ep.34
翌日、夜が更けた頃竹葉から支度が出来たら客間に来るようにと連絡がきた。
初日の部屋に通されると既に、奥に座るみづくと数人の鬼が集められてた。
みづくの後ろに控えている竹葉がそろったのを確認して口を開く。
「本日からみづく様が準備期間に入られます。よって城内は原則我ら以外の立ち入りを禁止といたします。」
熟守はふわっと欠伸をし、退屈そうに聞いている。
爽守と薫守はきらきらとした目でみづくを見つめていた。
醇守は腕組みをしながら、熟守をキッと睨みつけている。
「見回りはいつも以上に警戒をし、小さな異変でも逐一報告を怠ることないように。それと…」
竹葉は涼訵の方に視線を移す。
「本来ならば、部外者を入れるなど言語道断ですが、今回は特別にみづく様から許可をいただいておりますので自由に出入りされて構いません。我らは例年通りの割り振りでお願いします。なおこの後1時間後くらいに祈祷の間に集合になりますので。それまでに正装に着替えるように。あぁ、涼訵様方はそのままで問題ございませんので。」
竹葉は膝をつき、みづくに話しかけている。
再び立ち上がった竹葉により、この集まりは解散となった。
客間をでた鬼たちは隣の部屋へとそれぞれ消えていった。
竹葉は醇守と熟守の着付けを手伝った後、爽守と薫守の部屋を訪れた。
「爽守、薫守。出来そうですか?」
襖を開けると、着替え終わり丁度互いの髪を結っているところだった。
「竹葉、これやって!」
薫守から受け取った櫛で髪を溶かし、一つにまとめて結っていく。
薫守は爽守の髪を器用に結っている。
結いおわると、二人を並べてゆっくり一周回らせ黒い着物を整える。
「これで大丈夫です。では、時間厳守でお願いしますね。」
二人の元気な返事に見送られ、みづくの部屋へと向かった。
涼訵たちは自分の客間を出て、祈祷の間に向かっていた。
昨日までせわしなく使用人らしき者たちが行き来していた廊下だが、今日はまだ誰も見かけていない。
祈祷の間は湖の中央に建てられており、玄関から反対側にのみ中央の離れに向かって橋がかけられている。
橋の途中から湖を覗き込む。
湖はとても澄んでいて波一つたっていない。
そこの方は光が届かないためか、確認することができないが相当深い事だけはわかる。
橋を渡り終えると、祈祷の間につながる門がまだ閉ざされていた。
指定された時間より少し早いため誰も到着していない様子だった。
暫く待っていると橋の向こうから歩いてくる人影が見えた。
先頭をぼんやりとぶら提灯が照らしている。
ゆっくりと歩み寄ってくる影は徐々に大きくなり、涼訵の前でぴたりと止まった。
5人の鬼は全員黒い着物や袴を着ており、顔は黒い布で覆われている。
布にはそれぞれの名前の初めの字が少し崩して書かれていた。
「熟」と書かれた布面をしている者が前に出て、門を押し開ける。
引きずる音をたてながら、門はゆっくりと開かれた。




