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列国の秘史録  作者: sleet
鹿鳴之宴
37/37

ep.35

開かれた門の奥へと、熟守(ジュクシュ)たちはゆっくりと進んでいく。

少し間を開けてその後ろを涼訵(スズチ)たちが続く。

祈祷の間は、扉があるとはいえ周りは胸辺りまである柵で覆われているだけだった。

鬼たちは中央を道が通るかのように開け、片膝をつく。

ズズズ、と引きずる音をたて再度門が開き、みづくがゆっくりと歩いてくる。

彼女は血で染めたような赤黒い着物に、床に伸びるほど丈の長い黒い羽織を着ていた。

綺麗に結われた髪には真っ赤な牡丹の簪が添えられ、口元は鮮やかな朱色の紅がひかれていた。

みづくは鬼たちの前を通りずぎ、部屋の奥の一段上がった場所で立ち止まりゆっくりと振り返った。

彼女の前に並びなおした鬼たちは、一人ずつ竹葉から瓶子(へいじ)を受け取る。

みづくは端で跪く熟守に盃を渡し、熟守から受け取った瓶子を開け酒を注いでいく。

熟守は透き通った液体で満たされた盃を少し持ち上げ、軽く頭を下げる。

顔にかけられた布を片方の手で口元が見えるぐらいまでめくり、盃に口をつけると一気に飲み干した。

みづくは熟守が呑み終えるのを見届けると醇守の前へ移動し、先ほどと同じことを行う。

ひとり、ひとりと静かに儀式は進行していく。

鬼たちが終わるとみづくは涼訵の方へ歩み、何も言わず盃を差し出した。

涼訵が盃を受け取ると静かに酒が注がれる。

くっと一気に飲み干すと今度は千陽(チハル)にも盃を渡し酒を飲ませた。

胡渡(コト)とレイは酒が飲めないのを知っているためか、盃を渡すことはなかった。

奥の方にみづくが戻ると、彼女の前に大盃が置かれていた。

鬼たちは順番に先ほどの瓶子の中身を大盃へと注いでいく。

なみなみに注がれた大盃をみづくは軽々と持ち上げ、半分ほど飲んだところで口を離す。

大盃を持ったまま湖の方を向き、近づいていく。

柵の向こう側へ大盃を掲げ、そのまま手を離した。

ばしゃんと音をたて、大盃が湖面に浮かぶように漂う。

そしてまるで酒をゆっくりと飲み干すようにゆっくりと沈み始め、水と酒が混じり出し、大盃は湖の底へと消えていった。

その後、みづくはゆっくりと門へと出ていき、残った鬼たちも彼女の後に続いていった。

涼訵らも薄っすら漂う酒の匂いと緊迫感を残した祈祷の間を後にした。

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