いよいよ直接対決
これはもう『かの君』に聞くしかないでしょ。どうにかメルアドを探さねば
アドレス帳を開けても名前は幹事では出てこずメルアドのみ。
たしか「森」とか「森を守る」みたいな単語があったような気がする。頭をフル回転して記憶を引っ張り出す。 mori ・・・ maoru・・・ そうだ、森を守る・・もりびと! だったような気がする
するとmoribitoの単語が入ったメルアドを見つけた。たぶんこれだわ・・胸がドキドキし始めた
『かの君』へのメールは何度も推敲し、そしてついに勇気を出して送信した。
「はじめまして」のタイトルで
「あなたは私を知っているでしょう、きらいかもしれません、でもこのメール最後まで読んでください。
私は先週脳梗塞を起こして、記憶喪失になりました。残念ながらあなたのことは覚えていません。名前もわかりません たぶんこの間プールであいさつした体のがっしりした人でしょう。メールの履歴がどこにもないので、不安ですが、もし私の探している人でしたら返事を下さい。私があなたを傷つけたようでしたら今のうちに謝っておきます。ごめんなさい。でもどう傷つけたかもわからないので教えてください。
出来ればお会いして謝罪やいきさつを伺いたいのですが、おいやでしたら電話を下さい。私はスマホを使っていなかったようですが(なぜだかわかりませんが)
昼前後でしたら持っているようにします。
よろしくお願いいたします」
ほどなく返事が来た
「お久しぶりです。あなたの探しているのはたぶん私でしょう。
あなたはこのままの状態でいきさつは思い出さない方がいいかもしれません
私はあなたにバタフライのアドバイスを2,3回しただけのプールにいるおっさんです。またプールでお会いしたら挨拶をします。
それから 来週野菜の苗を持ってきてくれると言っていましたが、それも無理なさらずに結構ですから。電話は嫌いとのことでメールでやりとりをしていました」
そうか、そうなのか、何があったのか知りたい
それにしても誠実な人なんだな、惹かれていく要素を垣間見た。
またこの人にハマっても、もう破綻しているのだしな・・・
「メールありがとうございました。よっぽどの理由があるのですね、わたしが何をしたか知りたいですが、これはあなたしか知らないことなんですね。そしてどうやら私はあなたを傷つけたらしいですね。申し訳ありません。パソコンの中をもっと探してみます。見つかったらまたメールしますが、それはよろしいのでしょうか?
それとももうメールは送ってほしくないですか?」
「ご自由にどうぞ、私も全てに返信する訳ではないのでその時に時間があればメールを返します」
う~む、どちらかというと避けられているみたいだな?
いったい私が何をしたのだろう。今のところの手掛かりは電話番号を聞いたら
激怒されたということ、それでけんか腰になって、私は倒れたのかな
それとも間に何かもっと別な事件があったのだろうか?
一応名前はわかった。でも思い出せない。パソコンを今日も見て探している、ドキュメントからピクチャーまで、時々懐かしい写真や記事があると少しづつ記憶が蘇ることもあった。
ダンナとの2ショットや毎年の出来事をまとめたページもでてきた。
私は普通の専業主婦で時々バイト程度、家庭菜園が好きであちこちで土地を借りては野菜づくりを楽しんでいた。介護などの闇の時代もあったけど、お互い自立して高めあって来た夫婦だということもわかってきた。
ダンナに対する不満も年を追ってマイルドになってきたようだ。
私は一応「しあわせ」な結婚生活を送っていたようだ。
波乱の10年はまだよくわからないのでこれから少しづつ聞いてみようと思った
そんなある日、ワードのあるファイルをあけると、そこに今までのメールがコピぺされている20ページの文書を見つけた
これだわ。
最初からすべて合わせると170回もやり取りしていることがわかる
期間にして2か月弱、この間に私が熱を上げて気持ちが乱高下して勝手に失恋している様子がわかった。
最初の方は読んでいて恥ずかしいくらいの乙女メール
「へこんでいるので、メールください、こんな時あなたを元気にするものは何?」というラリーでは
「へこんだことがないので、わかりません」
「ヘ~そんな人いるんだ。泣いたりもないの?」
「う~んあんまりないかな、感動して泣いたことはあるけど」
「はあ、感動はするんだ」
「はい、月がきれいだな、あしたもたくさん泳ごうかな、おやすみない」
と切られたが誠実に付き合ってくれているときもあり、なんだかうれしくて泣けてきた
『かの君』は一貫して冷静で私を受け止め、時には 暴走をとめようとしたり、正しい道に戻そうと寄り添ってくれたことがわかった。
そして苗を渡す日取りと場所もわかった。それは1週間後、なんとしても行かなくてはと思った
しかし不可解なのが10月10日に突然『かの君』はまるで別人のように激怒し今までに使った事のない表現で私を非難していた。それは私にとってはほんの些細な
「電話番号を聞いただけのことだった」
正確には苗を届ける時、「近くに着いた」と連絡したいので、その前に私にかけて双方向にしてくれない」というものだった。
つらいけど、あのメールを読み直してみる
「携帯持ってない」と言ってた人から携帯番号??
おかしいでしょ。勝手に怒って
今になって「やっぱりスマホあるから…」と言われてもね。
これまで嘘をついてたわけでしょ
XXXXは全て自分のための理由だよね、こちらとしてはどうでもいいこと
・・・・・ 嘘をついてたわけでしょ・・・・
・・・・・こちらとしてはどうでもいいこと・・・・
最初からのメールの流れとは全く違う激しい口調、電話番号聞いただけなのになぜここまで激高するのか?同じ人、あの誠実な人とは思えない
一体10月10日に何があったんだろう?




