ep.33
彼女たちと合流した涼訵たちは城へと戻り、空いている客間に集まった。
薫守と爽守は寄り添うように腰を下ろし、未だになにやらひそひそと話してはくすくす笑っている。
涼訵は気に留める様子もなく、話を切り出した。
「二人はこの国を巡回していると聞いたが、最近気になったことはないか?」
二人は顔を見合わせ、少し考え込んでいるように見えた。
「特になかったわ。」
「いたって平和よ。」
ただ、と薄い青色の花簪を髪にちょこんと挿した爽守が続ける。
「不思議なくらい何事もないの。結界が破かれた事すらなかったかのように、ね。」
「痕跡もないなんて初めて。あ、でも、ほら。」
薫守が爽守の袖をつん、と引っ張る。
「あ、そうね。その結界の破れていた付近に見たこともない花が咲き出したの。」
「閉じた唐傘のような白い花よ。日を追うごとに結界付近によく咲くようになったわ。」
「でも咲いているだけだから、そのままにしているの。」
不気味だものね、と二人は顔を見合わせて頷いている。
「それをみづくに報告していないのか?」
二人は小さく頭を振る。
「それ以外に異変はないし。」
「結界の事はよく知らないから。」
涼訵は眉間にしわを寄せる。
「なるほど。結界の防衛反応の可能性もあるのか…。害が無いのならば、無闇に触れるべきではないな。」
「何か見つけたら報告してあげるわ。」
「明日から見回りを強化するものね。」
二人は嬉しそうに互いの手を合わせている。
「祭りの前だからか?」
「それもあるけど、明日からみづく様の準備が始まるのよ。」
「お祭りまでこの城に入れるのは側近のみになるわ。」
「とってもお美しいの。あたし達の特権ね。」
ねー、と顔を見合わせる。
静かに聞いていたレイが申し訳なさそうに割って入る。
「あの、その期間私たちは…?」
二人は首をかしげて答える。
「さぁ?知らないわ。」
「部外者が居合わせた事なんて、ずっと昔に数回あったきりね。」
いたずらそうにくすりと笑うと続けて言う。
「でもお人間さんなんて久しぶりだから、お目通り叶うかもね。」
「叶うといいね、お人間さん。」
二人は先ほどと反対側の見回りをしなきゃと小走りにかけていった。
残された涼訵らは翌日に備え休息を取るため、それぞれの部屋に戻っていった。




