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北中陸上部入部、そして初めてのレース

初めて駅伝を見た日から、毎日のように走った。

幸いにも家の近くに一周800mのジョギングコースのある公園があり、走る場所には困らなかった。

そして小学校を卒業し、近所にある公立の中学校に入学した。

中学校に入学した僕は、迷うことなく陸上部に入部した。


市立北部中学男子陸上部

部員は総員十八人

そのうち長距離は七人

三年が二人、二年が二人、そして一年に僕を含めた三人


短距離長距離ともに強豪ではないが、毎年何人かは県大会に出場している。

長距離で言うならば、三年の木本蓮太郎先輩が去年、夏の中学総体で二年生にもかかわらず学年共通の3000mで地区予選を五位で県大会に出場し、秋の新人戦では1500m3000m共に地区予選優勝して県大会に出場している。

また二年の双子ランナーである橋本翔先輩、武先輩は、夏は地区予選で十位十一位と振るわなかったが、新人戦では一年1500mにおいて、二位三位と表彰台を勝ち取り県大会へ出場している。

短距離からも中総体、新人戦共に二人100mと200mで出場していて、まるっきり弱小校という訳でもない。


入部して歓迎会で先輩方の輝かしい成績を聞いた時は心が踊った。

彼らと一緒に練習できることが嬉しかったし、一体どんな練習をすればそんなに早くなるのかとワクワクしていた。


いざ練習が始まってみると、ジョグばっかだった。

今までやってきたこととほとんど変わることなく、なんなら今まで以上に作業のような感覚になった。


「なぁ駿、入部して一週間ずっとジョグばっかだけど、これって意味あんのかなぁ?」


話しかけてきたのは小学校の頃からクラスメイトの中村悠一。体を動かすことは好きだけど球技が苦手らしい。


「先輩達が結果残せてるんだから意味はあるんじゃないの?正直実感はわかないけどね。」

「それもそうだよな、朋樹はどう思うよ?」


そう言って悠一が話しかけたのは中学校に入学してから知り合った鈴木朋樹。元々運動不足だった彼は、親から中学入学を期に運動部に入部することを勧められたらしい。


「いっ、意味はあるんだろうけどっ!、走ってる時はっ、話しかけないでっ!、結構限界だからっ!」


この一週間毎日ジョグだけだが、朋樹は最初こそ軽いジョグにも着いてくることは出来なかった。

一週間でここまで走れるようになったのはかなりの成長である。


この日のジョグが終わり、部活終わりの挨拶で先生から話があった。

どうやら二週間後に記録会があって、怪我している人以外全員参加するらしい。

長距離の選手は怪我をしている三年の三上良平先輩以外の全員1500mに出場するらしい。


「1500mか〜、なんかビミョーな距離だな!どれくらいなら早いんだろ?」

「確か体力テストの1500mだと4分59秒以内で十点だったよな、5分切れれば早いんじゃない?」

「でも駿シャトルラン100回くらいだっただろ?5分なんて行けんの?」

「行けるかは走ってみなきゃわかんないじゃん!それに悠一は100回も行けないでしょ!」

「俺は折り返しが苦手なの!」


うちの学校では体力テストは1500mではなくシャトルランだった。

だから正真正銘初めての1500m。

とても楽しみだ。


そして二週間、変わらずジョグと流しだけで繋いで記録会当日を迎えた。


天気は晴れ、風はない。

1500mは全部で四組あって、一年は全員一組目、翔先輩武先輩は三組、蓮太郎先輩は最終組の四組目だ。

後半の組になるほど早い人たちで集まるらしく、四組目なんてほとんどが高校生だ。


アップをして招集をしてスタートラインに立つ。

号砲直前の静けさには緊張したが、正直ワクワクが勝っていた。


そして号砲が鳴った。


そこからはあっという間だった。

最初の100mで勢いよく飛び出して最初の300mは気持ちよく先頭を走った。

しかし400m手前で追い抜かれ始め、そのままついて行くことも叶わず、800mで真ん中の集団に追い抜かれ、1200mでは悠一に追い抜かれた。


悠一は一瞬こちらを見たが、余裕が無いのかきつそうな表情で、しかしぐんぐんと前に進んで言ってあっという間に置いていかれた。

そしてそのままゴール。

その後少ししてからゴールした朋樹と三人でチームのテントまで戻ると、倒れ込んで起き上がれなくなった。


きつい。きつすぎる。

あの日憧れたランナーたちはこんなきつそうじゃなかったのに。

そんなことを考えながら、呼吸が整うまでの十数分間目を閉じていた。


「ちゃんとダウンしたのか〜?」


声が聞こえて目を開けると、まだ汗の引いていない蓮太郎先輩が覗き込んでいた。


「ダウンしとけよ〜、一年の間から怪我なんてしたらつまらんかなら」


そう言った蓮太郎先輩は、翔先輩と武先輩と一緒に待ってくれている。

隣で眠っていた悠一と朋樹を起こして先輩達に追いつき、ダウンジョグを始めた。


この先輩達のタイムを聞いてギョッとした。

文字通り死にかけながら走った僕らのタイムより、1分近くも早い。

それでいて走り終わってからこの余裕。


僕のデビュー戦は、先輩達との圧倒的な差を実感する結果となった。

春季記録会

木本蓮太郎 4分19秒58

橋本翔 4分32秒11

橋本武 4分32秒97

山本駿 5分18秒53

中村悠一 5分13秒39

鈴木朋樹 5分58秒73

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