対人関係の上手い美楓は表に出さない。一方対人関係どころか人見知りの美桜は仮面を被ることも苦手で、どこかぎこちなくなってしまう。

 そういうのに鈍い百合は気づいていないだろうが。


――夏冬美桜と夏冬美楓は一卵性の双子。

          今までクラスが離れたことなどなく、いつも一緒だった。なのに――


 二人がお弁当を食べる傍らに座り、美桜は美楓に甘えた。会話こそ、時々相槌を打つくらいだがそれでもよかった。あの教室で独りでいるよりマシだ。

 けれどその時間も、学校内の時間ではほんの一時。昼休みの終了を告げる鐘が鳴り響く。この学校の鐘は少し不思議だ。一般的に用いられる鐘とは違い、クラシック調のような音だ。

「もう戻った方がいいんじゃない?」

 百合が美桜にそう言った。

「そうだね。次、移動でしょ?」

「ん…」

「また帰り、バスでね」

 美桜と一緒に美楓も立ち上がり、頬にキスをする。美桜もそれに返した。

 別に帰国子女とか、そういうわけではないがこれはもう幼い頃からの二人習慣。

 美桜は名残り惜しい気分で教室を後にした。

「よく出来るねー、あんなこと」

「キスのこと? 出来るよ、美桜だもん」

「私には?」

「やらない。これは美桜との大切なものだから」

 微笑むむ美楓に百合は生返事を返しただけだった。

 大切な、美桜が初めてくれた約束。きっともう覚えていないだろうけど。

「美桜は大丈夫なの?」

「落ち着いてるけど…、少し心配だね」

 去年も乗り越えるのがやっとだった。大晦日が多分一番大きな〝酷い状態〟だった。もうあんな風にさせたくはないけれど、唯一の頼みだった学校は見事に裏切ってくれた。幸い、担任がいい人ではあるがそれでも安心はできない。

「お姉ちゃんも大変だね」

「私は大変じゃないよ。美桜が一番大変」

 あの子をこの学校で救った〝人格たち〟も既に効力がない。美楓も傍にいれない以上、後は美桜の核―魂と呼べるものが壊れないことを祈るばかりだ。




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