ep.3
「あー!こんなの見つかるわけない!」
町を30分ほど歩きまわったところで、レイが騒ぎ出した。
「んー、確かに情報が少なすぎてちょっと難しいね。」
「もうそこらへんの人捕まえて、この人でしたー!で通りそうな内容だよ!」
「それはよくない。ちゃんとみつけなきゃ。」
「ほら、胡渡がだめだって。」
むすっと頬を膨らませてしぶしぶまた歩き出す。
千陽は腰にある鞄から紙を取り出した。
胡渡が横からのぞき込む。
小さい紙にはシューカから聞き出した内容が書かれていた。
『探し人の特徴』
・黒く長い髪で顔はよく見えない。
・身なりはところどころ服が破れていたり、土汚れがついていたり綺麗とは言えないものだった。
・声を聞いたことがないため判断ができないが、背格好から恐らく男性。
「町の人にも少し聞いてみたけど、誰も見たことないって言ってた。」
「この町の人じゃないんじゃない?町の外なら探すの大変だよー。」
「情報は少ないけど、この町では浮きそうだから誰も見たこのないっておかしい気もする。」
「確かにそうだね。小さい町だし、手分けして聞き込みしてみようか。大体終わったら船着き場に集合で。」
「レストランでよくない?」
「胡渡ちゃんが海見たことないって言ってたからね。」
なるほど、それならとレイは首を縦にぶんぶん振った。
三人はそれぞれの方向へ情報を集めに散っていった。
1日中町を歩き回り疲れた千陽は船着き場の桟橋に腰を掛けていた。
胡渡は隣で物珍しそうに海や船を眺めている。
夕日に照らされて海面はきらきらと反射している。
船はゆっくりと上下に揺れており、まるで大きな生き物がゆっくり呼吸しているみたいだ。
海岸沿いの家には明かりが灯り始め、おいしそうな香りとにぎやかな声が聞こえだす。
酒場で船乗りたちが楽しんでいるのだろう。
「おまたせー!宿取れたから移動しよう!」
レイがパタパタと走ってきて、すぐそばの角の家を指さす。
三人は宿に移動し、少し硬いベッドに腰を下ろした。
日中探索してきた情報をそれぞれ報告したが、進展はなくやはり誰も知らなかった。
「こんなに聞いても誰も知らないなんてやっぱり町の外の人なのかな?」
「その可能性が高いね。ただ…」
千陽はそこで言葉を詰まらせ、少し考え込む。
二人は黙って千陽が続けるのをしばらく待っていた。
「僕の気にしすぎなのかもしれないけど、聞き込みをしていくにつれて気になっていたことがあるんだ。この町、子供がいないんだ。いや、いるんだけどどの子も最近生まれたばかりの子達である程度大きくなった姿を見かけないんだ。」
「それは私も気になってた。何か理由があるのかな?」
「それは調べる?今回の依頼とは関係ないと思うけど。」
「明日、シューカさんに現状を報告してその時に、それとなく聞いてみよう。関係ないかもしれないけど、何かの手掛かりになるかもしれないからね。」
千陽はベッドにそのままパタンと倒れた。
「今日は歩き回って疲れたから、早めに休息としよう。」
「はーい、じゃあまた明日ねー。」
胡渡とレイは部屋を後にした。
窓の外は、暗く落ちた空から夕日がこちらを覗いているようだった。




