ep.7
少年の葬儀は密やかに行われた。
私は両親になんと言葉をかけたのかよく覚えていない。
彼らは何度もあなたは最後までよくしてくれた、あなたの責任じゃない、と言ってくれたがその言葉を聞くたびに私の心は重さを増していった。
葬儀が終わり気づけば自宅に帰りついていた。留守番をしていたシューカが心配そうに顔を覗き込んでいた。
大丈夫と笑って頭を撫でると、嬉しそうに目を細めニカッと笑う。
きっと今、私は困った顔をして笑っているのだろう。
シューカを抱き抱えようと手を伸ばした時だった。玄関からあの夜と同じものが聞こえた。
それは地獄のような悪夢の始まりを告げる音だった。
少年と同じ症状の子供がまた一人、一人と日を追うごとに増えていった。
予感はしていた。覚悟もしていたが、こんなに早いものか。
どの子も数日のうちで悪化し、少しばかりの延命措置しか行うことができなかった。
自分の子供を守るため、町を後にした者たちもいた。
同じ病に罹った大人もいるが、どれも軽症で重篤化するのは子供ばかりだった。
死んだ我が子を抱えたまま泣き叫ぶ父を、母を、もう何度見てきたのだろう。
なぜ我が子がという悲鳴が、心の奥深くに重くじっとりとへばりついて離れない。
そして数週間のうちに、町の大半の子供が亡くなってしまった。そんな中、シューカだけは重篤化せず済んだ。
罹ってしまったと時は死を覚悟し絶望したが、段々と回復する姿に安堵した。
だが、悪夢は早々に目覚めさせてはくれなかった。
「あの子が…来たから、私の子は死んだのよ…」
子を亡くした一人の女性がぽつりと言った。静寂な療養所に暗闇が広がる。
「あの子は地獄のようだと言われた国から呪いと一緒に捨てられたんだわ!あの子が来てから、この町に停泊する船は減少した!!あの子が来てから町の作物の育ちが悪くなっていった!!!全部…全部あいつが来てからだ!!!!」
「落ち着いてください!小さいあの子にそんなことできるはずないじゃないですか!」
「じゃあ、なぜあの娘だけ生きて、私の子は死んでしまったの!!なぜ!!なぜあの娘を引き取ったの!!あんな娘この町に入れるから…この町が呪われてしまったのよ!!」
私の方を恨めしく睨む女性の怒りは、瞬く間にほかの火種へと燃え移っていく。
あちらこちらから、娘を、息子を返せと憎しみの槍が私に降り注いだ。
浴びせられた怒声の中から不吉な言葉が聞こえた。
元凶を消せば終わるはずでは。
大人たちは松明や農具を片手に、獲物を狩る獣のような爛々とした目でシューカのいる家へと向かっていった。
私はもう力もあまり入らない足を必死に動かし、何とか彼らの前に立ち塞がった。
こうなってしまったら私に残された選択肢は一つだけだ。
大きく息を吸い、腹の底から声を荒げる。
「私がこの町に呪いをかけた!魔女は私だ!!善人ぶっての高みの見物はこの上ない美味であった。」
口元をにやりと笑わせる。
ごめんね、子供たち。
人々の怒りの矛先が私の方に切り替わったのが目に見えて分かった。
右の頬に鈍い痛みが走る。
腹に 背中に 体のあちこちが軋み、悲鳴をあげる。
視界が赤く染まっていく中、男が二人ほど家の方に向かって歩いていくのが見えた。
やめて、お願い。あの子だけはどうか…。
やっとの思いで立ち上がり家の方へと歩こうとした。
だが大人たちはそれを許してくれるわけもなく、また冷たい石畳へと体が打ち付けられる。
行かなければいけないのに、体はもう動かない。
かすかに残る意識の中願い続けた。
誰か、あの子を、私の宝物を助けて。。。




