ep.32
レイは涼訵に言われ、あたりを明るく照らした。
糸は空中を這い城の上空まで規則正しい格子状に伸びていた。
「なぜここだけ乱れている?」
糸の近くまでよりじっと観察をしながら、涼訵は問う。
「少しの綻びならこちらで綺麗に治せるんだが、ここは大きく破れていてな。私達では綺麗には治せん。この結界を作った術師ならば可能なのだろうが…。」
熟守は腕を組み、顔をしかめている。
「もしや、お主ならば治せるか?これの術師と知り合いなのだろう?」
涼訵は糸から離れ、熟守を振り返る。
「この分野は私には無理だ。あいつを呼びたいが…正式に手配をしないと厳しいと思う。」
「なんだ?そちらで呼んではくれんのか?」
不思議そうに首を傾げる。
「呼んではいるが、来るかはわからん。正式に依頼した方が確実なのだが祭りまでに間に合わんな。」
「まぁ、よくはわからんがそちらにも都合があるのだろう。ならば仕方ない!」
熟守はそういうと近くに岩に腰を掛け、ふわっと欠伸をした。
千陽は涼訵の近くへと寄り、そっと耳打ちする。
「そんなに無理そうなんですか?」
「連絡はしたが本人に届く前に処分されかねんからな。フォウンは急遽私の仕事を任されているから相当気が立っていそうだ。」
「あぁ、なるほどです…。」
千陽は察したようにははは、と苦笑いをする。
「まぁ望みは薄いが、私たちはこちらに集中をしよう。」
涼訵はまた張り巡らされた糸へと視線を戻した。
糸が絡み合っている以外は問題がなさそうだったが、胡渡があっと声を上げ結界の足元を指さす。
そこには白く大きい閉じかけの傘のような花が咲いていた。
「これ、この国にはいってから見ていない。」
涼訵は熟守を呼び花を見せる。
「ん?これか?私はあまり外回りをしないもんで、これが他にあるかわからんな。薫守と爽守ならば知っていると思うが、今は巡回中だな。だが、ただの花だぞ?」
「確かにそうだが、今は情報が少しでもほしい。気になるならば確認をしてもいいだろう。」
「人間は細かいな。それでは張りつめてしまうわい。」
熟守は岩に腰を下ろし、退屈そうにまた欠伸をした。
一通り調べ終わり、一行は怪鳥に乗り麓へと戻った。
怪鳥を見送っていると丁度巡回していた鬼たちに鉢合わせた。
似たような顔つきの鬼は向かい合い互いの顔とこちらを交互に見ながら何やらひそひそと話している。
「噂の人間だわ。」
「こちらをじっと見ているわ。」
『「薫守、そんなに見ちゃだめよ。」「爽守、そんなに見ちゃだめよ。」』
二人は目を合わせくすくすと笑っている。
「おい、お前たち。お客さんの前ではやめんか。」
怖い怖いと口を揃えて、二人は楽しそうに熟守の周りをくるくると走り回っている。
急にピタッと立ち止まりこちらに向き直った二人は袖で口元を隠しながら話し出した。
「私は爽守、食べないでね人間さん。」
「私は薫守、嚙まないでね人間さん。」




