ep.6
雑貨店で聞いたあの言葉の意味をジーアに聞けるわけがなく、悶々としたまま時は過ぎていった。
その年の冬のこと、深夜に玄関の扉がドンドンッと激しくたたかれた。
「ジーアさん!!!お願いです!!!助けてください!!息子が!息子が!!!」
ひどく焦った様子の男をジーアは、なだめながら状況を聞き出していた。
そのあと棚からいくつか瓶を取り出し、大きな鞄に詰め込むと寝ぼけているシューカのおでこに優しくキスをして家を飛び出していった。
朝になってもジーアは戻っていなかった。
その日の夜遅く、ひどく疲れた顔でジーアは帰ってきた。
「遅くなってごめんね。シューカ、もしかしたらしばらくお家に居れないかもしれない。」
申し訳なさそうにシューカの頭を優しくなでる。
「マンマ、わたしはだいじょうぶ!マンマのマージャでなおしてあげて!」
そう言って笑う少女をジーアはぎゅっと抱きしめた。
「私の宝物。シューカ、ごめんね…大好きよ。」
木の扉を押し開ける。
部屋の隅のベッドに少年が横たわっていた。
たぶん、シューカよりまだ幼い。
テーブルの上に置いていたランタンをベッドの傍に移動させ、空いたテーブルに鞄を置く。
ベッドに横たわる少年の額に手を置く。
ぐったりとしている。呼吸ははやい。熱も先ほどと同じように感じる。
今のことろ発疹は広がっていないようだ。
昨日行った処置が少しも効いていない。どうしたら、どうしたら…
少年は小さな手を震えながら、ゆっくりと私の方に伸ばしてきた。
「ジー…ア…せんせ…。痛い……熱いよ…。」
かすれた小さい声。少年の少し開いた瞳から涙がこぼれた。
「大丈夫…ただの風邪だから、こんなのすぐに治っちゃうよ。私の薬は魔法なんだから。」
押しつぶされそうになりながらも必死に笑った。
こんなの弱音なんてはいていられない。
そこから私は死に物狂いで試行を重ねた。
家においてある師匠が残してくれた本を片っ端から読み直した。
少しでも可能性のあるものは全部試した。
自分のことなんて後回しだった。最後いつ眠ったんだろうか。食事はいつとったのだろう。
だが努力も空しく、小さい命は散ってしまった。
小さい亡骸は骨が出るほど痩せこけてしまい、強く抱いてしまうと消えてしまいそうなほど軽かった。
少年の両親たちは亡骸を抱えたまま泣き崩れていた。
私を責める人は誰一人としていなかった。それが余計につらかった。
どんなに身を削っても、どうにもならない事がこの世にあるのならば、あぁ神様、どうか、どうか、私達から大切なものだけは奪い取らないで。




